金原ひとみ『ハイドラ』読了

出会った瞬間から少しずつ、日々確実に、発狂してきた―。有名カメラマン新崎の専属モデルを務める早希は、私生活でも密かに彼と同棲している。付き合って三年を過ぎ、セックスの時以外は体に触れてこない新崎。不均衡な関係に深い倦怠感を覚えるなか、ずっと早希のファンだったというバンドマンの松木と出会う。ひずみのない愛を求めては傷つく女性の心理に迫る、傑作恋愛小説。
内容(「BOOK」データベースより)

隷属希望。

本書は恋愛を通して女性心理を描いた作品。
早希の(ある意味で自傷するしかない)姿に痛ましさを覚えました。
でも軽重?を別にすればそれほど珍しくも無いのでは?

今は仕事だけで結ばれた恋人
心から結ばれようとする新しい男
そして
心の均衡を保つ摂食障害

内容はバッサリ略で一言、割と面白かったです。
正直、オッサンの僕には若い女性の心理は判りません。
けれど自らを傷付ける事である種の精神的安定を得る感覚。
それは他人からみれば愚かな行為であり、
もっと言えば自分でも馬鹿なコトだと理解していても、

そうするより仕方が無い

そんな感覚だけは判るような気がしました。
それでも、きっと他人が考えるより、
本人(早希)は絶望していないと予想します。
ただ本当の絶望を(今以上の絶望を)予感し、怯えている。
そんな状態ではないでしょうか。
きっと本当の絶望って、こんなモンじゃないから。

以上、本書には目新しい点はほとんどなく、
著者一流の刺激みたいなモノにも乏しい。
けれど逆を言えば万人向きな作品です。
ハズレを回避したい時の候補にどうぞ。

蛇足で「隷属するコトを望む」性質について。
端的に言えば主人公・早希がそうだったと思うのですが、
僕はそれほど珍しくない性質なのかな?と感じました。
(反対に従属されるコトを望むのが新崎でした)
よく世間のお悩み相談等で

パートナの精神的DVウンヌン、マウントがどうのこうの……

と目にするコトがあります。
でも僕は他人(パートナ)に強いられてではなく、
むしろ自らそのポジションに行ってしまう人。
また、望んで行く……とまでは言わなくても、
隷属されるポジションが精神的に安定する傾向にある人。
そんな方が、僕の少ない人生経験の中でもいたような気がします。
それに関して僕に意見はないのだけれど、
隷属を強いられている(とされている)人の発言だけを採用する。
その危険性を想います。

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ダニエル・フリードマン/著 野口百合子/訳『もう過去はいらない』読了

88歳のメンフィス署の元殺人課刑事バック・シャッツ。歩行器を手放せない日常にいらだちを募らせる彼のもとを、因縁浅からぬ銀行強盗イライジャが訪ねてきた。何者かに命を狙われていて、助けてほしいという。やつは確実になにかをたくらんでいる。それはなんだ。88歳の伝説の名刑事vs.78歳の史上最強の大泥棒。『もう年はとれない』を超える、最高に格好いいヒーローの活躍!
内容(「BOOK」データベースより)

高齢化社会向けハードボイルド。

本書は『もう年はとれない』に続く
バック・シャッツ・シリーズの第二弾。
元気すぎるお年寄りの活躍に、
快哉と興醒めが1:1となりました。

因縁の相手からの救援要請
ほろ苦くも輝いていた過ぎ去りし日々
そして
ユダヤ人の忌まわしき記憶

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
本書はイマドキ流行らないコテコテのハードボイルド。
洋書らしいワイルドでスパイシーな筆(文体)が
オッサン(僕)には堪りません!
またユダヤの話は機微に触れるので控えるけれど、
それでも現代にも通じる人種差別には沈痛な気分にもなりました。
しかし……

歩行器をつけ、介護施設にお世話になっている88歳の老人が
こんなに元気な訳がない(呆)

これがコメディなら判るけれど、
正真正銘のハードボイルドですからね?
あまりにも現実離れしており、何度も白けてしまいました。
本作の半分を占める過去の回想(シャッツの若き頃)が
滅茶苦茶格好良いだけに、残り半分の現代パートが残念です。

高齢化は世界中の傾向ではあるから、
今後も高齢者向けのヒーローが増えてゆくのかな?
僕も高齢者だけれど、それはちょっと嫌だなぁ。

蛇足で食のタブーについて。
作中、シズル感あふれる料理の話題が多くあったのですが、
反対にユダヤ人にとって禁忌な食べ物についてもありました。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕はベジタリアンだけでなく、
ユダヤ教徒にもなれないかなぁ……と感じてしまいました。
勿論、それは教義とは全然関係なく食事の面。
なんせ本書もさきいかを片手に読んでいましたし(笑)

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乙川優三郎『むこうだんばら亭』読了

海の厳しさは身過ぎの厳しさであり乗り越えれば生の喜びでもある。“とっぱずれ”に暮らし、強風にさらされながらそれぞれの海を見つめる人達。哀しいほど潔くあるいはしたたかに生きる男女を描く全八篇。
内容(「BOOK」データベースより)

ごまかせば良い。

本書は犬吠崎の居酒屋を舞台に男と女を描いた八つの短編集。
流されるままの昨日と、見えない明日。
今を生きるだけで精一杯の人々に、
共感にも似た切なさがこみ上げました。
良作。

内容はバッサリ略で一言、激しく心が揺さぶられました。
ただ作中には特段の事件も事故もなく、
来し方に傷付き、行く末の見えぬ人々の姿があるだけ。
そこに男女の情が微かに加わるのだけれど、
どちらかと言うと性を超えた人生の伴侶みたいなモノでした。

ただ、ほぼ全ての話に売笑(←売春のコトです)があります。
だからと言って特にないのだけれど、
その手の話が苦手な方はご注意を。
個人的には『古い風』のせつなさのやり場の無さに、
憤りを感じてしまいました。
しかしそれもラスト『果ての海』で救われます。
僕は目頭から熱湯が噴出し抑えることが出来ませんでした。

ほとんどがおよそ30ページの非常に短い話の編集です。
『乙川優三郎』をまだの方には、是非にお勧めしたいと思います。

最後に。
前述の『古い風』の中に

肝心なことはごまかして生きてゆくのが男と女(本文より)

とありました。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕はこの一文に我が意を得た思いがしました。

過去の傷なんか誰にでもあります。

例外なんてありません。
男女の仲にあって、そんなのは話さなくて良いし、聞く必要もない。
それを世間では『保身』と言うのかも知れないけれど、
相手に全てをさらけだすコトが誠実だとは僕には思えなくて。
また所詮は

男女の仲です。

何処まで行ったって、何をしたって、なるようにしかならない。
過去に悩み、未来を怖れるのは仕方が無いけれど、
とりあえず今を試してみる。
それも一つの方法ではないでしょうか。

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赤松利市『下級国民A』読了

美しい国?日本が?この話、すべて真実。石巻、南相馬、福島―無数の「A」の、憎悪が渦巻く。住所不定、無職でデビュー。二〇二〇年度大藪賞受賞作家、初の随筆。
内容(「BOOK」データベースより)

人並みでいたい。

本書はホームレス作家としてデビューした著者初の随筆。
池袋で母子をひき殺した “上級国民”。
その対語として『下級国民A』を自称する著者の心情と経緯が
記されていました。

内容はバッサリ略で一言、普通です。
“初の随筆” と謳われてはいますが、
既存の小説(ほとんど実話の私小説)と差異は全くありません。
強いてあげれば、家族のコトには殆ど触れず、
搾取する・される労働者の視点に特化したコトになるでしょう。
それでも殆ど支離滅裂の K と言った登場人物まで既出であり、
著者のファンはパスしても良いかもしれません。

しかし昭和のヒット曲の歌詞に乗せ、
『下級国民A』の憂愁を語る箇所には胸が詰まりました。
例えば、下級国民は私(著者)だけではないとして

特別じゃない どこにもいるわ ワ・タ・シ少女A♪(少女A)

感情を失くすほど疲れ果てて

毎日毎日僕らは鉄板の♪(およげ!たいやきくん)

そして、今の日本の下級国民の本音として

幸せなんて望まぬが 人並みでいたい♪(昭和枯れすすき)

正直、現在は作家として成功している著者が
『下級国民A』と自称しても、違和感を覚えないでもありません。
それでも正真正銘『下級国民A』たる僕は、
少なくない感慨みたいなモノを覚えました。

最後に。
本書には『一億総活躍社会』、『働き方改革』、『絶対貧困』
と言ったやや政治色の強いキーワードがありました。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は著者の意見とは異なり、

自己責任

を肯定するんですよね。
同じ『下級国民A』なので、ちょっと面白い相違と感じました。
勿論、自己責任の肯定は僕個人に限定する話です。
僕だってアルコール依存症で
自立支援医療のお世話になったコトがありますしね?
偉そうなことは言える立場ではありません。
それでも著者の言う年金や社会福祉問題。
もっと言えば最近の新型コロナウィルスの国の対応
(あからさまに言えば保障や給付金)においても、
国民の皆様は国を過信・頼りにしすぎる傾向にある。
僕はそのように感じています。
家族(夫婦・親子)だってアテにならないのに、
国に自分の生活、健康、命、老後を預ける(委ねる)なんて

怖くないのかな?

繰り返しますが、これは僕だけに適用する僕個人の考えです。
仮に皆様が苦しいときは、国の助成に手を上げれば良いと思います。
こちらも本音です。

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赤松利市『アウターライズ』読了

東日本大震災に匹敵する災禍「アウターライズ」に見舞われた東北だったが、規模に比して抑えられた被害状況を公表した。どんな対策を講じたのかと注目が集まる中で突如、東北県知事会が“独立宣言”を行った。それから三年、一切の情報が遮断された国へと変容した東北に、ジャーナリストたちが招かれる。あのとき被災地で何が起きたのか、そして新たな国の誕生を、我々はどう受け止めるのか。
内容(「BOOK」データベースより)

イマジン。

本書は再び災禍に見舞われた東北の独立を描いた作品。
被災地を復旧ではなく復興へと突き進む人々が描かれています。
彼等の信念を支えるの背景に、僕は何度も涙が溢れてしまいました。
秀作。

規模からはありえない程、被害者が少なかった理由
日本から東北国として独立した背景とその結果
そして
全てを可能にしたモノとは

内容はバッサリ略で一言、素晴らしかったです。
著者としては多分初めてのノワール(含むエロ・グロ)以外ではあるけれど、
従前の期待の10倍は良かったです。
以前のインタビュー(コチラ)で、

東日本大震災の被災地を扱うのは『ボダ子』を最後とする(著者談)

と語っていたけれど、
本作の様に角度を変えての前言撤回?なら大歓迎。
『赤松利市』は悪人やクズだではなく、
根底に愛のある人間も描けるんだってコト。
多くの方に知らしめて欲しいです。

正直、SF としては突っ込みどころ満載です。
核の扱い(詳細は控えます)、世界のパワーバランスに経済状況。
さらにシビリアンコントロールや、市民の意思統一等、
あまりにも楽観的過ぎてお話になりません。
それでも、それでも……

本書には愛があります。

それが地域愛なのか、家族愛なのか、もっと普遍的な愛なのか。
僕には判らないけれど、少なくとも『本当』を冠する愛があります。

本書は御伽噺。

けれど御伽噺だって僕達の中の何かを揺さぶるんだってコト。
皆様にも是非体験して欲しいです。

最後に。
本書の東北国独立を支えたモノに、
僕は “想像” があったと感じます。
よろしければ皆様も簡単に想像してみてください。

理不尽な死が奪う人間の尊厳
武士道の矜持とそれ故の悲劇(白虎隊)
任務に無い(ある意味で命令無視の)遺体捜査をした自衛隊

ジョンのイマジンは夢(天国)を語っていたけれど、
本書にあるイマジンはきっとその反対、たぶん地獄だったと思います。
でもだからこそ僕達を支えるモノになる。
本書はそう説いていた様な気がします。
想像力も乏しく、ノホホンと日々を過ごしている僕は、
同じ日本人として頭をパコーンと叩かれた気がしました。

最後になりましたが、
311で犠牲になられた全ての御霊に心から哀悼の意を捧げます。
また御遺族の皆様におかれましては御平安を心から祈念します。
そして復旧に貴重なお力を捧げてくれた全ての皆様に。
僕なんかがおこがましいのだけれど、
心から感謝と敬意を表します。ありがとうございました。

おまけ:
Imagines_20200331113811a72.jpg
BGM: John Lennon / Imagine

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逸木裕『電気じかけのクジラは歌う』読了

人工知能が個人にあわせて作曲をするアプリ『Jing』が普及し、作曲家は絶滅した。『Jing』専属検査員である元作曲家・岡部のもとに、残り少ない現役作曲家で親友の名塚が自殺したと知らせが入る。そして、名塚から自らの指をかたどった謎のオブジェと未完の新曲が送られてきたのだ。名塚を慕うピアニスト・梨紗とともにその意図を追ううち、岡部はAI社会の巨大な謎に肉薄していく―。私達はなぜ創作するのか。この衝動はどこから来るのか。横溝正史ミステリ大賞受賞作家による衝撃の近未来ミステリー!
内容(「BOOK」データベースより)

「慙愧の念」なんてない。

本書は人がモノを作る意義を問うたミステリィ。
近未来の設定はもとより、清廉潔白ではない登場人物たちに
リアリティを感じました。

個人にあわせて作曲をするアプリ『Jing』
『Jing』専属検査員の元作曲家
そして
天才作曲家の謎の自殺

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
目新しさは一切ないけれど、「近未来」として説得力があります。
また物語もありきたりではあるけれど、ラストは決して悪くない。
著者はデビューしてまだ4作目だけれど、
良い意味でベテラン作家の “手馴れ” を感じました。
ただし、本作も(それまでと同じく)膨らませ過ぎかなぁ。。
これは個人的な意見だけれど、内容をそのままにページ数を半分。
その代わり?ラスト及びエピローグを大幅に増しては如何でしょうか。
(本作もまた)中弛みの印象が割と強く残ってしまいました。

それでも著者は理系らしくなく(笑)
読ませる点については間違いありません。
トリックやロジックに見るべきが少ないけれど、
個人的にこの分野は大好きですからね?
著者を今後も追いかけたいと思います。

蛇足で技術開発について。
作中、『Jing』専属検査員の岡部に対し、『Jing』で失職する作曲家や、
ヴォーカロイドに仕事を奪われる歌手についてどう思うか?
すなわち、人工知能の開発を担う者として

慙愧の念に駆られません?(本文より)

と言う問いかけがありました。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕が同じエンジニアの端くれとして回答するなら

ほとんど「ない」

そう答えます。
個別に触れるとキリがないし、ここでは抽象的になってしまうけれど、

技術の進化は人を幸せにする。

僕はそう信じています。
それは例えば核も、毒も、銃もそうだし、勿論 AI だって同じこと。
すべての技術は人を幸せにするために生まれ、
進化し続けている。
この一点において、僕が疑問を抱くことはありません。

さらに蛇足:
IMG_20200316_055324.jpg
初版、P382-14行目。
『僕たちは『建築工事』と読んでました』の
”読んで” は ”呼んで” の誤字(脱字)です。

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逸木裕『星空の16進数』読了

「私を誘拐したあの人に、もう一度だけ会いたい」それは“色彩”だけを友とする少女の願い。すべての謎がとけたとき―私のいる世界は、こんなにも美しかった。
内容(「BOOK」データベースより)

ハードボイルド。

本書は過去に起きた誘拐事件の真相に迫る長編。
オビに “青春ミステリィ” とありましたが、
僕はもう一人の主人公、女探偵・みどりによる
ハードボイルドと感じました。

色彩感覚に優れた少女
探偵に淫する女探偵
そして
11年前にあった誘拐事件の真実

内容はバッサリ略で一言、とても面白かったです。
正直、読後は「こんなモンか」と感じたのですが、
読書中の高揚感はそれを補ってもお釣りがきました。
著者は理系の方だけれど、本書は(も)トリックやロジックより、
そのスタイル(文章・世界観)が特徴と再確認。

体温より低く、少しヒンヤリするけれど、不快ではない。

色にしたらスカイブルー(#D3DEF1)になるのかな?
そんな少し控えめなエネルギーを感じるスタイルです。

また物語の重要アイテムとして
誘拐された少女がみた “枠” があります。
ネタバレになるのでそれが何かは控えますが、
僕は途中までハッキリと読み違えてしまいました。

不妊治療を受ける女性。
幼い少女がみせられた。
そして
暗闇の中に一筋の光……。

そこから僕は “枠” を子宮のメタファだと考えました。
いやぁ~、我ながら安易だなぁ(笑)

最後に。
本作の主人公は一応?誘拐された過去を持つ藍葉だと思います。
でも個人的には女探偵・みどりを中心とした方がしっくりきます。
彼女が『虹を待つ彼女』のみどりだと気付いたときは驚いたけれど、
今後も彼女を中心としてシリーズ?が展開したら嬉しいなぁ。

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逸木裕『少女は夜を綴らない』読了

“人を傷つけてしまう”という強迫観念に囚われている、中学3年生の理子。“夜の日記”と名付けたノートに“殺人計画”を綴ることで心を落ち着け、どうにか学校生活を送っていた。しかし突然、理子の秘密を握る中学1年生・悠人が現れる。秘密を暴露すると脅され、やむを得ず悠人の父親を殺す計画を手伝うことになった理子は、誰にも言えなかった“夜の日記”を共有できる悠人に心惹かれていく。やがて準備は整い、ふたりは殺害計画を実行に移すが―。市内で発生する連続殺人、ボードゲーム研究会、“夜の日記”。バラバラだった事件は収束し、予想を裏切る結末が現れる!
内容(「BOOK」データベースより)

結果オーライ?

本書は少女と少年による殺人計画のお話。
陰鬱で物騒な題材ではありますが、意外と緊張感はなく、
むしろ子供の痛々しさが目立ちました。

加害恐怖に囚われた少女
姉を殺され、父を殺したい少年
そして
決行される殺人計画

内容はバッサリ略で一言、うーん。
マイナスな意見ばかりになってしまうので控えますが
本作を一言で顕せば

「大山鳴動して鼠一匹」

になるでしょう。
読ませるからギリギリまで飽きはしなかったけれど、
読後は徒労感ばかりが残りました。
ラストは結果オーライだとは思うのだけれど、
それで良いのかしら?

著者の本職がウェブエンジニアとあり、
理系ミステリィとして期待していました。
実際、デビュー作の『虹を待つ彼女』は
理系のそれには足りなかったのだけれど、
それを補ってあまりある佳作でした。
なので本作を含め残り三作を一気に借りたのだけれど、
残りの二作(『星空の16進数』『電気じかけのクジラは歌う』)
を読むかどうか悩んでしまう結果となってしまいました。
兎に角、今回ハッキリしたことは、

著者は理系でも、著作は理系ではない(らしい)

というコト。
そちらに期待されている方に、念のためご報告。

蛇足でチョコレートリキュールについて。
作中、中学三年生の理子は精神安定剤として
チョコレートリキュールを隠れて飲んでいました。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は喉がべっとり張り付いた気分になったんですよね。
だって、チョコレートリキュールをストレートですよ?
粘度の低いゴディバだからと言ったって、色々キツそうです。
また

チョコレートの脳を直撃する甘さと、
アルコールの脳を狂わす効能。

チョコレートリキュール(の登場)は
酒を断ち甘さに依存している現在の僕の意識を
長く捕らえて離しませんでした。
物語に集中できなかったのも、そのせいでしょうか。

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逸木裕『虹を待つ彼女』読了

二〇二〇年、人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。彼女は六年前、自作した“ゾンビを撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた。晴について調べるうち、彼女の人格に共鳴し、次第に惹かれていく工藤。やがて彼女に“雨”と呼ばれる恋人がいたことを突き止めるが、何者からか「調査を止めなければ殺す」という脅迫を受ける。晴の遺した未発表のゲームの中に彼女へと迫るヒントを見つけ、人工知能は完成に近づいていくが―。
内容(「BOOK」データベースより)

愛と謝罪。

本書は第三十六回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
死者を人工知能で蘇らせるプロジェクトを題材とし、
人が囚われるモノが描かれていました。
佳作。

自殺した美しき女性プログラマ
予見のため人生に飽いていた研究者
そして
蘇る人格に求めるモノ

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
それは人の心の弱さや哀しさがみたいなモノが
静かに示されていたから。
本書は理系のミステリィになると思うのだけれど、
恋愛小説でもあり、もっと言えば文学的な作品でもあると思います。
理系に限らず、どなた様にもひろくお勧めです。

前述の通り、僕は理系のミステリィを期待していました。
正直、この方面は(個人的に)30%も充たされてはいません。
ポピュラリティを狙ったのだけと思うけれど、
IT・理系に関する用語や設定は浅すぎて全く魅力が無いからです。
例えばログインパスワードが判らない Windows XP を
クラッキングする際、ギークな西野がブツクサ呟くのですが……。
正直この場面なんか、IT をちょっとでも齧った者なら、
控えめに言っても常識だし、もっと言えば古すぎます。
それを工藤がチンプンカンプンなのも解せなくて。

さらにはミステリィとしても突っ込みどころが満載。
腕時計と利き手の解釈は「?」だし、
成人男性を抱えてトランクに入れる女性の怪力も疑問。
そもそも人間と AI の囲碁勝負の設定は
ミスリードを誘うにしても大げさに過ぎました。

また、そもそも論になってしまうけれど、
ビッグデータの応用については
読者に誤解を与えかねない懸念もあり……って、
スミマセン、この分野(理系ミステリィ)が好きだから
注文が多くなってしまいました。
最後に取ってつけたようになってしまうけれど、
それでも本書は読者の心に迫る作品です。
死者に(それぞれ別の)何かを求める登場人物たちから、
声にならない慟哭が聴こえる気がしました。

ここからは蛇足。
作中、「損得をすべてなげうっても……」と一文があります。
何を記しても核心に迫ってしまうので詳細は控えますが、
僕なら “雨” と同じ意味で「あるよ」と答えるでしょう。
実際、僕は過去に全て(文字通り全てです)をなげうちました。
その顛末はこの胸に仕舞っておくけれど、
“雨” の苦しみは僕の記憶とともに再現されました。

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木下昌輝『まむし三代記』読了

日ノ本すら破壊する斎藤道三の最終兵器“国滅ぼし”とは?その核心に行き着いた三代目義龍が下した驚愕の決断とは!?著者初の書き下ろし。従来の戦国史を根底から覆す、瞠目の長篇時代小説。
内容(「BOOK」データベースより)

国滅ぼし

本書は美濃の「毒まむし」斎藤道三と
その父と息子の三代にわたる物語。
国を医(いや)すため、国を盗る男達。
その陰謀蠢く様子に思わず固唾を呑んでしまいました。

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
ただ、個人的にはややフィクションが強すぎました。
ただでさえ『国盗り物語』にもなるほど
物語性のある斎藤道三(とその親子)ですからね?
エンタメ要素は控えめでも(もっと言えば殆どなくても)
充分面白かった気がします。

それでもミステリィ?仕立ての『国滅ぼし』のアイデアは、
普遍的でありながら非常にタイムリーでもあり、秀逸でした。
僕は『国滅ぼし』の正体(真相)は『国崩し』である。
そう、著者の策略(ミスリード)にまんまと引っかかって
読書したのだけれど(笑)、張り巡らされた伏線やその回収、
また「下克上」と絡めた点も大変素晴らしかったと思います。

さらにはラストで明かされた、
本作の狂言回しである源太の正体。
僕はこの人物を寡聞にして知らなかったけれど、
こちらも設定の妙がありました。

以上、本書は歴史小説と言うより、
ほとんど SF に近いと(個人的には)感じました。
なので前者を期待すると肩透かしかも?だけれど、
気軽なエンタメとして多くの方にお勧めです。

蛇足で『国滅ぼし』について。
それは本書の核心の一つなのですが、
僕は非常に身近に感じるコトが出来ました。
と言うのも、いま世界中は新型コロナウィルスで大混乱ですよね。
けれど、この新型コロナウィルスより

『国滅ぼし』

の方が僕達人間を、そして多くの国を蝕んでいると感じるからです。
たとえば犠牲者の数なら桁が違うと思います。
不謹慎だけれど致死率も決して低くはないでしょう。
そして今この瞬間にも『国滅ぼし』によって
多く方が被害を被っているし、被り続けています。
また非常に近い将来、本当に滅ぶ国が出てくるかも?
そう危惧しています(大げさでも冗談でもありません)。
個人的に日本は大丈夫だと確信しています。
けれど、万が一、お近くの国が倒れてしまったら……。
これも近い将来、僕の馬鹿げた妄想だったと笑えます様に。
心からそう願っています。

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プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫19歳) 泣き虫で臆病。温厚だけど父ちゃんには我儘な女王様。妹がちょっぴり苦手。職業:父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒5歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。お姉ちゃんともっと遊びたい。職業:父ちゃんの邪魔。
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