ピーター・スワンソン/著 務台夏子/訳『8つの完璧な殺人』読了

ミステリー専門書店の店主マルコムのもとに、FBI捜査官が訪れる。マルコムは以前、“完璧な殺人”が登場する犯罪小説8作を選んで、ブログにリストを掲載していた。ミルン『赤い館の秘密』、クリスティ『ABC殺人事件』、ハイスミス『見知らぬ乗客』…。捜査官は、それら8つの作品の手口に似た殺人事件が続いているというが…。
内容紹介(「BOOK」データベースより)

オマージュ以上、換骨奪胎未満。

本書は『このミステリーがすごい! 2024年版』海外編の第8位となった一冊。
名作ミステリィを題材にしており、ファンには一定の趣きがありました。

内容はバッサリ略で一言、まあまあです。
それは名作へのリスペクトは感じられたのだけれど、
肝心のオリジナル・ストーリィがイマイチだったから。

亡き妻の復讐に燃える古書店店主
持ちかけた交換殺人
そして
交換殺人に応じた人物は誰なのか

僕は作中にあった名作ミステリィの全てを読んでいる訳ではありません。
なので読み落としやニュアンスを掴めていないトコロもあった筈。
それでも本書のストーリィの骨格はほとんど『アクロイド殺し』だったし、
真犯人(?)が拍子抜けだったんですよね。
僕がミステリィに求める『驚愕』を感じられなかったのが残念です。

以上、本書は名作ミステリーへのオマージュが詰まった作品。
正直、換骨奪胎……とまでは言えないと感じましたが、
ミステリィファンなら別角度(鈍角の120°ぐらい)で楽しめるかも。
手持ちの積読がなくなった時には、控えめにお勧めです。

蛇足でダークネットとダークウェブについて。
作中、マルコムは交換殺人の相手を募集する為に
ネットの掲示板を利用するのですが……。
これは重箱の隅になってしまうのだけれど、
世間ではダークネットとダークウェブを混同されているコトが多い気がします。
たとえば本書のそれは(描写だけで判断するなら)ダークウェブです。
ダークネットではありません。
たとえばダークネットなら謎の交換殺人に応じた人物は
非常に狭い範囲で限定されるはず。
もはや仲間内?身内?であり、その身元は一瞬でバレるでしょう。

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坂口安吾『暗い青春 改版』読了

青春ほど、死の翳を負い、死と背中合わせな時期はないー。同人雑誌を編輯するため、あるじが自殺して間もない芥川龍之介の家に通った日々。苦悶がしみついているような暗い家が思いださせるのは、青春時代に死んでいった仲間たちの姿だった。人間の喜怒哀楽の舞台裏に潜む、振り払い難き「死」の存在に、無頼派の旗手が独自の視点から肉迫を試みた。表題作「暗い青春」ほか、火花の如き輝きを放つ短編全10編を収録。
内容(「BOOK」データベースより)

物は言いよう。

本書は坂口安吾の自伝的小説集。
年代順に再(?)編集されており、
著者を “形成” したその過程が理解しやすいようになっていました。

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
それは内容は兎も角、さすがは無頼派と謳われるだけの悪口と悪行に、
いっそ感心したから。

実は「ぐうたら戦記」と「居酒屋の聖人」以外は既読でした。
まぁ、実際は読みながら「あっ、これは読んでいたな(=ほぼ覚えていない)」
って話もいくつかあったのですが。

坂口安吾はもう語りつくされていると思うのでココでは一言だけ。
それは著者は無頼派と称されるけれど

物は言いようじゃん。

と言うコト。
坂口安吾の個性的と言うか、あけすけ過ぎる筆は、
それなりに読書の楽しみがあります。
でも内容については共感出来るモノとそうでないモノがおよそ 1:9。
別に著者も読者(僕)の共感は求めていないと確信しますが、
流石に度が過ぎます(と僕は思いました。それは今回再読しても変わりません)
昨今のコンプライアンスうんぬん以前に、人として非常識すぎる。
「坂口安吾」は割と読んだとは思うのだけれど、
僕はやっぱり彼が苦手かも。

以上、本書は坂口安吾を “識る” 入門書的な一冊。
多分、全て発表済みの作品なので(青空文庫で読めるモノも多数あり)
ファンの方はコレクターアイテムとしてどうぞ。

おまけ:
IMG_20240320_072239.jpg
それにしても「坂口安吾」でこの表紙って如何なモノでしょう。
僕は(図書館に)ネットで予約したので事前には判らなかったけれど、
実際に借りる時はかなり恥ずかしかったです。

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井上荒野『ホットプレートと震度四』読了

結婚祝いに贈られたお揃いの鉄鍋。夫の元カノから譲り受けるホットプレート。クリスマスプレゼントのピザカッター…“食にまつわる道具”をめぐり、揺れ動く心を切り取った短編集。
内容(「BOOK」データベースより)

思い出は残る。

本書は食にまつわる道具をテーマにした9つの短編集。
同時期に発売された『錠剤F』とは正反対に、
心温まる作品(一編を除く)が詰まっていました。
佳作。

ここからは一言感想を。

『今年のゼリーモールド』
娘が家を出て寂しさの募る母。
しかしゼリーモールドの中には今でも娘の好きなモノが入っていて。

『ピザカッターは笑う』
本書の一番。青春は通り過ぎても輝きを失わず。
ただし、それは奥様にバレますぞ?ってか、きっとバレている。

『コーヒーサーバーの冒険』
トトちゃんの小さな冒険。
トトちゃん。大好きなマンゴージュースをお代わりして。10杯お代わりして。

『あのときの鉄鍋』
そうですね。大切なモノは二つも要らない。
今、この手にあるモノを大事にしなければ(僕も自戒します)。

『水餃子の机』
母の伝えたコトは「絶対許しません」だったと思います。
ただし、生者は死者の記憶を、言葉を。
我田引水に受け取って良い(と僕は思います)。

『錆び釘探し』
父になるのを恐れるのは判るけれど、母になる千秋の不安は?
雅彰君。君は男だろう?腹をくくれ。

『ホットプレートと震度四』
むかし恋人。いまはそれぞれ別のパートナを連れて4人で会食。
うーん、そりゃ揺れますって。4人全員。物理的にも心理的にも。

『さよなら、アクリルたわし』
男女に限らず浮気はまだ良い。仕方がない。
しかし心が離れたとはいえ元パートナを貶すのは駄目だ。僕は軽蔑する。

『焚いてるんだよ、薪ストーブ』
愛する人を、親しい人を亡くした時。受け止め方は人それぞれで。
それでも「そういうふうにできている」に、前向きで、温かいモノが込み上げます。

以上、本書は食にまつわる思い出を描いた作品。
そのほとんどが甘酸っぱく、切ないけれど、愛おしくて。
また食は記憶に強く結びつくこと。改めて感じました。
ひろく多くの方にお勧めです。

おまけ:
The Memory Remains
BGM: Metallica / The Memory Remains

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井上荒野『錠剤F』読了

短編の名手が、日常の隙間にひそむ「孤独」を描き出すー著者史上最もグロテスクで怖い10の物語から成る、最高精度の小説集。バイト先のコンビニに現れた女から、青年は「ある頼みごと」をされてー「ぴぴぴーズ」。男を溺れさせる、そんな自分の体にすがって生きるしかない女はー「みみず」。刺繍作家の女は、20年以上ともに暮らした夫の黒い過去を知ってしまいー「刺繍の本棚」。女たちは連れ立って、「ドクターF」と名乗る男との待ち合わせに向かうがー「錠剤F」。…ほか、あなたの孤独を掘り起こす短編10作を収録!
内容(「BOOK」データベースより)

内なる宇宙。

本書は日常が崩壊する直前を描いた10の短編集。
表面上は変わらずとも、その内側で激しく揺さぶられる様子がありました。

ここからは一言感想を。

『乙事百合子の出身地』
痴呆と詐欺。裏切りと尻尾を巻くこと。どちらにせよ目くそ鼻くそ。

『びびぴーズ』
いじめと性交。やったやらないの問題ではなく。ここまで来たら「やった」と同じ。

『あたらしい日よけ』
頭痛の種は際限なく湧いてくる。そして誰も助けてはくれない。

『みみず』
モテない女性の婚活事情。杏先生はみみずをもっとポジティブに考えてはどうか。

『刺繍の本棚』
残酷だけれど二人の結婚生活に「本物」は無かった。

『墓』
夫婦の憂慮が実子ではなく猫に向いている。ホラーを通り越してもはやコメディ。

『スミエ』
出て行ったら……。僕なら名前なんて付けない。えるはえる。代わりなんていない。

『ケータリング』
覆水盆に返らず。ただ美作夫妻の意図は(僕には)サッパリ判らなかったです。

『フリップ猫』
匿名で中傷ツイートを投稿していた夫。男として情けない。

『錠剤F』
訳わかめ。でもそれが良い。人の本当のトコロなんて他人には判らない。

以上、本書は他人には理解されない個人的な苦悩が詰まった一冊。
いづれもシャープな切れ味が特徴であり、
言い換えれば読者の理解を(意図的に)拒むような作品でもありました。
万人向けではないカモだけれど、短編好き(含む僕)にはかなりお勧めです。

おまけ:
INNER SPACE FLIGHT #1
BGM: ZIGGY / INNER SPACE FLIGHT #1

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森博嗣『妻のオンパレード The cream of the notes 12』読了

考えることは必要だと思う。何故なら、人間が生きている理由がそこにあるからだー。空気を読まない、誤解されることにまったく抵抗がない人気作家・森博嗣の書下ろし人気エッセィ第12作。社会の仕組みから「ふともも」と「もも」の違い、奥様の鼻歌まで等距離で観察する森イズムに心が解放される全100編。
内容(「BOOK」データベースより)

くるくる、くるくる。

本書は『クリーム』シリーズ第12弾(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11
いつものごとく、何の脈略もない100のエッセィがありました。

内容はバッサリ略で一言、普通です。
もう特に書くことも無いのだけれど、
強いてあげれば『クリーム』シリーズの継続12年。
おめでとうございます。

あっ、上記の「しいてあげれば」で思い出したのだけれど、
『「百パーセント悪いのは確かなのだが」と言ってしまったら、あとは話すな。』
の一遍について。
僕も「しいてあげれば」なんて書いておいてなんだけれど、
この一遍には割と強く共感したんですよね。
僕もよく上司や同僚に(なぜか仕事関係が多かったです)
「言いたくないんだけれど」と前置きされた後で𠮟責……じゃなかった、
アドバイス(オブラートでくるくる)を受けたコトが何度もありました。
なので著者ではないけれど、
「言いたくなければ言わなければ良いのでは?」って気持ちで
ありがたくアドバイスを拝聴していました。

あっ、さらにもう一つ共感したのがありました。
それは
『金にものをいわせるのは、ほかのもので話をつけるよりずっと公平である』
の一遍。
そこには誰もがやりたがらないPTA役員の選出方法が例としてありました。
その詳細は本書をご確認していただくとして……。
要は全員でお金を出して一番出すお金の少ない人にPTA役員をやって貰う。
その代わり集まった全額をPTA役員をやる人に渡す。です。
これには(僕は)問答無用で賛成です。
じゃんけんで決めるよりよっぽど公平だし、平和だと思います。
因みに本書の解説の中で五十嵐律人氏もこのアイデアに賛同されています。
なのでこのアイデアは意外(?)と
ポピュラリティが得られるのではないでしょうか。

以上、本書は特にお題も無く集めた100のエッセィ集。
シリーズが干支を一回り(くるくる)してもなお、
同じような話題と主張がなされているけれど、
それはそれで趣きがあったりなかったり(オブラートでくるくる)。
一方で、やや過去を振り返る話題が多かった印象も受けました。
かように(どのように?)どちらかと言えば
若者よりはそれ以上の方(オブラートでくるくる)にお勧めです。

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馳星周『北辰の門』読了

時は天平。疫病により多くの為政者が命を落とした朝堂において、ひとり異彩を放つ者がいた。藤原仲麻呂。皇后である叔母の寵愛を受け、出世の階段を駆け上がるこの男は、臣下の誰一人として持ち得ない、危険な野望を秘めていた。一方、次代の天皇である阿倍内親王は、帝となることに意味を見出せず、ただ人並みの幸せを望んでいた。かつて恋慕の情を持った仲麻呂への想いが憎しみに転じた時、時代の歯車が軋み始めるー。「恵美押勝の乱」。この国を激変させた衝撃の七日間の全容とは?
内容(「BOOK」データベースより)

人を呪わば穴二つ。

本書は奈良時代の公卿・藤原仲麻呂の物語。
至高の頂を目指し、しかし堕ちて行く様子がありました。

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
それは政(まつりごと)に限らず、
大事(だいじ)は一人では決して出来ないと言うコト。
それを良く顕わしていたから。

藤原の世の実現。その為の種を撒いた祖父・藤原不比等
大業の半ばで疫病(天然痘)に斃れた父・藤原武智麻呂
そして
至高の存在(皇帝)を目指した・藤原仲麻呂

本書を一言で言っちゃえば、仲麻呂の栄枯必衰。
過信し、慢心し、邁進する。
人の心を、気持ちを一切省みないその姿勢は
諸刃の剣となって自身にはね返ってしまい……と、かなり単純です。
因みに仲麻呂のつまずきのキッカケは後ろ盾の光明皇后や腹心達の死。
ですが周囲の反感を天高く積み上げていた仲麻呂の転落は
ある意味で必然であり、時間の問題でした。

このように本書の主題のひとつに「人の心を疎かにするな」がありました。
たとえば職場なら、
日本でおなじみ(?)の「ツーと言えばカー」が古い価値観となり、
欧米で主流(?)の「ビジネスライク」がもてはやされる。
本書は現代の(日本の)風潮に一石を投じていた様にも感じました。
因みに僕は「ツーカー」と「ビジネスライク」の
それぞれに意見はあるのだけれど、特に主張したいモノではなくて。
強いて言えば「そのどちらでも良い」って考えてしまいます。

嫌なら離れれば良いし、
離れられないなら我慢するしかない。

かつて似たような場面?悩みで求められ、
僕なりに真摯にアドバイスした結果、
「アナタは冷たい」と批判を受ける。
そんな僕の意見なんて、何の参考にもならないのだけれど。

最後に。
本書は『比(なら)ぶ者なき』、『四神の旗』に続く三部作の三作目。
僕は前作(『四神の旗』)で「次作があり三部作になる。その主人公は仲麻呂」
と予想していました(自画自賛)
で、今回さらに予想するなら……シリーズはこれでお終いかな(三部作で終わり)。
正直言えば

不比等 > 武智麻呂 > 仲麻呂

と、人物がだんだんと小粒になっている。
また仲麻呂に続くとしたら(次巻があるとするなら)
主人公は藤原永手か藤原宿奈麻呂あたりになるでしょう。
しかし、どちらにせよ仲麻呂よりさらに小粒になってしまうんですよね。
ここが潮時だと思います。

以上、本書はシリーズ物でありながら、これ一冊で十分に楽しめる。
どなた様にも自信を持ってお勧めです。


でも個人的には一作目の『比(なら)ぶ者なき』を
脇目も振らずに(?)お勧めしたかったりして(小声)。
コチラはたぶん著者の単行本を全て拝読している大ファン(僕)が
『馳星周』の中でも三本の指に入る作品だからです。

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逸木裕『五つの季節に探偵は』読了

人の心の奥底を覗き見たい。暴かずにはいられない。わたしは、そんな厄介な性質を抱えている。“人の本性を暴かずにはいられない”探偵が出会った、魅惑的な5つの謎。
内容(「BOOK」データベースより)

知らない方が良い。

本書は探偵・みどりを主人公とした5つの連作短編集。
人の本質は人には言えないトコロにある。そんな様子がありました。
佳作。

ここからは一言感想を。

『イミテーション・ガールズ -- 2002年 春』
担任の弱みを見つけようとする理由。そのウラに隠された意図。
子供らしい “醜さ” の詰まった一遍。
大人になったら逃げる。耐える。屈する。
それも強さの一つだと知るでしょう。

『龍の残り香 -- 2007年 夏』
嗅覚。失くすと厄介ですよね。なにを食べても美味しくありません。
別件で僕は頭も顔も悪いけれど、嗅覚だけは抜群に良いです。
ただしメリットよりデメリットの方が多いんですよね。
他の人には言えないコトばかりだし。

『解錠の音が -- 2009年 秋』
自転車の盗難。僕も被害にあったし、ウンザリするほど話を聞きます。
どんな鍵でも安心できないコト。知識でも経験でも知っているのですが……。
それにしても「解錠の音」とはそういうコトか!
ミステリィらしさで言えば本編が一番。

『スケーターズ・ワルツ -- 2012年 冬』
精神的な自傷行為。
そんな自分を罰する呪いがあるのなら(僕のは)解けなくて良い。
一方で、悪いコトが起きてしまったとき、
誰か一人が悪いコトなんてまずないと言うコト。
あなた(自分)は悪かった。でもあなた(自分)だけが悪かったわけじゃない。
そんな考え方もアリだってコト。皆様には忘れて欲しくないです。

『ゴーストの雫 -- 2018年 春』
経験と言う名の雫が穿つ穴。結果、カタチ作られる人格。
それを本編で例えるなら「三つ子の魂百まで」になるのかな。
ちょっと皮肉ではあるけれど。
それでも個人的には本書で一番良かったです。
光のあるラストに温かい気持ちになりました。

以上、本書は “人の本性” を扱った一冊。
多分に苦さを含んでおり、
他人の秘密(謎)をあばく罪深さみたいなモノもありました。
上質なミステリィであるコトは間違いなく、多くの方にお勧めです。


因みに僕は他人の本性、秘密なんて知りたくありません。
きっと不快な気分になるだけだと、ほとんど確信しているから。
また、そもそも他人があばける程度の秘密が、
その人の本当(本性)だとはとても思えないんですよね。
人が他人の本性に触れられる(available)。
その考え自体がちゃんちゃら可笑しいと僕は考えます。

※※
主人公の「みどり」は、な、な、なんと!?
虹を待つ彼女』や『星空の16進数』に登場するアノみどりでした。
最後まで僕は気が付かなかったのだけれど(お恥ずかしい)、
嬉しいサプライズとなりました。また「みどり」に会えるコト。
楽しみにしています。

※※※
本書は図書館のお勧めコーナにありました。
IMG_20240225_164634.jpg
IMG_20240225_164638.jpg
そこでは日本推理作家協会賞と紹介されており、
それに釣られて僕は本書を手にするコトが出来ました。
図書館司書のみなさまの日々の努力と献身に感謝いたします。

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さかなクン『さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!』読了

トラック、妖怪、タコ、そしてお魚!大好きなものに夢中になりつづけてきた男の子は、大きくなって、さかなクンになりました。大好きなことを見つけて、つづけること。ワクワクと感動がいっぱいの生き方のひみつが、この本にはつまっていますー。
内容(「BOOK」データベースより)

今はまだでも。

本書はタレントで魚類学者のさかなクンの自伝書。
夢中になれるモノを見つた著者のポジティブな人生がありました。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、とても良かったです。
それは著者の特異?な資質よりも、
何事も積極的に取り組む姿勢が素晴らしかったから。

最初にお断りです。
本書は病院の入院病棟内にある蔵書?を借りて読みました。
なので家に持ち帰る訳にはいかず、
本稿は院内で不慣れなタブレットを使用して書いています。
常にも増して乱文をお許しください。

本書は病棟内にいる、
今はあまり元気が出ないであろう子供達に読んで欲しい。
心からそう感じました。

乱暴に言えば本書には良いコトしか書かれていません。

夢を持とう。
夢は叶います。
何事にもチャレンジしよう。
夢中になって良いんだよ。
人の和を大切にしよう。

きっと病棟内の子供達にはあまり響かない内容だと思います。
けれど今は「まだ」でも。もしかしたらこれからもずっと
「まだ」かもしれないけれど(←我ながら残酷だと思います)。
それでも、いつかは、何かは、チャンスは、可能性は。

誰にでもあるんだよ?

さかなクンはそう言っていた様にも感じました。
今は元気がでなくて「けっ」としか感じなくても良いと思います。
でも今よりもう少し元気が出せるようになった時、
「俺にもまだ可能性はあるんじゃね?」と思い出して貰えれば。
そう心から願って止みません。

本書は子供向けの一冊です。
けれど大人の方でもきっと何かを感じられると僕は思います。
どなた様にも自信を持ってお勧めです。

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東山彰良『わたしはわたしで』読了

悲しくて。悔しくて。寂しくて。一瞬成功したかにみえても待ち受けている落とし穴は底なし。「I love you Debby」ほか、珠玉の作品6編!!
内容(「BOOK」データベースより)

折り合いをつける。

本書はままならない人生を描いた6つの短編集。
鬱屈した日々の中で、さまよい、あらがう人たちの姿がありました。
佳作。

ここからは一言感想を。

『I love you Debby』
自分のせいで兄を、母を死なせたと自分を責める祖父と娘。
こんな時、自分を許すのって本当に難しい。
自分を罰する痛みは、哀しみを忘れさせるアルコールみたいなモノだから。
なので僕なんかが言えた台詞じゃないけれど、Debby お願い。自分を許して。

『ドン・ロドリゴと首なしお化け』
ロドリゴは殺し屋?それとも小説家?もしかしてただのホラ吹き?
でも僕はそのどれでもなく、彼は詩人なのかも知れないと思いました。
そこに意味は無いのかも知れない。けれどニュアンスを感じます。

『モップと洗剤』
SNSの功罪。一つの発信が、憎しみが憎しみを呼ぶ連鎖を生み出して……。
救いようのない話だけれど、ラスト(その結果)は致し方が無いのかも。
自分がヤラレルより、愛する人がヤラレル。胸糞だけれど、最凶の復讐。

『わたしはわたしで』
コロナ禍で失職した女性が小説を書き始める物語。
作中、「人生は小説じゃない。そんなやすっぽいものであるはずがない。
でも、小説は人生だ(意訳)」に僭越だけれど共感しました。
僕も人生に倦んだ2年前から小説を書き始めたから。
また「良い小説はどれもあきらめについて書かれている」に
思わず膝を叩きました(僕には書けないけれど)。

『遡上』
世に不平不満しかなく、常に罵詈雑言を吐き、アトピーで頭のおかしいヤッス。
でも僕はヤッスを尊敬します。ヤッスは咲ちゃんを誕生させ、立派に育てている。
男として、大人としてこれ以上があるものか。
僕は心の底からヤッスを尊敬します。

『REASON TO BELIEVE』
タイトルはロッド・スチュワートの「REASON TO BELIEVE」
ソープで働くお母さんも、ナツナさんも、あゆみも。
嘘の一つや二つ(三つや四つ)。真面目な顔をして吐けば良いじゃん。
そんなの騙される方が悪いのだし、むしろ騙されたいと思う男はいる筈。
少なくとも僕はそうです。

以上、本書は閉塞した人生を集めた短編集。
『東山彰良』らしい粗雑で乱暴な筆が、物語をいっそう高めていました。
ちなみに『I love you Debby』は直木賞受賞作『』の続編とのコト。
しかし本編単独で全く問題ありません(これだけで素晴らしい一編でした)。
どなた様にも自信を持ってお勧めです。

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高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』読了

職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。ままならない人間関係を、食べものを通して描く傑作。心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。
内容紹介(「BOOK」データベースより)

好きなコトより、上手くやれそうな方。

本書は第167回(2022年上半期)芥川賞受賞作。
社会的価値観と個人的価値観。
その二つのギャップが小さな社会。とある職場を通して描かれていました。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、とても面白かったです。
それは主人公の一人・二谷の考え方や処生術が、
どこか僕を見ている気がしたから。

タイトルに「おいしいごはん」とありますが、
“食” はあくまでも作品を描く(ただの)ツールだったと思います。
それよりも本作は職場にある不思議な(けれど割とよくある)価値観を、
かなり直接的に描いていた。そんな印象を受けました。
たとえば、

仕事の出来ない芦川(♀)が、ただ可愛いと言うだけで守られ、
仕事は出来ても(職場での振る舞いが)不器用な押尾(♀)は迫害される。

そして

いつも一歩引いたトコロで、何にでもそこそこ上手くやる二谷(♂)。

きっと宮仕えを経験されている方なら、
(多かれ少なかれ)三人の主人公のいずれかに身に覚えがある。
もしくはそんな人を知っているんじゃないかな。

ただし、職場で見せる自分は、職場用にカスタマイズした仮(?)の自分。
本当の自分はまた別のトコロにある。
コチラに関してはほとんど全員がそうではないかと想像しています。

また表面的?社会的?に勝った芦川さんと、負けた押尾さん。
そこに個人的な意見は控えるけれど、
感情を別にすれば割と良くある話だと思いました。
僕はサラリーマンを辞めて本当に良かったです。

以上、本書は社会で求められる価値観と、あくまでも個人に根差す価値観。
その度し難いギャップを描いた作品。
会社に限らず、学校やサークル等に属した経験のある方にお勧めです。

ここからは完璧な蛇足で二谷について。
彼は大学を選んだ十代の頃を思い返し、

おれは好きなことより、うまくやれそうな人生を選んだ(本文より)

とありました。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
この点が特に僕に似ている様に感じました。
ただ開き直る訳ではないけれど、
僕はそれを一方的に「悪い」とは思わないんですよね。
自分の人生を振り返った時、満足よりも後悔と羞恥が先に出る。
それだけのコトです。
またきっと二谷も僕と同じようになると思います。
たとえ社会的に勝ち組と称されても、心からの満足は決して得られないでしょう。

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プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫享年23) 臆病で泣き虫。けれど誰よりも強くて優しい子。僕の宝物。職業:これからもずっと父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒9歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。いまもお姉ちゃんを探しちゃう。職業:父ちゃんの邪魔。
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