村上春樹『風の歌を聴け』読了

1970年夏、あの日の風は、ものうく、ほろ苦く通りすぎていった。僕たちの夢は、もう戻りはしない――。群像新人賞を受賞したデビュー作
内容(出版社内容紹介より)

そんな時代もありました。

本書は『村上春樹』のデビュー作。
過ぎ去った青春の1ページ、その断片を描いています。

内容はバッサリ略。およそ30年ぶりに再読しました。
再発見あり、再確認ありと、
好悪のどちらかに偏った感想はないのだけれど、
やっぱり再読して良かったです。
僕は29歳ではないけれど、
ハルキストな元彼女との区切りに相応しい一冊。
今この瞬間はそう感じています。

もはや説明不要な作品です。
なので今回はいくつかを箇条書きで失礼します。

再確認したこと。
若い頃の僕が本書(を含むいくつかの作品)で
『村上春樹』から離れてしまった理由みたいなモノ。
それは現在の僕から見ても判るような気がしたんですよね。
乱暴に言ってしまえば、当時の僕は『村上春樹』を
「スカしている」と感じてしまいました。

再発見したこと。
都会的でクールな世界観の中にも、意外とウェットな一瞬があること。
特に終盤のラジオのDJにそれを強く感じました。

ちょっと嬉しかったこと。それは「地の塩」の下り。
初読時は「地の塩」の意味も判らず読み飛ばしていけれど、
たぶん後日ストーンズのそれから意味を知って今回再読できたこと。
なるほど、あの場面の鼠は「僕」へ親愛の情を示していたんですね。
勿論、いろいろな解釈が可能ではあるけれど、
鼠や「僕」の倍の以上の年齢を重ねた僕(yuki)が、
そう受け止めることが出来たこと。
自分のコトながらちょっと嬉しかったです。

最後に。
作中にあった

かつて誰もがクールにいきたいと考える時代があった(本文より)

は、ほとんど真実だと思います。
またそれは作中の1970年(及びそれ以前)に限らず、
いつの時代も変わらない普遍的なモノではないでしょうか。
少なくとも男性ならそんな一時期があると思うし、
勿論僕もそれに該当する多くのうちの一人です。
でもその一方で「クール」に反発する気持ちもあったんですよね。
それは当時良く聞いたラジオの DJ の台詞なのだけれど、

アツい奴が一番格好良い(yuki意訳)

細かい部分は忘れてしまったけれど、
バブル当時の空気に馴染めなかった僕は、
彼の台詞にどこか救われたような気がしました。
因みに「アツい奴が一番格好良い」と発言した DJ とは
エコーズの辻仁成。彼のロックは僕の趣味ではないけれど、
彼のラジオとエッセイには胸を熱くすることが多かったです。

以上、
当時の僕が『村上春樹』を苦手としていた理由。
なんとなくお解かりいただけるでしょうか^^

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奥田亜希子『魔法がとけたあとも』読了

昨日までの自分と、今日からの自分。世界が変わっても、私はここにいる。私たちの身体に起きた、あれこれ。そこから見えてくる、新たな景色とは―。爽やかな共感と希望をもたらす五編。
内容(「BOOK」データベースより)

代わりの光。

本書は輝いていた過去と、くすんだ現在の対比を描いた5つの短編集。
やもすれば鬱屈に捕らわれてしまう状況の中、
小さくても新たな光をみつける主人公達。
そんな姿に心が温まりました。

模範的な妊婦のちょっとヤンチャな過去
鼻の付け根のほくろに、増えた一本の線
DVで傷ついた元エースと、DVで気が付いた元ショート

内容はバッサリ略で一言、はぁ、良かった。
いづれもよくある話ではあるけれど、
だからこそその光景が瞼に浮かびます。
多くは女性が主人公だったけれど、
過ぎ去った日々が月日と共にドンドン輝きを増して行く。
それって男女共通ですよね?
過去を振り返っても仕方が無いけれど、
そう簡単に割り切れるモンじゃない。
それも男女共通ではないでしょうか。

ただ、現在にだって代わりの光はあります。

それは過去の光に比べたら随分頼りないのだけれど、
それでも現在の自分を温めることは出来る。
本書に示されていたのは、そんな柔らかな光だったと思います。

これは個人的な話になってしまいますが、
最近僕は取り戻せない過去を嘆いていました。
でも本書のおかげで心が軽くなった様な気がしたんですよね。
なので、もし過去にクヨクヨしている方がいらっしゃるなら、
そーっと本書をお勧めしたい。そう思います。

さらに蛇足で印象に残った一編をご紹介。
それは『彼方のアイドル』であり、
二人の同じアイドル(?)を愛した二人の女性のお話です。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は主人公の女性にかつての恋人を重ねてしまいました。
全部が全部同じではないし、彼女の対象は同じ男性グループでも、
歌って踊れるアイドルではなく、骨太なロックンロールバンド。
けれど、作中の主人公と同じくライブが(ハコが)大好きで、
文字通り人生とリンクしている。そんな点がそっくりでした。
本当はもっともっと重要な同一事項があるのだけれど、
それについては僕だけの秘密。
けれど、最近僕が嘆いていた過去は彼女とのそれだったので、
本書を手にしたタイミングといい、
ちょっと忘れられない一編になりそうです。

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はじめてのスタンプ

ラインのスタンプを貰いました。
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このセンスが流石だな。大好きだ。

彼女とは知り合う前に同じライブ(コチラ)に参戦していた。
運命みたいなモノさえ感じたあの頃、
こんな結末になるとは思わなかった。

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ストーンズはリトマス紙

「Exhibitionism-ザ・ローリング・ストーンズ展」のお土産で頂きました。
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トートバックとポストカード。

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カードにある東京ドームは僕も参戦しています(コチラ
だから余計に嬉しい。本当にありがとう。

おまけ:

『ストーンズはリトマス紙』

若い頃ストーンズやビートルズを聴いてピンときたかどうか。
それがロックファンかどうかをはかる試薬となる。

「ストーンズはリトマス紙」と彼女は言う。

もしもロックで色が付くならば、それはたぶん紫だ。
そして僕達はストーンズのリトマス紙に反応した、
夏の終わりにプールを上がらない子供。
唇を紫にしながら笑っている。

僕達ロックファンは「いい歳なのに」という多分の恥ずかしさと、
「この歳になっても」という微かな誇りみたいなモノを持っている。
どんなに馬鹿にされても好きなモノは好き。
そんな愚者の矜持を二人は共有していたのに。

でも僕達はこれからもきっとどこかで繋がっている。
どんなに離れていても、大人に呆れられても、
夏の終わりに唇が紫になっても、震える身体で笑っている。
それがストーンズのリトマス紙に反応してしまった、
ロックファンの僕達だ。

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THE SLUT BANKS 『“切り裂きノイズ” ツアー』 (5/11 吉祥寺ROCK JOINT GB)

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最高の夜だった。

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やっぱり忘れられない。

おまけ:
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ツアータオル(NOIZ THE RIPPER)を頂きました。
彼女が自分用に買ったモノなのに……。
恐縮至極だけれど、お気持ちだと思って遠慮なく頂きます。
ありがとう、ずっと大切にします。
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前回のタオル(ダイレクトテイスト)と同じく、
ずっとここに飾っておきます。

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簡易書留

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しばらくやり取りも無く、
突然届いた簡易書留。

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中には手紙も無く、
ただライブ(※)のチケットが1枚だけ入っていた。

※ THE SLUT BANKS 『“切り裂きノイズ” ツアー』 (5/11 吉祥寺ROCK JOINT GB)

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沢木耕太郎『深夜特急6-南ヨーロッパ・ロンドン-』読了

イタリアからスペインへ回った〈私〉は、ポルトガルの果ての岬・サグレスで、ようやく「旅の終り」の汐どきを掴まえた。そしてパリで数週間を過ごしたあと、ロンドンに向かい、日本への電報を打ちに中央郵便局へと出かけたが―。Being on the road―ひとつの旅の終りは、新しい旅の始まりなのかもしれない。旅を愛するすべての人々に贈る、旅のバイブル全6巻、ここに完結。
内容(「BOOK」データベースより)

終わり方。

本書は『深夜特急』の最終巻(その他はコチラ→1,2,3,4,5,6
ゴールを目前に控え、著者は旅の終わりの「汐どき」を探します。
そして迎えた「終わり」に、思わず頬が緩んでしまいました。

61歳のアン王女と過ごしたローマ
バルで無を意識したマドリード
「汐どき」を捕まえたポルトガル・サグレス

本巻でついにゴールのロンドンに辿り着きましたが、
旅自体には特段の事件・出来事はありません。
それより前巻で意識しはじめた旅の「終わり」をさらに進め、
具体的な「終わり方」を探った時期だと感じました。
実際、マルセーユから真っ直ぐパリに向かえば
ゴールのロンドンはすぐ目と鼻の先だったし、
リスボンからは船で日本に帰れるチャンス?もあった。
でも、その度に著者は「これで終わりか?」と煩悶し、
旅の「終わり方」として納得がいかないんですよね。
その結果、ありていに言えば時間稼ぎに(無駄に)
旅を続けることになりました。
結局、ユーラシア大陸の最果てまで(遠回りして)
行ってしまったのだけれど、
僕はこの著者のイジイジした様子が不快ではないし、
むしろ共感みたいなモノを覚えました。
それは大好きな娘とのデートにどこか似ているからだと思います。
帰りたくなくて、お腹タポタポなのに
フリードリンクのコーヒーを何度も何度もお替りしちゃう。
そんな経験、みなさまもありますよね。

また本巻のハイライト、ゴールの顛末が良かったです。
長い物語のオチ(?)として賛否は別れるかも知れませんが、
僕は「クスッ」となってしまいました。
さらには

ある部分で旅を、人生を諦観しつつ、
それでもまた情熱は蘇る。

そんな著者の姿が目に浮かび、
どこか明るい気分にもなりました。

蛇足です。
本シリーズ『深夜特急(6冊)』は僕の大切な人から借りました。
本当は「返さなくて良い」と彼女は言うのだけれど、
僕はキチンと会って返したいと考えています。
それは『深夜特急』が彼女のバイブルである、
と言うが一番の理由だけれど、
僕がイジイジしているのが大きいと自己評価。
一体、本作に何を習ったのか?って話なんですが、
僕はこの歳になっても「終わり方」なんて学びたくないし、
最後のコーヒーなら何杯だってお替りしたい。
この想いは胸に秘めるけれど、しかし消すこともできません。

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天下茶屋・富嶽百景・ゴールデンバット・彼女の座椅子

太宰治『富嶽百景・走れメロス 他八篇』読了

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沢木耕太郎『深夜特急5-トルコ・ギリシャ・地中海-』読了

アンカラで〈私〉は一人のトルコ人女性を訪ね、東京から預かってきたものを渡すことができた。イスタンブールの街角では熊をけしかけられ、ギリシャの田舎町では路上ですれ違った男にパーティーに誘われて。ふと気がつくと、あまたの出会いと別れを繰り返した旅もいつのまにか〔壮年期〕にさしかかり、〈私〉は、旅をいつ、どのように終えればよいのか、考えるようになっていた。
内容(「BOOK」データベースより)

終わり。

本書は『深夜特急』の第五巻(その他はコチラ→1,2,3,4,5,6
長く続いた旅も終わりが見え始め、
感動よりも寂寥を感じさせる回(巻)となりました。

メッセージを託され訪れたトルコ
C と T の境界線・ギリシャ
そして
喪失感に満たされた地中海

本巻では前巻よりさらに旅への情熱が色あせており、
自身の内面をみつめる描写が多くなりました。
また旅の終わりを目前としたそれは
必然的に「終わり」を意識したモノとなり

旅の終わり、文明の終わり、人生の終わり

と、想いが旅からどんどん拡散してしまいました。

また本巻でアジアからヨーロッパへの文化の横断がなされています。
それまでの猥雑で活気のあったアジア各国に比べ、
洗練され、都会化もされたヨーロッパ(ギリシャ)の人々は
概して静かでスマート。旅人との距離感も行儀よくを崩しません。
それに対して著者はどこか物足りなさを覚えるものの、
あらゆる意味で危険の少ない、安寧とした日々でもありました。
実際、イスタンブールの熊の押し売り(?)を最後に
ギリシャに入ってからは殆どトラブルはありません。
ただそれもコインの裏表であり、
どう転ぶかなんて運の差だけだったのかも知れませんね。
旅が著者に与えた「自信」と「鈍感さ」は、
己の命に対する無関心を伴った危険な才能でもありました。

正直、旅行記にしては面白みにかけるし、
読み物としても特筆すべきトコロは無いのかも。
それでも旅を人生とした考察には、
その手垢の付いたテーマにも関わらず、
強く印象に残るものがありました。
きっとそれは読者の年齢にも拠ると思うのだけれど、
人生の黄昏を迎えた僕には何とも言えぬ共感がありました。

蛇足で露天の買い物について。
それはイスタンブールのグランド・バザールでのこと。
そこで著者はミカンを購入しようとするのですが、
ミカン売りの少年は目の前のキレイで美味しそうなミカンを
袋には入れてくれず、隠してあった歪なミカンを詰めようとします。
それに怒った著者は少年とやり合うのですが……。
その結末は本書をご確認していただくとして、
僕は遥かな昔、上野・アメ横でホッケを購入した時のことを
思い出しました。
それは皿に三枚か四枚乗せられたホッケの干物だったのですが、
僕は当然大きくて美味しそうな一枚が乗っている皿を選びました。
でも、おじさんはその皿を袋に入れるとき、
その中で一番大きくて魅力的なホッケの一枚を
地面に落としてしまったんですよね。
すぐに何も無かったようにその大きい一枚は仕舞われ、
変わりに別の貧相な一枚が袋に入れられてしまいました。
そのあまりの早業に僕はあっけにとられ、
結局そのまま購入してしまったのですが、
今考えるとあれはワザと落としたのかも知れませんね。
イスタンブールの少年のミカンの様に、
あの大きな一枚は客引き様のディスプレイだったのかも。
きっとあれからもお客に選ばれる度に、
大きなホッケは地面に落とされたのではないでしょうか。

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gifts from TAIWAN

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プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫享年23) 臆病で泣き虫。けれど誰よりも強くて優しい子。僕の宝物。職業:これからもずっと父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒9歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。いまもお姉ちゃんを探しちゃう。職業:父ちゃんの邪魔。
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