森博嗣『それでもデミアンは一人なのか?』読了

楽器職人としてドイツに暮らすグアトの元に金髪で碧眼、長身の男が訪れた。日本の古いカタナを背負い、デミアンと名乗る彼は、グアトに「ロイディ」というロボットを探していると語った。彼は軍事用に開発された特殊ウォーカロンで、プロジェクトが頓挫した際、廃棄を免れて逃走。ドイツ情報局によって追われる存在だった。知性を持った兵器・デミアンは、何を求めるのか?
内容(「BOOK」データベースより)

生きることと意識のあるなし

本書は「WWシリーズ」の第1弾。
「Wシリーズ」のそのものズバリ(?)の続編であり、
今回も生命について深い考察がなされています。
佳作。

ドイツの田舎で静かに暮らすグアトとロジ
とある秘密が隠された特殊ウォーカロン
そして
脳と身体、“生(生きる)”はどちらにあるのか

内容はバッサリ略で一言、最高です。
しかし、今はまだシリーズの一作目であり、
根源的なテーマに殆ど進展はありません。
言うなれば(文字通り^^)装いも新たになった
レギュラーメンバの“顔見せ” と言ったところ。
それでもロイディから受け継がれたデミアンの秘密及びトリックは、
それだけでも上等な SFミステリィとなっていました。
ファンなら誰に言われなくたって本書は手にすると思います。
なのでココは同じ熱烈ファン(僕)として一言。
ご同輩、新シリーズの開幕を心からお慶び申し上げます^^

正直、少なくとも「Wシリーズ」は読んでいないと、
ちょっと厳しいと思います(オブラートでクルクル)。
AI や ウォーカロンの誕生経緯や現在の立ち位置、
それらが頭にないと世界観の構築は殆ど不可能でしょう。
もっと言えば本作でも重要な鍵となるトランスファに至っては
最初から最後まで訳ワカメになると思います。
甚だ主観的な意見ではあるけれど、
本書の前に是非「Wシリーズ」だけでも手にして欲しい。
SF好きでミステリィ好きなら、
高い確率で貴方を魅了するシリーズになるはずです。

書きたい事は山ほどあります。
例えば未来(かの世界)におけるアルコールの現状?とか、
グアトとロジは当然として(当然?嬉しい驚きでした^^)、
セリンも恋の戦線に参戦か?とか。
はたまた本書のカバーデザインが中身を伴いつつ
大変に素晴らしいこととか。
と言った感じで名残は尽きないけれど、ココでは一つだけ。
それは “生(生きる)” についてです。
作中、デミアンは禅の教えを用いて、
彼なりの意見を披露する場面があります。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕はグアトと同じく、頭が痺れるような感覚となりました。
因みにデミアンと僕は禅(もっと言えば作中にはない仏教)
の解釈は同じでも、その感想(個人的結論)は違います。
ネタバレを避けるけれど、それが「本来の生」とは僕には思えない。
けれど、デミアンの思考の(その過程の)美しさには
息を飲む思いがしたんですよね。
うーん、やはり『森博嗣』は素晴らしい!
ミステリィにあるトリックやサスペンスよりも、
上質で静かな、しかし非常に強い興奮がそこにはあります。

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樋口進『今すぐ始めるアルコール依存症治療』読了

治療が必要な人の9割は治療を受けていない。早く始めるほどよい。今からでも遅くはない。
内容(「BOOK」データベースより)

辞めずにすむかも?

本書は国立病院久里浜医療センターの院長による一冊。
アルコール依存症治療における最新情報を、
非常に判りやすく紹介されています。

内容はバッサリ略で一言、とても良かったです。
例えばアルコール依存症のベテラン(僕)なら
後述する最新情報に新しい知見がありました。
けれど、本書はお酒について現在進行形でお悩みの方、
特に初心者にこそ読んで欲しいなと思いました。
また文字数は少なく、フォントは大きく、挿絵や図表も多い等、
簡潔でわかり易いので、ひろく多くの方にお勧めです。

ここからは蛇足で断酒における最新情報。特に減酒について。
著者の前著『アルコール依存症から抜け出す本
にもあったのだけれど、本書はもう一歩踏み込んで
“減酒” を語っていたように感じました。
例えば2018年に作成された新しい診療ガイドラインにある

「飲酒量低減を目標とした治療」

が、実際の医療現場でどのように反映されているのか。
非常に簡単ではあるけれど、その一端を知ることが出来ました。
それにしても……

断酒しかない(出来なきゃ死ぬしかない)
と教わってきた僕にとって

減酒外来(必ずしも断酒を目標としない治療)

の時点で既にカルチャーショック(?)ではあります。
けれど現在ではさらに治療の間口は広がって

プレアルコホリック外来(生活習慣・酒乱再発予防のための治療)

まであるんですね……。
ちょっとだけ嫉妬を感じないでもないけれど(笑)
僕や僕達仲間にとって治療の選択肢が増えることは、
大変にありがたいことだと感じました(本当に)。

最後に。
現在お酒でお悩み方はその問題が深刻化する前に、
是非一度医療機関に診て貰って欲しいな、って思います。
今なら大好きなお酒を、辞めずにすむかもしれませんよ?

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島田荘司『盲剣楼奇譚』読了

江戸時代から続く金沢の芸者置屋・盲剣楼で、終戦直後の昭和二十年九月に血腥い大量斬殺事件が発生した。軍人くずれの無頼の徒が楼を襲撃、出入り口も窓も封鎖されて密室状態となった中で乱暴狼藉の限りを尽くす五人の男たちを、一瞬にして斬り殺した謎の美剣士。それは盲剣楼の庭先の祠に祀られた伝説の剣客“盲剣さま”だったのか?七十余年を経て起きた誘拐事件をきっかけに、驚くべき真相が明かされる!?
内容(「BOOK」データベースより)

江戸時代の吉敷竹史と加納通子。

本書はおよそ20年ぶりとなる吉敷竹史シリーズの最新作。
ただ一人の女性を守るために、全てを捧げた現代の“盲剣さま”。
彼の姿に思わず背筋が伸びました。

内容はバッサリ略で一言、はぁ~面白かった!

作品の大半を占める盲剣さまの話も良かったのだけれど、
なんと言っても吉敷と通子、そして二人の娘・ゆき子です。
彼等の幸せそうな姿に、30年来のファン(僕)は、
それだけで目頭が熱くなりました。

御大のキャリア後半の例に漏れず、物語の構成は滅茶苦茶です(笑)
およそ70%(360ページ)を占める江戸時代の“盲剣さま”は、
常識的には3%(15ページくらい)もあれば充分でしょう。
でもこの脱線?わき道?の異常なまでの膨らみが、
ファンには堪らないんですよね。僕は今回(本作)も、

まったく、御大は仕様がないなぁ(大歓迎)

と、終始口元が緩んだ読書となりました。
言うまでもないけれど、
御大のファンなら読まないなんてありえない一冊です。
皆様も是非

御大は仕様がないなぁ

と歓喜の苦情をどうぞ(笑)。

ここからは蛇足。
僕は江戸時代の鮎之進と千代に、
現代の吉敷と通子を重ねてしまいました。
特に千代を襲った悲劇と、しかし最愛の人との間に子を授かったコト。
そこに通子の人生との類似をみました。
終盤、千代を想えば辛い読書にもなったけれど、
しかし描かれていない千代のその後にだって、
通子の人生を重ねることが出来たんですよね。
千代は(鮎之進と、彼との一粒種と)きっと幸せになったと、
僕は強く信じます。

それにしても通子は本当に良かった。本当に本当に良かった。
ゆき子の成長にも驚いたけれど、だからこそ、
ゆき子(と吉敷)を通して通子の幸せを想像できたこと。
長年のファンとして、本書はそれだけでお釣りがきます。

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中島京子『夢見る帝国図書館』読了

本がわれらを自由にする。明治に出来た日本初の図書館と戦後を生きた喜和子さん。ふたつの物語は平成でひとつに―
内容(「BOOK」データベースより)

すべての記憶は創作である。

本書は図書館とともに戦後を生きた喜和子と、
帝国図書館に集まる多くの人々を描いた物語。
彼等が必死になって求めた続けたカタチのない何かを、
自由と平和を甘受する現代において想いを馳せました。

西洋に追いつけ!と作られたビブリオテーキ
そこに集まる日本の文豪(の卵)達
そして
喜和子に執筆を依頼をされた『夢見る帝国図書館』

内容はバッサリ略で一言、はぁ~面白かった。
個人的には図書館に関わる全ての登場人物に、
どこか仲間意識みたいなモノを感じながら読書できたこと。
図書館好きの一人として、なんだか得した気分になりました。

ただ物語に劇的な何かがあるわけではありません。
また扱う材料も多岐に渡るし、主題を特定するのは困難かも。
したがってちょっとだけボンヤリ(散漫)とした印象にもなったけれど、
それも決して悪くはないんですよね。
史実を元にした多数のエピソードがイチイチ面白いし、
戦争が過剰に悲劇的に(反戦的に)描かれることもない。
語弊を恐れずに言えば、当時の日本の、戦後の上野の
活き活きとした様子が僕の眼に浮かぶ様な気がしたんですよね。
言うまでもなく、戦争には多くの悲劇があったのだけれど、
それでもなお、彼等の愛した図書館の扉は、
未来に向かって開け放たれていたと感じました。
本書は図書館好きに特にお勧めしたいと思います。

蛇足でフィクションとノンフィクションの違いについて。
それは作中、喜和子さんの作品(?)に触れた、
彼女のかつての恋人・古尾野放哉先生の述懐にあったのですが……。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は記憶はフィクションで全然構わないと思います。
そりゃあ、忘れてもらっちゃ困るコトだってあるけれど、
極めて個人的なモノならその記憶が事実かどうかなんて、
それ程意味はないと思うんですよね。
例えばそれが悲しい記憶ならば、むしろ積極的に

温かいモノに書き換えちゃえ!!

って。
今を生きる全ての方に対して、僕はそう思います。

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吉田修一『アンジュと頭獅王』読了

声に出して読みたくなる、圧巻の大冒険!
吉田修一の新境地ともいえる本書は、誰かのために生きる時代を模索する今だからこそ蘇る、二十一世紀版山椒太夫。古典の名作『山椒太夫』をベースに、上古も今も末代も、慈悲の心の尊さとはいかに、を現代に問う問題作だ。
内容(出版社内容紹介より)

時を超えて。

本書は吉田修一版『安寿と厨子王丸』。
大筋は踏襲しつつ、大胆な飛躍を盛り込んでおり、
古典でありながら現代に相応しいエンターテイメントになっています。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、とても良かったです。
正直、中盤の飛躍が大胆すぎて、ちょっと仰け反っちゃったけれど、
読後はそれも目的のあるアレンジだったと感じました。
それを乱暴にまとめれば「時を超える」と言うコト。
肉体を含め、物理的なモノは必ず朽ちてしまうけれど、

愛や恩に正義。そして憎しみと罪も……。

時の風化作用が無効であると言うコト。
吉田修一版『安寿と厨子王丸』は強調していたように感じました。
また子供向け?にしては残虐なシーンが多いけれど、
アンジュの(僕の記憶と違った)その後には、
小さく快哉を叫びました。

ここからは蛇足。
上記でも少し触れた僕の記憶との差異をいくつか。
僕が覚えている『安寿と厨子王丸』は

・アンジュだけは夜毎、男達に折檻を受けていた。
・焼き金を額に当てられたのはアンジュだけ。
・アンジュは拷問による他殺ではなく、拷問中の自死。

しかしいずれにせよ、厨子王丸よりアンジュの方が
明らかに虐げられているんですよね。
その後も、厨子王丸は復権するのに、アンジュは亡くなったままだし。
なので僕はアンジュや二人の母(御台所)をして

男に比べて女性は悲惨だなぁ

と子供心に感じたコトを覚えています。
また有名な母(御台所)の唄も、本作では

安寿恋しや ほうれほれ 頭獅王恋しや ほうれほれ

となっていましたが、僕の記憶では

安寿恋しや あいやー 厨子王恋しや あいやー

と「ほうれほれ」が「あいやー」でした(笑)
それでも細部は違っても、
物語に込められたメッセージみたいなモノは
時を超えてもきっと変わらないのでしょう。
因果応報は、この世の拠って立つところだと思います。

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太宰治『きりぎりす』読了

「おわかれ致します。あなたは、嘘ばかりついていました。…」名声を得ることで破局を迎えた画家夫婦の内面を、妻の告白を通して印象深く描いた表題作など、著者の最も得意とする女性の告白体小説『燈篭』『千代女』。著者の文学観、時代への洞察がうかがわれる随想的作品『鴎』『善蔵を思う』『風の便り』。他に本格的ロマンの『水仙』『日の出前』など、中期の作品から秀作14編を収録。
内容(「BOOK」データベースより)

ユーモア。

本書は太宰治の中期から集めた短編集。
乱暴に言えばやっぱり『太宰』な作品ばかりですが、
ユーモア成分が気持ち多く感じられました。

今回も二編をご紹介。先ずは『燈籠』。
両親を支え慎ましく暮らしていた下駄屋の一人娘のお話です。
彼女は好きになった苦学生の為に万引きを犯してしまうのですが……。
正直、彼女の悲痛な哀訴を前にしても、罪は罪だと思います。
それでも僕は彼女を断じる気持ちにはなれないんですよね。
それは彼女に対する憐憫でも同情でもなく、
もし僕が彼女と同じ立場にあったらあるいは……
そんな恐怖みたいなモノを感じてしまったからです。

もう一つは表題作の『きりぎりす』。
周囲に反対されながら、
反対されるに相応しいダメ男(画家)に嫁いだ女性のお話です。
彼女は

私でなければ、お嫁に行けないような人(本文より)

と、ある意味で覚悟して結婚したのですが、
予想に反して夫は名声と収入を得るようになり……。
きっと本作は妻の眼を通したいつもの太宰。
出世して俗物化する夫(太宰自身)の自虐ではないでしょうか。
それでも、そんな深層(真相)はまるっきり無視して、
小説的にとても面白いんですよね。
彼女が夫の嫌な部分を事細かにあげつらう箇所なんか、
夫に同情を覚えつつ、カラリと笑ってしまいました。

以上、本書は従来よりも私小説的な成分を気持ち控え目、
その代わりに小説的(フィクション)成分を気持ち多目。
ユーモアを感じられる作品多かった気がします。
僕は語るほど読んでいないけれど、
『太宰』の中ではかなり気軽に読める一冊だと感じました。

それにしても、僕は断然、太宰は女性一人称が良いです。
もっと言えば男性一人称のそれは鬱過ぎるし、
僕を陰とさせることが多い。
また陰となる(個人的な)理由も明白なのだけれど、
僕の恥部になるのでココでは割愛。
ただし、その理由に連なる『姥捨』の一編には
別の意味でモヤモヤが残ったかも知れません。
自殺を礼賛するわけでは決してないのだけれど、
嘉七とかず枝の結末はそんなんで良いのかな(微かな憤り)

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池井戸潤『ノーサイド・ゲーム』読了

未来につながる、パスがある。大手自動車メーカー・トキワ自動車のエリート社員だった君嶋隼人は、とある大型買収案件に異を唱えた結果、横浜工場の総務部長に左遷させられ、同社ラグビー部アストロズのゼネラルマネージャーを兼務することに。かつて強豪として鳴らしたアストロズも、いまは成績不振に喘ぎ、鳴かず飛ばず。巨額の赤字を垂れ流していた。アストロズを再生せよ―。ラグビーに関して何の知識も経験もない、ズブの素人である君嶋が、お荷物社会人ラグビーの再建に挑む。
内容(「BOOK」データベースより)

軽い軽い。

本書は社会人ラグビーを舞台とした長編。
著者の自家薬籠中である『企業小説』でもあり、
いつもの『池井戸潤』が安心して楽しめます。

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
しかし……。

僕は過去の駄文でも触れたけれど、
著者は『下町ロケット』で大きく作風を変えたと感じています。
詳細?は上記リンク先をご確認していただくとして、
一言で言うなら、それ以前の作品より

軽くなった。

結果、『下町ロケット』は直木賞を受賞し、ドラマは大ヒット。
また以降の作品も良い意味で『下町ロケット』の焼き直しであり、
その軽さをセールスへ結び付けていたと感じています。
それはそれで僕も歓迎しているのだけれど、
本作に感じたことを正直に告白すれば

いくらなんでも軽すぎる

でした。割と古くからのファンとして、
少々堅苦しく、テンポも悪くて、いささか冗長な
あの頃の『池井戸潤』が懐かしく感じてしまいました。
お金も出さず図書館で借りているクセに、
厚かましい発言を申し訳なく思います……。

蛇足で現在開催中のラグビーW杯。盛り上がっていますよね?
僕もご他聞に漏れず、先日のアイルランド戦に胸が熱くなりました。
因みに本書の冒頭には、ラグビーのポジションが図解されており、
僕の応援する堀江翔太選手やトンプソン選手の守備位置を
改めて確認することが出来ました(笑)
斯様に僕はラグビーの初心者なので、
小さな声での感想ではあるのですが……。
僕は『ノーサイド』に代表されるラグビーの精神面よりも、
彼等の鍛え抜かれた肉体と肉体がぶつかり合うトコロに、
崇高な何かを感じます。

精神が痛みを凌駕することなんてありない。

そんな僕の確信でさえ、ラガーマンは粉々にしてくれます。

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奥田英朗『罪の轍』読了

昭和三十八年。北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年、宇野寛治は、窃盗事件の捜査から逃れるために身ひとつで東京に向かう。東京に行きさえすれば、明るい未来が待っていると信じていたのだ。一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事・落合昌夫は、南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中に、子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける―。オリンピック開催に沸く世間に取り残された孤独な魂の彷徨を、緻密な心理描写と圧倒的なリアリティーで描く傑作ミステリ。
内容(「BOOK」データベースより)

霧は晴れない。

本書は行き当たりばったりで罪を重ねる男と、
その男を追う刑事達を描いた長編社会派ミステリィ。
東京オリンピックを控え湧き上がる日本の、
その光と影に悄然となってしましました。

記憶障害を負う礼文島の漁師
組織改革の変換期にある警察
そして
日本で初めてとなる劇場型犯罪

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
ただし、陰鬱とした気配が物語全体を覆い、
最後まで晴れることはありません。
ラストも勧善懲悪とは程遠く、手に汗を握ると言うよりは
ハッキリと重苦しい読書となってしまいました。
それは社会が、組織が、個人が……
とその主体を誰にするか?も定められず、
また貧困が、差別が、格差が……
とその原因は何処にあるのか置く事もできない。
結果、例えば高度経済成長の歪みウンヌンと言った
曖昧模糊としたモノに責任を押し付けるしかない。
そんな最後まで霧の晴れない読書だった気がします。

正直言えば僕は期待していました。
とある人物が生きているのでは?って。
(オビを含め事前情報を一切ナシで読み始めました)
また何と言ったって、ひねくれ(?)者の『奥田英朗』ですからね。
不安にさせる描写の数々(しかし断定は巧妙に避けられる)も、
快哉を叫ぶ伏線だと思っていました。
でも僕はP536の4行目でオチ(落合刑事)と同じ確信をしてしまい、
本書を一度投げ出してしまいました。
読書再開まで3日を要したことを付記します。

とは言え、本書は重厚すぎることは一切なく、
読みやすく、スピード感もあり、あくまでもエンタメの範疇です。
読後、爽快になるとは言わないけれど、
ひろく多くの方にお勧めできる作品だと思います。

蛇足で作中の仁井刑事について。
彼は前作『オリンピックの身代金』でも登場した長身痩躯の伊達男。
切れ者で単独行動を好み、上司や犯罪に対して遠慮はしないけれど、
誰に対しても(例えば後輩にも)さりげなく優しい……。
そんな仁井刑事を僕は『アルスラーン戦記』の
とあるキャラクタに重ねてしまいました。
って、田中芳樹ファン以外には置いてきぼりの話題で恐縮だけれど、
さて、このとあるキャラクタとは一体誰でしょうか(笑)
ヒントは仁井刑事のあだ名がニールで発音が近いこと。
もっと言えばどちらもイロ(女)方面に強いです(笑)

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真梨幸子『おひとり様作家、いよいよ猫を飼う。』読了

本が売れず極貧一人暮らし。「いつか腐乱死体で発見される」と怯えていたら起死回生のヒットが訪れた!生活は激変、なぜか猫まで飼うことに。“女ふたり”暮らしは意外と幸福で―。高級フードで食費が嵩んでも、ブランドバッグを寝床にされても無問題。潔癖症だけどウンチョのお世話も喜んで!女同士、ドロドロならぬメロメロ招福エッセイ。
内容(「BOOK」データベースより)

全然平気。

本書はイヤミスを代表する著者の日常を描いたエッセイ集。
同じおひとり様(僕)として、非常に多くの共感がありました。

ごみ屋敷の原因、その仮説。
ヘンタイ魂=ロマン=萌え。
人間の赤ちゃんが泣く理由。

内容はバッサリ略で一言、はぁ~面白かった。
正直、「猫」成分は少なく(全体の2割にも満たない)、
そちらを期待すると肩透かしになるでしょう。
たとえば僕がそうでした。
けれど、読後に失望とかは一切なかったんですよね。
むしろ飾り気なく描かれる「おひとり様」の様子に、
時間を忘れ、睡眠時間を大きく削られてしまいました(welcome^^)
本書は「猫」な方より「おひとり様」に断然お勧めします。

ここからは蛇足で「うんちょ」について。
それは著者の愛猫・マリモさんが
ご飯の遅れに抗議?した時のお話にあったのですが……。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は真梨さんがマリモさんの「うんちょ」の後始末に
嫌悪感や忌避感みたいなモノはほとんど感じなかった。
そう確信しているんですよね。それは同じ親馬鹿の僕が

「うんちょ」なんて全然平気

だからです。
そりゃあ、猫タンの「うんちょ」だって臭いし、汚いですよ?
けれど、愛猫(娘達)のそれなら全然平気なんですよね。
例えば時間が経って乾いたそれなら、
素手でポイぐらい平気の平左です(ちゃんと後で手は洗うけど^^)

かなり潔癖症が入った昔の僕からは想像を絶するけれど、
娘達の「うんちょ」なら全然平気になっちゃった。
これも猫タンの特殊スキルなんですかね(下僕の属性変化)。
それが良いか悪いかは判らないけれど、
僕をこんなにも変えてくれた娘達が愛おしくて。
お腹の上のお姉ちゃんに、いつもより多目のトントンです
(って、妹さんはどこ行った?^^;)
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村上春樹『カンガルー日和』読了

時間が作り出し、いつか時間が流し去っていく淡い哀しみと虚しさ。都会の片隅のささやかなメルヘンを、知的センチメンタリズムと繊細なまなざしで拾い上げるハルキ・ワールド。
内容(「BOOK」データベースより)

村上日和。

本書は『村上春樹』による18の掌編集。
集められた作品は共通したテーマはなくても、
身にまとった空気みたいなモノが同じでした。

印象に残った二編を簡単にご紹介。まずは
『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』
ある日すれ違った100パーセントの女の子に対して、
僕はなんて声を掛ければ良かったのか?と言ったお話です。
で、僕はほとんど確信しているんですよね。
『僕』は声を掛けなくて正解だったと。
月並みな意見だと自覚はあるけれど、
声を掛けた瞬間、その女の子が50%ぐらいになっちゃう。
世の中、だいたいそんなモンですよね?

もう一つは『5月の海岸線』
かつて恋人が住んでいた街に、12年ぶりに訪れる男のお話です。
内容は割愛しますが、奇妙な世界観の多い本書にあって、
珍しくリアリティを感じる作品です。特に理由はないのだけれど、
作中の『僕』は目覚めないんじゃないかな?
と僕(yuki)は感じました。
もう少し言えば『僕』は自殺する(した)イメージが浮かびます。

以上、本書はてんでバラバラでも、
また著者のフィールドである長編ではなくても、
全てに心地よい『村上春樹』がありました。
因みに僕は台風一過の猛烈に暑い日にパンツ一丁で読んだのだけれど、
それは僕なりの「村上日和」となって、決して悪くはなかったんですよね。
そう

全然悪くない(←ニヤリ^^)

皆様も皆様なりの「村上日和」を如何でしょうか。

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プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫18歳) 泣き虫で臆病。温厚だけど父ちゃんには我儘な女王様。妹がちょっぴり苦手。職業:父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒5歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。お姉ちゃんともっと遊びたい。職業:父ちゃんの邪魔。
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