森博嗣『MORI Magazine 3 最も「森博嗣らしい」雑誌第3号』読了

なんだって、終わりに近づいている。 書籍と雑誌、創作とエッセィを縦横無尽に駆け回る! 唯一無二の、最も「森博嗣らしい」エッセィシリーズ最新刊!
内容(出版社内容紹介より抜粋)

ただただ「雑」

本書は超マイナ、けれども超スペシャルな「雑誌」第3号(1,2,3)。
前号よりさらにさらに「雑」の色が濃くなりました。
しかしその「雑」は variety ではなく messy です。

内容はバッサリ略で一言、よろしいんじゃないでしょうか(三度目)
因みにここに来ても目新しさは皆無(ある意味当然)。
しかしそれも想定の範囲です。
ただし、元々著者の(創作でもビジネスでも)情熱みたいなモノ
が感じられないこのシリーズも、三作続くと流石に飽きました。
願わくば(←慣用句。特に意見はありません^^)
シリーズの終わり方を、引き際を、今度こそは誤らないように。
P195-最終行の予測が的中される事をお祈りいたします
(←慣用句。特に意見は……以下略)

因みに書き下ろしショートショートは前作以上に訳ワカメ。
一つは意味がないし、一つはテキトーすぎてみるべきがない。
一つは「親父ギャグか?」としか言いようが無く、
『森博嗣』の片鱗は全くありません。
たぶん「読まない」がベストだと思います。

さらにお悩みにお答えする各コーナですが、
今回も全く質問に応えていません。
勿論、文章から得られる情報を恣意的に切り取って、
一応の回答はされていますが、
質問者の真意はことごとく無視しています。
『森博嗣』に共感みたいなモノは期待はしていないけれど、
ここまで続くと白けた気分にもなりました。

蛇足でチャンスについて。
それは『チャンスとは、だいたいワンチャンスである。』
の一編にあったのですが、本書で殆ど唯一「鋭いな」と感じました。
詳細は本書をご確認していただくとして、
タイトル以上に価値のある指摘(及び補足)があったんですよね。
逃したときに限って

「タイミング」を「チャンス」と置き換える。

そんな傾向が僕にもあると、愕然となりました。

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山田詠美『ファーストクラッシュ』読了

初恋、それは身も心も砕くもの。母を亡くし、高見澤家で暮らすことになった少年に、三姉妹はそれぞれに心を奪われていく。プリズムのように輝き、胸を焼く記憶の欠片たち。現代最高の女性作家が紡ぎだす、芳醇な恋愛小説。
内容(「BOOK」データベースより)

一度で充分。

本書は同じ男に初めての恋を覚えた三姉妹の物語。
初恋をありふれた「甘く切なく」ではなく、
「価値観がぶっ壊されるコト」。
そう『山田詠美』らしく再定義がなされています。
良作。

男を家来の様に扱う長女
男に意地悪を続ける次女
男と犬の様にじゃれ合う三女
そして
それぞれの初恋の結末……

内容はバッサリ略で一言。はぁ~良かった。
ただ、きっと『山田詠美』のファンには物足りないと思います。
彼女の若い頃の作品に比べれば、ぬるいし、上品。
でも僕は『山田詠美』の円熟みたいなモノを感じたんですよね。
ラストも往年のファンにはイマイチだと予想するけれど、
ゆるい詠美ファンの僕は温かなモノに包まれました。

とは言え、アチコチに『山田詠美』の鋭い筆もありました。
例えば

(思春期とは)あれこれと愚にも付かない独創的な理由を
でっち上げようとする時期。独創的!(本文より)



(男と)よろしくやるのは楽しいのよ。
そして、楽しいと幸せは似ているんだよ(同じく本文より)

それらは主体からあえて一歩引いた視点。
しかし、どこかで肉感を予感させる彼女らしい視点でもありました。

以上、本書は『山田詠美』らしさを残しつつ、
しかし彼女らしくない(?)割と甘い物語だったと思います。
ファンだけにとどまらず、どなた様にもひろくお勧めです。

蛇足で初恋について。
本書では初恋を『ファーストクラッシュ』としており、
文字通り(初めての)価値観の崩壊と再定義されていました。
その内容は本書をご確認していただくとして、
僕はいわゆる初恋とファーストクラッシュは別物では?
と感じてしまいました。これは僕個人の経験ですが、
初恋で価値観の崩壊……とまでは無かった様に思うからです。
勿論、初恋で身悶えするほどの痛みを知るコトにはなったけれど、
いま思えばそれ以上ではない。
また、その後に経験したいくつかの恋愛でも同じです。
上手く行ったのも、上手く行かなかったのもあるけれど、
いづれにせよ『価値観の崩壊』までは無かったような気がします。

それでも、僕にも一度だけ『ファーストクラッシュ』はありました。

これ以上を控えるけれど、僕にとって『ファーストクラッシュ』とは
価値観の崩壊であると同時に『失恋の中の失恋』。
『キング・オブ・失恋』って感じになるのかな?(笑←目は笑っていない)
きっと誰でも一度は経験すると思うのだけれど、
今の僕の気持ちを素直に言えば『ファーストクラッシュ』は一度で充分。
そんな感じです。

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角田光代『口紅のとき』読了

初恋、結婚、別離…ドラマはいつも口紅とともに。角田光代書き下ろし短編小説。
内容(「BOOK」データベースより)

口紅の記憶。

本書は銀座「HOUSE OF SHISEIDO」とコラボによって生まれた作品。
女性にとって口紅が特別なアイテムである理由が、
男の僕にでも(ある種の共感と共に)理解できる気がしました。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、とても良かったです。
角田さん、何をやっても本当に上手いなぁ(感嘆)

本書のテーマに「旅立ち」を感じました。
例え描かれた風景が「別れ」だったとしても、
僕はそこに「出発」や「決意」に似た心情の何かを観ます。

本書は連作とはいえ各話はショート・ショート。
何を書いても殆どネタバレになってしまうと思うので控えます。
ただ全体でも僅か100ページとちょっとだし、
ぜひ実際に手にとって確かめて欲しいな、って思います。

最後に、口紅の記憶について。
それは最後のエッセイ『ちいさなドラマ』の中に、
口紅に付随した記憶がいくつかあったのですが……。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は男でも口紅に対する記憶は、
割と色濃く残っているのでは?と感じました。

角田さんは男性から口紅を贈られた経験を二つ挙げられています。
一方?で僕は人生で三回ほど女性に口紅を贈ったことがあります。

そのうち一回は角田さんに口紅を贈った二人の男性と
同じ失敗をしてしまいました。
もう一回は女性から口紅を強く求められました。

「女性の唇にある口紅は、男が舐め取るのが礼儀」

僕が山田詠美さんの作品から引用(意訳)し、
嘯いていたのを覚えていたのでしょう。
彼女は終わりの気配を察していたのだと思います。
もう一回は割愛。ここでは書くコトは出来ません。

以上、控えめな私見ではありますが、
口紅は男にとっても割りとメモリアルなアイテムだと思います。

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赤松利市『犬』読了

大阪でニューハーフ店「さくら」を営む桜は63歳のトランスジェンダーだ。23歳で同じくトランスジェンダーの沙希を店員として雇い、慎ましくも豊かな日々を送っていた。そんなある日、桜の昔の男・安藤勝が現れる。今さらと思いながらも、女の幸せを忘れられない桜は、安藤の儲け話に乗ることを決意。老後のためにコツコツと貯めた、なけなしの1千万円を用意するが……。
内容(出版社内容紹介より抜粋)

なるようにしかならない。

本書は老いたニューハーフを中心に愛と暴力を描いた作品。
登場人物は殆どが生物学上の男(♂)であり、
その点は珍しいのですが(語弊を恐れずに言えば)あとは良くある話かも。

内容はバッサリ略で一言、うーん。
個人的に『赤松利市』はデビュー作から特に注目しており、
作品のインパクトは近年稀に見ると評価しています。
しかし前作の『純子』や、続く本作も期待はずれの感を拭えません。
それは震災ビジネスやホームレス体験をはじめとする
私小説的な手法を『ボダ子』を最後に封印したコトが原因でしょう。
作風の転換を図っている現在は、今後の作家人生を大きく左右する、
繊細で重要な過渡期なのかも知れません。

ただ、本作が決して拙いと言う訳ではありません。
エログロではあるので、読者を多少なりとも選ぶと思いますが、
ストーリ自体はよくある話だと思うし、それだけにまとまっています。
どんな方にお勧めすればよいのかちょっと迷うけれど、
どなたでも大きく損をする事はない。割りとそう強く思います。

性(トランスジェンダー)に関する話は一切略。
ここでは『老い』についてだけを取り上げますが、
老人の僕には身につまされるモノがありました。
例えば年金を含む老後に必要なお金のコトや、
身寄りが無い一人暮らしの孤独感・疎外感。
さらには加齢による健康不安があったのだけれど、
中でも

老いとは衰えやのうて衰えからくる痛み(本文より)

には、リアルが過ぎて背筋に冷たいものが走りました。
また作中にあった「自己責任」を、僕は割と当然と考えています
(勿論、現在の僕の窮状も自己責任です)。
けれど、「お金」や「孤独」は兎も角、
「衰え」は自己責任とちょっと違う気もするんですよね。
「衰え」は誰にでも平等に与えられるモノではないでしょうか。
でも一方で若い人が「衰えだって自己責任だ!」って
言いたくなるのも判るような気がします(特に社会保険料を考えれば……)
兎に角、僕はなるべく自分の始末は自分でつけるように
努力するしかありません。

因みに、こんなにエラソーに言っても、
僕だって主人公・桜と同じく、老後に不安を抱える老人です。
それでも頑張るだけ頑張ったら、あとは

なるようにしかならない

とも感じていたり(笑)
「楽観」は僕が人生で得た一番の知恵です(ただし実践は難しい^^)

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歌野晶午『春から夏、やがて冬』読了

スーパーの保安責任者の男と、万引き犯の女。偶然の出会いは神の思い召しか、悪魔の罠か?これは“絶望”と“救済”のミステリーだ。
内容(「BOOK」データベースより)

反転ではなく、むしろ正転。

本書は罪と罰、告白と赦し、そして恩と怨を扱った長編小説。
読後に残る「やるせなさ」がある意味でリアルです。

ひき逃げで娘を失った男
万引きで捕まった若い女性
そして
恩返しのそれぞれの結末

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
正直『葉桜の季節に君を想うということ』には遠く及ばないし、
ミステリィとしての妙味も殆どない。
それでもエンタメ(フィクション)の注意書きを加えるなら、
ある意味でリアルな世界観を僕に提示したんですよね。
それは

この世は「無情」だというコト。
またこの世に神様がいるとするなら、彼は間違いなくイジワルだ。

というコトです。
中でも一気に様相が変わる後半において
とある人物の死がそれを強く感じさせました。

彼女は愚かではありました。
いろいろ足りなかったし、軽率でもあったでしょう。

しかし、この残酷な報いを受けるほど彼女は間違っていたのかな?
彼女の眩いばかりの誠心(と実際の行為)を考えるとき、
この世の無常を想わずにはいられません。
でもそれなのに、僕には加害者を断じる事も出来なくて……。

以上、本書のオビには「ラスト5ページで世界が反転する!」
とあったけれど、僕には「世界はかわりなく通常運転(正転)だ」
と感じてしまいました。本作を毀損する訳ではないけれど、
オビは的外れの感が拭えません(この結末が本作の白眉なのだから)。

蛇足:
IMG_20191109_140943.jpg
初版、P266-8行目。
『平田は旧知の新聞記者と…』の “平田” は “小瀬木” の誤り。
この時点で平田は拘留中です。

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島本理生『夜はおしまい』読了

性とお金と嘘と愛に塗れたこの世界を、私たちは生きている。ミスコンで無遠慮に価値をつけられる私。お金のために愛人業をする私。夫とはセックスしたくない私。本当に愛する人とは結ばれない私―。秘密を抱える神父・金井のもとを訪れる四人の女性。逃げ道のない女という性を抉るように描く、島本理生の到達点。
内容(「BOOK」データベースより)

自傷の作法。

本書は性を巡る罪と救済を記した4つの連作短編集。
女性の性を繊細で傷つきやすく、
しかし複雑で崇高な様子を訴えていました。

ミスコンで鼻柱が折られた女子大生
愛人家業で性を推量するOL
不倫を繰り返す女性作家
性同一性障害のカウンセラ
そして
哀しい過去のある神父

内容はバッサリ略で一言、難しいなぁ。
それはリーダビリティとして難解と言うわけでなく、
テーマが解答のしようも無いモノばかりだった気がするからです。
さらには『雪ト逃ゲル』の主人公・私(♀)の述懐

女は人間だ。男もまた人間のはずだ。
だけどその二つの人間は決してイコールでは結べない(本文より)

とあるように、本書は(著者の他の作品と同様に)
男性読者を拒絶しているようにも感じてしまいました。
もっと言えば、男の僕は(女性の性について)
考えることさえ赦されていない様にも受け取れ……。
この点に関して特に意見はないのだけれど、
これから本書を手にする男性に向けて一応のご報告です。

以上、(男の)僕は女性の性について語るリスクを控えたく、
今回はこれで失礼したいと思います。

ここからは蛇足で自傷について。
主人公として登場する4人(プラス1名)の女性は、
「性によって傷つけられた被害者」とされていた様に感じます。
例えばそれは望まない性行為だったり、
不躾な価値観の押し付けだったり、神様の意地悪だったり。
その結果、彼女達はそれぞれ広義の自傷に走るのですが……。
ここで僕は自傷について二つのコトを考えたんですよね。
一つは(消極的ではあるけれど)自傷もアリだと言うコト。
それは上記の『雪ト逃ゲル』であった

自分の身に起きた事は、自分を責めることでしか癒されない
(同じく本文より)

が、恥ずかしいけれど僕の性向と一緒だからです。
けれどその一方で(もう一つの考えである)

自傷にも作法みたいなモノがあるのでは?

と頭に浮かんでしまいました。
これも僕の経験(ありていに言えば人に迷惑を掛けた)が
そう囁くのですが……。

他人を使って(巻き込んで)自分を傷付けていると、
その他人もまた同じ様に傷つけてしまう。

それが自傷の法則であるような気がします。
推奨するわけではないけれど、
自傷するなら自分一人で完結した方が良いでしょう。
出来れば自分を愛してくれる人が一人もいないところで、
好きなだけ自分を切り刻んで欲しいと思います。
そして痛みの分だけ、魂が癒えることを……。
心から願っています。

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真藤順丈『宝島 -HERO's ISLAND-』読了

英雄を失った島に、新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染み、グスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり―同じ夢に向かった。超弩級の才能が放つ、青春と革命の一大叙事詩!!
内容(「BOOK」データベースより)

英雄とは。

本書は第160回(平成30年度下半期)直木賞受賞作。
米軍基地から物資を盗む「戦果アギヤー」を中心に、
戦後沖縄の過酷な運命を描いています。

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
ヤマトンチュの僕が『沖縄』を語ることなんて出来ないけれど、
それでも同じ “日本人” として哀しみを感じずにはいられません。
作中にあった、多くの悲劇(その殆どの犠牲者が女と子供)に、
後にテロリストになるレイと、
ほとんど近似値の怒りを覚えてしまいました。

物語には勢いがあるし、高い熱量もありました。
しかし構成にも細部にも少なくないアラを感じたんですよね。
それを良く言えば「イケイケ」だし、悪く言えば「いい加減」。
しかしそれも著者の確信的な「なんくるないさー」だったのかな?
ウチナンチュの怒りの熱量を、魂の誠実さを、島を愛する純粋さを、
一切毀損することはなかった気がします。
むしろ「なんくるないさー」的な筆が、
沖縄らしい世界観造りに寄与したとさえ感じました。

個人的には近い将来、必ず映像化されると予想する本作。
勢いのあるエンタメを御所望の方にはお勧めです。

蛇足で英雄について。
作中、レイやグスク、そしてヤマコの言葉から
いくつかの「英雄」論が語られています。例えば

英雄とは虐げられた人たちを解放する(本文より)

だったり、

この世の法則に抗うのが英雄(同じく本文より)

だったり。
いづれにせよ、異なる見地から多面的な英雄論が展開されていました。
さらなる詳細は本書をご確認していただくとして、
読書中、凡人である僕は控えめにこう考えていたんですよね

英雄の条件って、ただ生きていることじゃないの?

って。
幼稚な考えで恥ずかしいのだけれど、

どんなに凡人でも、人は必ず誰かの宝物。

僕はそう信じています。
だからこそ、きっと誰もが生まれながらにして英雄だし、
英雄ならば、なんとしてでも生きなければ。

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木下昌輝『戦国十二刻 始まりのとき』読了

死して生まれよ。大胆で斬新!歴史を操る時代小説イノベーション!!誰もが知る史実の中に驚きの因縁が。名高き軍師たちの、新たな時代へとつながる濃密な24時間。
内容(「BOOK」データベースより)

戦国ファンタジー。

本書は新しい時代のさきがけとなった男たちの、
始まりの24時間を描いた短編集。
壮大な枠組みの中で、細部を活き活きと描いており、
構成の妙も楽しめました。

内容はバッサリ略で一言、ほとんど漫画です(笑)
勿論、これは “下げて” いるのではなく、
エンターテイメントを評して(僕なりの)最上級の褒め言葉。
正直、ファンタジーがかなり入っちゃっているので、
リアルを求めると肩透かしになるけれど、
細かいコト(?)を言うのは野暮って奴です^^
それでも、各話それぞれは非常に完成度が高く、
歴史好きな方、特に浅いファンの方にはかなりお勧めです。

個人的に挙げるなら『厳島残夢』の一編。
毛利が何故に天下を目指さなかったのか?
その理由が(フィクションを承知で)納得できました。
それでも……、いや、しかし……。
もし関が原の戦いで毛利が動いていたら、
戦乱の終わり、新しい時代の到来はもっと遅くなっていたのかな?
やっぱり、毛利は天下を諦めて良かったのでしょうね。

最後になりますが、
本書は『戦国24時さいごの刻(とき)』の続編です。
僕もどこか似ているよなぁ、と思って借りたのですが、
前作は文庫化で『戦国十二刻 終わりのとき』と改題されていました。
いやぁ~、納得、納得(笑)

さらに蛇足。
『因果の籤』にあったのですが、斎藤道三が下克上を果たした土岐家。
その中にあって土岐頼充は、後に信長の妻となる帰蝶(濃姫のコト)
を娶ったとされています(勿論、道三の主導による政略結婚です)。
けれど、僕の記憶では帰蝶の前夫(信長の前)は土岐頼純なんですよね。
僕の記憶違いか、それとも頼充と頼純は同一人物になるのかな?
(ちょっとだけ調べたけれど、同一人物かどうかは判りませんでした)

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川上弘美『なめらかで熱くて甘苦しくて』読了

セックスと性欲のふしぎを描くみずみずしく荒々しい作品集。性と生をめぐる全5篇。
内容(「BOOK」データベースより)

突き詰めすぎ。

本書は性愛をテーマとする五つの短編集。
しかし、性と言うよりは生に重きが置かれ、
官能小説と言うより哲学書と言った趣。
本書を総括する最終話にいたっては宇宙さえ予感させました。

今回も印象に残った二編をご紹介。先ずは『aqua』
苗字と学年を同じくする二人の少女のお話です。
小学三年生で出会った彼女達は成長するに従い、
その関係も微妙な変化があらわれるのですが……。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は水面はやはりどこかで自分の為に泣いたのだと思います。
と言うか、むしろ自分の為に泣いて欲しい。
僕は強くそう願ってしまいました。

もう一つは『terra』
アパートの隣人が事故死した沢田と、その恋人・麻美のお話です。
二人はその事故死した加賀美の納骨の旅に出るのですが……。
こちらも詳細は本書をご確認していただくとして、
僕はその後、沢田は割りとアッサリ加賀美を忘れると予想します。
またその空白を埋めるのは麻美じゃない可能性が7割以上あるかと。
それでも僕は沢田にさほど嫌悪感は覚えないんですよね。
寂しさや空虚を埋めるセックスに、
相手の人格はそれほど重要ではない(物理的なモノがあれば良い)。
そこに男女の違いはないと思います。

最後に。
本書は性描写が一切なく、秘かに期待した官能とはほど遠い作品でした。
性を突き詰めた結果、生に比重が移ったのだと思うのだけれど、
エンタメとしてもう少し肩の力が抜けたモノを読みたかったかな。
ただ秋に深く書に潜りたい時には、候補にあげたい一冊だと思います。

ここからは蛇足。男の浮気?について。
それは『aer』の一編おいて、
出産前後の女性の赤裸々な独白があったのですが……。
こちらも内容はバッサリ略しますが、
僕は読書中、フトこう思ったんですよね。

これじゃあ、
男が他の女性に目が行っちゃうのも仕方がないのでは?

まぁ、それを言い出すと、卵が先か鶏が先かになっちゃうし、
そもそも個人的に議論を避けたいテーマでもある(ジェンダー論)。
なので蛇足にしたけれど、主人公(♀)の言葉を借りれば

男だって動物である。

それ位は言っても罰はあたらないような……(オドオド)

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ジェイムズ・P・ホーガン/著 小隅黎/訳『未来からのホットライン』読了

アメリカ西海岸で技術コンサルタント事務所を開いているマードック・ロスは、スコットランドの古城に住む引退した物理学者の祖父に招かれ、友人のリーとともにイギリスへ向かった。祖父が政府の助けもなく、独力でタイム・マシンを完成させたというのだ。タイム・マシン・テーマにいどんだJ・P・ホーガンのお手並みやいかに。
内容(出版社内容紹介より)

無視する。

本書は過去に向かってメッセージを送る装置(タイム・マシン)
を使い、いまあるトラブルや悲劇を未然に防ぐ物語。
SFではありますが、切ないラブストーリーの方が印象に残ります。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、ひゃあ~面白かった!!
正直、やや古臭さを感じるし(1980年の作品です)
タイム・マシン(タイムパラドックス)に関する
論理的・科学的考察が(序盤は兎も角)かなり弱い。
SF にシリアスやリアリティを求めると肩透かしになります
(例えば僕がそうでした)
けれど、そんな細かいコト(?)はどうでも良くなる位、
ストーリーが、ロマンスが秀逸なんですよね。
きっと良くあるお話(タイムマシンを使って問題解決!)
だとは思うけれど、非常に制約の多いタイム・マシンにする事で、
物語をエキサイティングに仕立て上げていました。
またラストはもう少しなんとかして欲しい気もしたけれど、
一方で成就しない恋はいつだって美しいコトも確かでしょう。
ちょっぴり切ない余韻こそ、本書の白眉だと(素直に)思います。

因みに映画化されたら『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に
比肩する極上のエンターテイメントになると予想します。
おじいちゃんと孫の配役は、それぞれクリストファー・ロイドと
マイケル・J・フォックスで決まりです(笑)

蛇足で未来からのホットラインについて。
それは本作の最重要のキーアイテムであり、
未来から届く予言と言うか、意味不明の指示のコトです(笑)
で、きっと誰もが想像するとおり、
本作も過去の人にメッセージを信じさせるコトが課題となっており、
その解決が妙(の一つ)となっているのですが……。
因みにもし僕がこの『未来からのホットライン』を受け取ったとしたら、
間違いなく無視するでしょう。ただのイタズラだと思うし
仮にそれが E-mail ならフィルタリングされて直接ゴミ箱行き。
そのレベルの出来事として、あっけなく処理される筈です。
そう考えたら、僕は(過去の)他人を動かすより、
僕自身を動かす方が難しいかも?と感じてしまいました。
時間のそれに比べれば非常に小さいのだけれど、
これも一つのパラドックスというコトで(笑)

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プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫18歳) 泣き虫で臆病。温厚だけど父ちゃんには我儘な女王様。妹がちょっぴり苦手。職業:父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒5歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。お姉ちゃんともっと遊びたい。職業:父ちゃんの邪魔。
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