アーバン・ウェイト/著 鈴木恵/訳『生、なお恐るべし』読了

ベテランの運び屋ハントは、ある受け渡しの現場を保安官補ドレイクに発見され、逃亡する。彼はやむなく“償い"として仲介者から提示された仕事を受ける。だが、実はその成就を待ってハントを始末すべく、嗜虐的な“調理師"が放たれていた。死闘の末に3人の男を待ち受ける運命とは──?
内容(出版社内容紹介より)

キングの言葉ほど。

本書はスティーブン・キング絶賛の大型新人による一冊。
デビュー作でもあり、その力の入れよう(?)は半端ではありません。

内容はバッサリ略で一言、良かったと思います。
それはある意味でクライム・ノベルの伝統を十二分に継承していたから。
一方で、僕にはハッキリとトゥー・マッチです。
クライムと言うかノワールはかなり好きな分野なのだけれど、
本書のそれは『質』は勿論、さらに『量』が過剰なんですよね。
重ねて個人的な嗜好で申し訳ないのだけれど、
僕はスプラッタが苦手でして……。

テーマは盛りだくさんだし、密度も非常に濃い(≒詰め込み過ぎ)。
おふざけ(ギャグ?)にはいささか疑問符が付くのだけれど、
いづれも読者サービスと思えば許容範囲にはなるでしょう。
なんせデビュー作ですからね?僕は著者の気合と受け取りました。

ただその読者サービスでさえ(控えめに言っても)過ぎています。
個人的には(こればかりでスミマセン)アクションよりバイオレンスより、
もっとハント個人を描いて欲しかった。
せっかくハントは50(歳)を過ぎても、
父との確執に落としどころを付けられないオッサンですからね?
僕の経験とは違うのだけれど、それでも何だか他人事には思えなくて。

以上、本書は This is Crime Fiction. とも言うべき一冊。
正直、「キングが絶賛!」って言葉ほどあてにならないモノも無い。
これが一番最初の感想になっちゃうのだけれど、
結局は(個々の)好き好きの範囲だと思います。
とびきりスプラッタなクライム・ノベルをご所望の方にお勧めです。

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宮崎智之『平熱のまま、この世界に熱狂したい 「弱さ」を受け入れる日常革命』読了

不完全は優しさ。あきらめは許し。弱さは贅沢。自分が美しいと思うものを踏みにじらずに生きるために―。アルコール依存症、離婚を経て取り組んだ断酒。そして、手に入れた平熱の生活。退屈な日常は、いつでも刺激的な場へと変えられる。
内容(「BOOK」データベースより)

「弱さ」は免罪符ではない。

本書はアルコール依存症によるエッセイ集。
断酒(や離婚)を経て得られた平熱の世界がありました。

内容はバッサリ略で一言、良かったと思います。
それは自分を美化することもなく(謙虚を装った自慢話ではない)、
多くあった意見にも慎ましさ(≒平熱)みたいなモノがあったから。

一方で、アルコールの問題についてはほとんど語られていません。
僕はアルコール依存症をキーワードに本書を手にしたので、
この点についてはハッキリとヒザカックン。お仲間は念のためご注意を。
(ただし著者は現在も断酒継続中。間違いなく僕たちのお仲間です)

また異なるメディアに掲載されたエッセイを集めているので統一感に乏しく、
筆致?さえバラバラと感じてしまいました
また内容についても

共感出来るモノもあったし、そうでないモノもありました。

それでも最後まで “平熱” だった著者の語り口には好感しかなく、
上手く言えないのだけれど「お酒が無くても議論は出来る」。
そう著者は体現してみせていた様な気がします。

以上、本書は弱さ(含むアルコール問題)を受け入れ、
しかし盲目的、偏向的な思考とは無縁の(ごく普通の)男性視点がありました。
アルコール依存症に限らず、中年男性の方にお勧めです。

蛇足で「ヤブみ」について。
作中、著者は

「プリミティブで、残念なほど地味だが、たまらなく趣がある」ものに対して、
「ヤブみ」という言葉を使う(本文より)

とありました。
その例としてヤカン(薬缶)やタワシ(特に便所用の柄のついた奴)が
あったのですが……。
その詳細は本書をご確認していただくとして、僕のとっての「ヤブみ」は、
いまこの瞬間手にしている「紙の本」である。そう感じてしまいました。
なんせ “紙” の本なんて、いまどき時代遅れですモンね。
でもだからこそ僕には「ヤブみ」なんです。

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志賀直哉『灰色の月・万暦赤絵』読了

絶対的な自我肯定を行動の規範とし、その生の体験を書くことによって鮮烈に生き直した強靭な個性の作家志賀直哉。その生の歩みは、長く、美しく、豊かであった…。
内容(広告コピーより)

ほとんど日記。

本書は『志賀直哉』の後期作品23編を収めた短編集。
ある意味で作家の才能が枯れていく様子がありました。

内容はバッサリ略で一言、寂しさを覚えました。
それは「小僧の神様」にあった味わい深い作風が影を潜め、
老人の戯言みたいなモノばかりがあったから。

ここからはいくつかを一言感想で。

『鳥取』
老外人が「三朝」を「みあさ」と発音。
でも日本人(僕)だって地名は難しいです。

『池の淵』
冬の蝉って、たまに聞きます。
嘘って決めつけは良くないのでは。

『日曜日』
この後、すっぽんは食べたのかな?
僕は川に “捨てた” と予想します。

『早春の旅』
大きな声じゃ言えないけれど
直吉はこの同行が(本音は)嫌だったのでは?

『灰色の月』
どうすることも出来ない。
それを一番良く知っていたのは、きっと少年工だったと思います。

『いたずら』
いたずらにだって、やって良いモノと、そうでないモノがある筈。
ここにあったのは後者です。

『朝の試写室』
不倫した男(著者)が、どの口で言う。

『八手の花』
叔父の最期の一言。
僕も(最期に)その心境になれれば御の字です。

以上、本書は小説とも日記ともつかない一冊。
ですが、ファン以外はスルーして良いかも知れません。
『志賀直哉』の傑作は他にあるのですから。

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東山彰良『どの口が愛を語るんだ』読了

のたうちまわって超えていけ、愛。
『流』の直木賞作家・東山彰良が新たに挑む、自由でボーダレスな短編集!
九州の温泉街、小さな街の団地、ニューヨーク、台北、東京――。
残酷さとやさしさが隣り合わせるパッとしない世界
それでも生きていくむきだしの人間たち。
内容(「BOOK」データベースより)

独り。

本書は『東山彰良』による4つの短編集。
愛の行きつく先を、様々なカタチで描かれていました。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、とても良かったです。
それは粗雑で退廃的でありながら、暴走する何かを止められない。
そんな著者らしい “愛” があったから。

ここからは一言感想を。

『猿を焼く』
「暴力」って、行使者にとってはある種の痛み止めなのかも知れません。
麻薬の様に人間性を失う代わりに、抱える痛みを一瞬で忘れさせる薬。
勿論、法治国家においては使用厳禁なのだけれど、
どうしても必要なら、暴力は他人ではなく自分に向けて使いたい(僕の場合)。

『イッツ・プリティ・ニューヨーク』
偽善こそはこの世界を回している重要な歯車のひとつ(本文)
この一文に強く賛同してしまいました。
また亀(ススム)は男が大人になってはじめて憧れるタイプの男。
鳥(ウタ)は男なら子供から大人まで惹きつけるタイプの女性だと思います。

『恋は鳩のように』
同性愛者を含む男女4人の四角関係を中心に、
興味深い『詩』の考察のいくつかがありました。
で、僕は思うのだけれど、詩の本質(の一つ)って理解して貰うコトではなく、
むしろ理解を拒否するコトではないでしょうか。

『無垢と無情』
愛って勘違い?依存?それとも戦争や宗教みたいなモノなのか?
そんな彼等のディスカッションに、僕の心はほとんど動くコトはなかったです。
因みに「愛がなにかを知らないくせに!(本文より)」
なんて発言する人や、それに毅然と回答できる人がいたら、
僕はその人たちを信用しないと思います。

以上、本書は愛を丸裸(?)にした一冊。
乱暴にまとめれば愛の行きつく先は

“独り” である。

そう示唆していた様に感じます。どなた様にお勧めしたいのですが、
孤独を自負される方には特にお勧めです。

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赤松利市『隅田川心中』読了

浅草で働く大隅一郎は、喫茶店の店主・小川からアルバイトの咲子の相談に乗ってくれと持ちかけられる。「父親の借金返済のために愛人にしてほしい」と咲子に言われて心を躍らせる。同衾を果たした末に、「あなたの子供を産みたいの」と懇願されてしまう――もう一度だけ恋がしたくなる、大人の暴走特急恋愛小説!
内容(「BOOK」データベースより)

恋より性。

本書は老人男性の恋を描いた一冊。
令和の時代にあって、昭和の香りが色濃くありました。

内容はバッサリ略で一言、割と良かったです。
それはタイトルに “心中” とあって身構えていたのだけれど、
存外に暗くはなく、むしろお気軽に楽しめたから。

物語は老人男性・一郎が薄幸な女性・咲子に入れこんだ結果、破滅する。
大雑把に言えばこれだけです。
そこに老人の「恋」以上に「性」が延々と続き、
小説と言うよりオッサン向けのゴシップエロ雑誌に近いと感じました。
けれど、それほど嫌悪感みたいなモノは無かったですよね。
つまり僕がオッサン(老人)ってコトなんだけれど(笑)

それでも、二人の最後(最期)は心中です。
当然、一郎と咲子は死ぬしかない状況・心理状態に追い込まれるのですが、
特に咲子の事情は哀れで仕方がありません。
それは昭和テイストのハッキリとした「胸糞」であり、
読者はこの点には留意が必要かもしれません(女性なら特に)

以上、本書はエロと恋とコメディと欝が、おおよそ 6:2:1:1 となった一冊。
タイトルほどに陰鬱ではなく、
結末を除けば雑誌のエロ記事みたいに、頭を空っぽにして楽しめます。
特に一郎の年齢・64歳プラスマイナス15歳の男性にお勧めです。

蛇足でレバ刺しについて。
作中、咲子の相談に乗る一郎は、
彼女と共に浅草のとある焼き肉屋を目指します。
そこには看板に「焼きレバー」なるメニューが掲げられており……。
その続きは本書をご確認していただくとして、
僕は思わず「その店は何処だ!」ってなったんですよね。
レバ刺し愛好家の一人として、聞き捨てならない情報だったからです
(因みに本書に出てくる店は全て実在・実名とのコト)。
ただ、ネタバレを避けつつ、先に謝っておきますが、
ご存じの通り、いまやレバ刺しは法律違反となっています。
本書を読んでも、ココの「焼きレバー」を見つけるコトは難しいでしょう。

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山田詠美『血も涙もある』読了

私の趣味は人の夫を寝盗ることです――。妻と夫とその恋人。極上の“危険な関係”。
有名料理研究家の妻と、その10歳年下のイラストレーターで「魅力的」な夫。ある日、妻の助手である一人の女が、夫の恋人となる。はじめは、微妙なバランスを保っていた3人の関係は、ユーモラスに残酷に、その味わいを変えていく。「妻」「夫」「恋人」と異なる視点から語られる、意外なその後味とは――。
内容(「BOOK」データベースより)

胃袋と股間。

本書は大人の三角関係を描いた一冊。
不倫にある情念やその影響みたいなモノが、
当事者三人の視点で描かれていました。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、とても良かったです。
それは旧来のエイミーと新境地のエイミー。
その両方を感じさせる「大人の恋」があったから。

本書のテーマに不倫がありました。
旧来のエイミーならそこにフィジカル的なスパイスを強く効かせる。
乱暴に言えばそんなイメージがあったのだけれど(個人的な感想です)、
本作には濡れ場がほとんど無かったんですよね(ちょっとびっくり)。
エイミー(♀)に向かって「エイジング」とか「熟成」とか、
そっち方面の言葉は慎重に選ばないとアレだけれど(ぶるぶる)、
彼女の新境地?みたいなモノを感じました
さらにはラストの意外なハッピーエンドも決して悪くは無かったです
(これも個人的な感想です。人によってはバッドエンドと感じるでしょう)

以上、本書は不倫にあるモロモロを、割と軽やかに描いた作品。
男女を問わず40歳以上の方がお勧めになるのかな?
勿論、恋愛マスターを自認される方なら若い方でも是非。

蛇足で胃袋と股間について。
作中、男を離さない女性の手腕として、

妻・喜久江は太郎(キタロー)の胃袋を。
恋人・桃子は彼の股間を。

それぞれ握っていた様に感じます。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
もし僕が太郎だったら「どちらを握って欲しいか?」
そんな問いが浮かんでしまいました。
で、僕の答えは「どちらも握って欲しい」。
身の程をわきまえず、素直にそう思いました。
因みに二つを握るのは同じ女性が(僕は)良いのだけれど、
別に違う女性でも一向に構わない。
そう考える男性も少なくないのでは?と予想します。

女性側からすればどうでしょう。

例えば貴方が女性なら、男性のどちらを握りたいと考えますか?
勿論、そのどちらも握りたくない。って方も多いと思うし、
財布さえ握れたら後は別に……って方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ女性がどんなお考えであっても、
個人的にはほとんど意見は無いんですよね。
どうせ恋に落ちれば、そんなの関係なくなっちゃうから(あくまでも僕の場合)

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長岡弘樹『幕間のモノローグ』読了

名演技に潜む「罪」と「罰」――ドラマや映画の撮影中、舞台の演技中に起こるさまざまな事件やトラブルを鮮やかに解決するベテラン俳優の南雲。――そこにはある秘密が隠されていた。『教場』の著者が、芸能界に生きるものたちの“業”を描いた連作短編ミステリー。
内容(「BOOK」データベースより)

芸は身を助く……とは限らない。

本書はアクターズスク一ルを舞台とした8つ(+2)の連作短編集。
役者のウラオモテ、光と影が描かれていました。

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
それは良くも悪くも完璧に『長岡弘樹』だったから。

ここからは一言感想を。

『沈黙のスピーチ』
小道具の選択。僕は傘を想い浮かべました。

『殺陣の向こう側』
重さ。論理的な推理なら本書で一番(唯一とも言う)。

『汚れ役の歌』
そう言えば最近はカメラばっかりで、鏡は見かけないかも。

『黒い代役』
牛乳入りの味噌汁。結構イケそうな(自信なし)

『白紙の応援歌』
ニュートンの冷却の法則。へぇ~良いコト聞きました。

『湿った密室』
特撮ヒロインと言えば、なんてったってビジンダー(昭和脳)

『歪んだ凶弾』
匂いの他にも瞳孔が開くと聞きます。二宮は使いたかった?

『ヘッドボイスの行方』
もはやテレパシーだけれど、普通に信じられました。

以上、本書には多くの「報われぬ努力」みたいなモノがありました。
因みに(前述の通り)徹頭徹尾『長岡弘樹』なので、
全く驚きがない以上に、既視感さえ覚えた……が正直なトコロかも。
なので、ファンなら安心してお勧めだし、
そうでない方なら著者に触れる最初として(控えめに)お勧めです。

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近藤史恵『ときどき旅に出るカフェ』読了

平凡で、この先ドラマティックなことも起こらなさそうな日常。自分で購入した1LDKのリビングとソファで得られる幸福感だって憂鬱のベールがかかっている。そんな瑛子が近所で見つけたのは日当たりが良い一軒家のカフェ。店主はかつての同僚・円だった。旅先で出会ったおいしいものを店で出しているという。苺のスープ、ロシア風チーズケーキ、アルムドゥドラー。メニューにあるのは、どれも初めて見るものばかり。瑛子に降りかかる日常の小さな事件そして円の秘密も世界のスイーツがきっかけに少しずつほぐれていく―。
内容(「BOOK」データベースより)

ちょっぴりの塩分。

本書はカフェを舞台とした10の連作短編集。
日常に潜む小さな事件を、パイ生地で柔らかく包みこむ。
そんなパイナップルケーキの慎ましさがありました。

内容はバッサリ略で一言、とても良かったです。
それは事件にある酸味、塩味、苦味だけではなく、
解決にあった甘味でさえ、控え目な上品があったから。

物語はカフェが舞台であり、
いわゆる “カフェ飯” が多く扱われています。
そのどれもが

そんなの美味しいに決まっている(本文より)

読者(僕)はもう身もだえするしかないのですが、
特にスイーツのいちいちがイケマセン。

ココアを混ぜたベイクド・チーズケーキ(ロシア風ツップフクーヘン)
ココナッツミルクに小豆、フルーツの入ったかき氷(ベトナムのチェー)
生クリームとコンデンスミルク、クッキーを重ねた(ポルトガルのセラドゥーラ)

さらにはオーストリアのザッハトルテや、香港の凍檸茶(ドンレンチャ)等々、
読書中、僕は何度も訳の分からない衝動に駆られてしまったんですよね。
おかげでナイトキャップで読み始めたのに、
わざわざコンビニまでアイスを買いに行っちゃって。
もう一度歯を磨きなおす羽目になってしまいました。

閑話休題。

各話は短編と言うより掌編。
なので刺激的なモノはほとんど無く、割とアッサリ目。
けれど甘さ一辺倒ではない、一工夫がありました。
さらに最終盤で本作がアラカルトではなく、
実はコース料理だったと判明します(なんのこっちゃ)。
なので読後は存外な満足感。幸せな満腹感も味わえました。

以上、本書はダイエット中の方にはお勧めできない一冊。
しかし日常系ミステリィ・ファンには勿論、
カフェやその雰囲気がお好きな方には自信を持ってお勧めです。
初心者(僕)が言うのもおこがましいのだけれど、
ミステリィもスイーツも、甘いだけではダメなのかもしれませんね?
ちょっぴりの塩分がポイントなのかも。

おまけ:
IMG_20210325_083511.jpg
たまらずに買ってしまった、もう一つのスイーツ。

月餅はがっつり甘い(本文より)

とあって、がぜん興味が湧いちゃって(笑)
多分はじめて月餅を頂いのだけれど、あり得ない程に美味しかったです。
頭に「ガッツーーン」とくる甘さが堪りません。

注)玉子は入っていません。

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乙川優三郎 『露の玉垣』読了

度重なる水害や飢饉に喘ぐ越後新発田藩。若き家老・溝口半兵衛は財政難に立ち向かう一方で、二百年に及ぶ家臣の記録を書きはじめる。後に世臣譜と題される列伝は細緻を極めて、故人の人間像にまで及ぶ。そこにあるのは身分を越えた貧苦との闘いであり、武家の葛藤であり、女たちの悲哀であり、希望である。
内容(「BOOK」データベースより)

露と消え。

本書は越後新発田藩を舞台とした8つの連作短編集。
家老・溝口半兵衛が記した『世臣譜』をもとにしており、
フィクションとは言え厳格な説得力みたいなモノがありました。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、息をのむほどに良かったです。
それはたとえ歴史に名を残す英雄ではなくとも、精一杯に生きた。
そんな人々の姿に胸を打たれたから。

正直、『世臣譜』と言う記録がベースにあるので、
小説としては起伏に乏しく、また魅力にあふれた人物も少ない。
でもそんな悪く言えば利己的。
良く言えば人間味溢れる人物ばかりだからこそ、
彼等の困窮や苦難がこの身に迫ったんですよね。
僕も利己的な人間だから、度重なる災害や先の見えない貧困を前に、
清廉潔白でいられる筈がないから。

どの話も良いのですが、印象に残った一つだけを簡単にご紹介。
それは『宿敵』の一遍であり、
夫の実弟が妻の実弟を斬る傷害事件が描かれています。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は怒りが込み上げてきて仕方がありませんでした。
100歩譲って事件の背景も、コトの顛末も置くとします。
けれど愛した人も悼めないなら、そんな体面や世間体なんて

捨てちまえ!!

そう感じました。

僕は世間擦れした老人であり、青臭い子供ではありません。
なので良い悪いではなく、体面や世間体の有効性を知っています。
だからきっと僕も助左衛門や年(とし)と同じ態度になると思うのだけれど、
でもだからこそ彼等の行き場のない怒りや悲しみ。
身を割かれるような無念を、僕なりに理解できた様な気がしました。

以上、本書には一生懸命に生き、
そして露と消えて行った多くの人たちの姿がありました。
冒険も活劇も恋愛もないのだけれど、何度も心を揺さぶった作品です。
どなた様にも自信を持ってお勧めです。

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道尾秀介『いけない』読了

ラスト1ページが暴き出すもうひとつの“真相”をあなたは見抜けるか?
内容(「BOOK」データベースより)

図解に頼り過ぎてはいけない。

本書は『道尾秀介』の原点回帰とされる一冊。
ここで “原点” とは「読者への挑戦」だったと思いますが、
それは一定以上の成功を収めています。

内容はバッサリ略で一言、とても良かったです。
それは僕がトリック偏重のミステリィが嫌いじゃないから
(嘘です。むしろ大好物^^)
一方で、活字ファンとしては少し寂しくも感じました。

ここからは一言感想を。

『弓投げの崖を見てはいけない』
最後のページの図に「誰が死んだのか?」の回答がなされているコト。
この時点では全く気が付きませんでした。
また破片の罠は、流石に無理筋ではないでしょうか。

『その話を聞かせてはいけない』
前章と同様に最後の図(写真)に「落とした人物(犯人)」が写っているコト。
僕はこの時点では気が付きませんでした(笑)
また山内君から珂君への約束は、ある意味で脅迫と同義だと思います。

『絵の謎に気づいてはいけない』
ここで漸く、各章の最後の図で解答が示されているコトに気が付きました。
またこの章のトリック?は本書で一番だったけれど、
もう少し上手く 足せば(プラスすれば)バレなかったのでは?
(具体的には主軸?の棒を下に長くする)

『街の平和を信じてはいけない』
スッキリしないがほとんどだったけれど、最後の図に少しだけ救われました。
割とありがちではあるのだけれど。

以上、本書は最後の図が効果的に用いられているミステリィ。
小説としてはやや本道から外れるのかもしれないけれど、
僕はこの手のチャレンジを問答無用で応援したいと思います。
ただ一方で、“肝心” を図解だけで終わらせてしまうのは、
ちょっと寂しい気もしたんですよね(小声で)。
せっかく「読者への挑戦」と言う古き良き時代の本格ミステリィなのだから、
文章で驚かせて欲しかった気もします。

蛇足:
IMG_20210304_180358.jpg
初版、P177-10行目。
『昔に比べてデータが小さくなった…』の
”データ” は ”メディア” ではないでしょうか。
メディアは小さくなりましたが、データはむしろ大きくなっています。

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プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫20歳) 泣き虫で臆病。温厚だけど父ちゃんには我儘な女王様。妹がちょっぴり苦手。職業:父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒6歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。お姉ちゃんともっと遊びたい。職業:父ちゃんの邪魔。
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