小手鞠るい『泣くほどの恋じゃない』読了

京都の小さな塾で講師を務める凪子(なぎこ)。
ふとしたきっかけから教え子の父親、黒木と付き合いはじめるが、
いつからか会えない夜の耐え難い苦しみが凪子を襲う。
そんな絶望の時間を埋めるため、凪子は筆を執った。
他愛のない手紙を何通も、何通も―一文字一文字が、
一秒一秒の寂しさを埋めてくれた。
だが、小説家になるという果てしない夢を抱いた、
まさにそのとき残酷な運命が凪子を絡めとることに。
内容(「BOOK」データベースより)

タイトル詐欺。

本書は恋愛小説の名手『小手鞠るい』による一冊。
許されぬ恋を甘く切なく、女性らしい細やかな筆で描かれています。

生徒の父親との不倫
ラブレターとしての小説
そして
恋のウラオモテ

タイトルはほとんど詐欺レベルです。
これが不倫相手の黒木の台詞ならいざ知らず、
本書に描かれたのは凪子のほとんど生涯を捧げた恋なのです。
著者の意図だとしても、このタイトルはあまりにも不誠実でしょう
(もしかして不誠実を不倫にかけましたか?)

ただ肝心の内容は決して悪くありません。
きっと抑圧されたと思うのですが、それでも溢れてしまう情感が
(良いも悪いも含めて)女性らしいと好感さえ覚えました。

また一方で不倫を美化しすぎているとも感じました。
凪子の葛藤も覚悟もそれはそれで立派だと思いますが、
不倫で泣く人の視点が絶望的に欠けてはいないでしょうか。
不倫で本当に哀しい、寂しい……
いや、身も心も八つ裂きにされ、真の地獄に落ちるのは、
大手を振って恋人に会えない凪子ではありません。
その点には全く触れず

『泣くほどの恋じゃない(←タイトル詐欺)』

と(逆説的に)被害者面した厚顔なタイトルをつけた
著者と製作陣の意図に甚だ疑問が残ります。

斯様に本作は不倫から汚点を排除した純愛ラブストーリ。
このアンフェアな視点を受け入れるかどうかで
読者の評価は変ると思います。

蛇足です。
最近似たようなお話を読んだな、、と思って調べてみたら、
それは著者の『誰もいない』でした。
いやぁ、ホントにそっくり(笑)
『小手鞠るい』は恋愛小説の名手として有名だそうですが、
不倫を美化しすぎてどうにも僕には受け入れられません。
まだ二作しか読んでいないので多くは控えますが、
『小手鞠るい』の作品に男性でも共感できるものがあるのかな?
友人に紹介された作家なので、
できれば僕もファンになりたいのだけれど。

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道尾秀介『スケルトン・キー』読了

週刊誌記者のスクープ獲得の手伝いをしている僕、坂木錠也。
この仕事を選んだのは、スリルのある環境に身を置いて
心拍数を上げることで、自分の狂気を抑え込むことができるからだ。
最近は、まともな状態を保てている。でもある日、
児童養護施設でともに育った仲間から電話がかかってきて、
日常が変わりはじめた。これまで必死に守ってきた平穏が、
壊れてしまう―僕に近づいてはいけない。殺してしまうから。
あなたは死んでしまうから。
内容(「BOOK」データベースより)

人それぞれです。

本書はサイコパスの暗闘を描いたサスペンス・ミステリィ。
物語も良いのですが、何より著者のテクニックが光ります。

児童養護施設で育てられた主人公・錠也
彼が施設に預けられる理由となった母の死
そして
遺伝と環境

内容はバッサリ略で一言。面白かったです。
それはナイトキャップのつもりで軽くはじめたのが、
最後まで一気呵成に読んでしまった程。
眠気を軽く吹き飛ばすくらいに夢中になれました。
正直、やや中二病だし、ご都合主義も随所にある。
またトリックもラストも目を見張るほどではありません。
でも読ませるんですよね。
それは物語の構成をはじめ、著者のテクニックが絶品だからです。
例えば錠也が幼馴染のひかりの家に訪問時、
彼女はコーヒーが苦手なのに何故かカップを2つ用意するとか、
錠也が児童養護施設に訪問時、
戸越先生が「また遊びに来てくれたの?」と発言するとか。
僕はこれらの箇所で違和感を覚えたのですが、
それはあからさまに怪しいのではなく、
逆に捨て置けるほど小さなものでもなかったんですよね。
で、当然その違和感の正体は後に判明するのですが、
その違和感と真相の配置、
また違和感の大きさがまさしく絶妙だったと感じました。
なので途中読者(僕)の興味を失う暇を与えず、
貴重な睡眠時間を奪うコトになりました(笑)

『道尾秀介』には本作以上の傑作が少なからずあるけれど
久しぶりに触れた『道尾秀介』に
ある意味で円熟の技をみせてもらいました。

蛇足で月面着陸で有名なアームストロング船長について。
作中、彼はサイコパスとされる有名人として
マザー・テレサ、ピョートル、毛沢東、スティーブ・ジョブス
と並んで紹介されていました。
で、僕は本作とは全く関係ないのだけれど、
以下の動画を思い出してしまいました。

【ゆっくり解説】世界の奇人・変人・偉人紹介【アームストロング】

僕はニコニコ動画の回し者でも、
動画投稿者とも全く関係はありません。
ただ皆様にも動画をご覧頂き、アームストロング船長の個性?に
唖然呆然として欲しいと思います(笑)
サイコパスと言うと、どこか負のイメージが付きまとうけれど、
アームストロング船長の様に良い意味で凄い人もいます。
サイコパスと呼ばれる彼等だって僕達と同じ、
人それぞれなんですよね。

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池井戸潤『下町ロケット ゴースト』読了

宇宙から人体へ。次なる部隊は大地。
佃製作所の新たな戦いの幕が上がる。
倒産の危機や幾多の困難を、社長の佃航平や社員たちの、
熱き思いと諦めない姿勢で切り抜けてきた大田区の町工場「佃製作所」。
高い技術に支えられ経営は安定していたかに思えたが、
主力であるロケットエンジン用バルブシステムの納入先である
帝国重工の業績悪化、大口取引先からの非情な通告、
そして、番頭・殿村の父が倒れ、一気に危機に直面する。
大人気シリーズ第三弾!!
内容(「BOOK」データベースより抜粋)

セットアッパー。

本書は大ヒット『下町ロケット』シリーズ第三弾。
既に発表されている『下町ロケット ヤタガラス』とあわせてなる
「宇宙から大地」編の前編となっています。
なので盛り上がってきた?ところで本作は終わってしまいますが、
キッチリと期待をつなげています。

新たな挑戦・トランスミッション
旧習と革新の対立
そして
袂を分かつ仲間たち

内容はいつもの「池井戸潤」です。
下町ロケット以降の軽く、はやく、判りやすい「池井戸潤」。
おまけに勧善懲悪で熱い展開もテンプレ通りでしょう。
まっ、本作は前編にあたるのでそこまで熱い展開ではないけれど、
それを差し引いても安心・安全な「池井戸潤」に変わりなく。
一定の品質保証は確実です。

ネタバレになるので控えますが「宇宙から大地」編とある通り、
その着眼はなかなか見事だと思いました。
「準天頂衛星」、「大規模農場」で今後が予想しやすいのだけれど、
ロケットから続くシリーズの展開として非常にスマートだと思います。

また作中、帝国重工業の「スターダスト計画」が危機を迎えるのですが
財前が放った一言「農業です」には思わず快哉を叫んでしまいました。
それは今までバラバラだったピースが一気に繋がったから。
特にシリーズ一作目から継続して登場する
縦長の顔に大きなギョロ目の人物。
僕は彼の離脱に寂しさを覚えたけれど、これは次で帰ってきますね。
ってかほぼ主役になるでしょう(笑)

斯様に本作はクローザーに繋げるセットアッパー。
ゲームセットはまだだけれど、勝ち試合は約束されたも同然です。
次は鷹揚にポテチでも食べながら「下町ロケット ヤタガラス」
を手に取り、勝ちが確定するサマを見届けようじゃありませんか^^

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吉田修一『国宝(上)(下)』読了

1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」―
侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、
この国の宝となる役者は生まれた。
男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、
この世ならざる美貌は人々を巻き込み、
喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。
舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。
日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、
道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、
スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。
舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、
数多の歓喜と絶望を享受しながら、
その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか?
朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ、著者渾身の大作。
内容(「BOOK」データベースより)

生贄。

本書は「吉田修一」の作家生活20周年記念を飾る作品。
人間国宝まで登りつめた歌舞伎役者が
手に入れたものと失ったもの。
その二つが鮮やかに、そして残酷に描かれています。
佳作。

しのぎを削るライバル
名誉とスキャンダル
そして
差し出された犠牲

物語は芝居の狂言回しよろしく三人称で書かれており、
歌舞伎に無学な読者(含む僕)にも判りやすく解説されています。
また壮大な大河小説ではありますが、
盛り上がる箇所が随所にあるので途中で飽きることもありません。
辻村の犯行動機や徳次の帰還、妻・彰子の疑惑等、
不満もないことは無いけれど、そんなのは本当に些細な事。
本書の白眉は徹底して貫かれたサディズムにありました。
物語の終盤、主人公・喜久雄が手に入れる栄光と境地は
もはや“人外”レベルになるのだけれど、
その過程に差し出された犠牲はそれ以上に“人外”なんですよね。
さらにラストはとあるボクシング漫画のそれを彷彿とさせており、
きっと喜久雄自身は満足だと思うのだけれど、
僕は彼が幸せだと断言するには躊躇してしまいました。

きっと歌舞伎役者に限らず、スポーツ選手や作家。
それこそ僕の大好きなロックスターもそうなんですが、
僕達大衆は彼等(スター)に犠牲を求めているような気がします。
それは出自の不運でも良いし、身内のトラブルでも良い。
当然、本人の挫折なんか最高のスパイスです(例えばドラッグとか)。
僕達は彼等のスキルに感動すると同時に、
彼等の背後にある物語を “観て” いるんじゃないかな。
またそれは不幸であればあるほど良かったりして。
彼等はきっと己の高みのために多くの生贄を捧げているけれど、
それはある意味で僕達が無意識のうちに求めた犠牲。
彼等(スター)もまた僕達の生贄ではないでしょうか。

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乙川優三郎『ある日失わずにすむもの』読了

ようやく築いた生活とジャズの夢を奪われるマーキス/アメリカ。
大切な人生の仲間と自負を失うワイン農家のホセ/スペイン。
銃をとり、人買いの手から娼婦の妹を守るマルコ/フィリピン。
北米、ヨーロッパ、アジアの国々の参戦、そして日本。
地球規模のパワーゲームが私たちに強いるであろう決断と残懐。
小説には力があると信じられる12篇!
内容(「BOOK」データベースより)

イマジン。

本書は世界大戦に突入した近未来を描いた12の掌編集。
戦争によって失われていくモノが淡々と描いており、
反戦への思いが静かに立ち上がります。
秀作。

内容はバッサリ略で一言、非常に素晴らしかったです。
本書は戦場ではなく銃後……と言うか出征の様子が描いており、
反戦小説の手法としてはそれほど目新しくはありません。
けれど戦場に向かう12人の若者達には、
匂い立つようなリアルがあるんですよね。
それは現代性が一分の隙も無く溶け込んでいること、
各国の習慣・風俗、つまり地域性がよく顕れていること。
そして現代っ子らしく、どこか諦念の影がつきまとうこと。
小説のもつ普遍性は言わずもがなだけれど、
実時間に沿ったそれはもう一つ上の説得力があった気がします。

またこれらが1話につき僅か20ページあまりで過不足無く
(しかも抑揚のない筆で)描かれているんですからね。
もはや見事と言うより他ありません。

さらには直接的ではない表現で読者の厭戦気分を駆り立てること。
僕ははじめてジョンレノンのイマジンを聞いた時を思い出しました。
この曲と本書ではシチュエーションが異なるけれど、
その真髄(主張)はきっと同じだと思います。
是非、多くの方に触れて欲しい一冊です。

蛇足で僕のお勧めは『アベーロ』の一編。
日本の房総半島を舞台に出征する漁師・千紘と、
そこに残る彼女・渚月のお話です。
掌編なので内容は割愛しますが、僕は千紘に同情するコトはあっても
渚月を責める気持ちは一切持ちえません。
憎むべきは彼女の冷淡ではなく、この状況を招いた戦争です。
「なにもなければきっと二人は……」と想像するとき、
僕の(戦争への)憎しみは倍増しました。

おまけ:
Imagine.jpg
BGM: John Lennon / Imagine

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須賀しのぶ『夏空白花』読了

1945年夏、敗戦翌日。
誰もが呆然とする中、朝日新聞社に乗り込んできた男がいた。
全てが無くなった今こそ、未来を担う若者の心のために、
戦争で失われていた「高校野球大会」を復活させなければいけない、
と言う。ボールもない、球場もない。
それでも、もう一度甲子園で野球がしたい。
己のために、戦争で亡くなった仲間のために、
これからの日本に希望を見せるために。
「会社と自分の生き残りのため」という
不純な動機で動いていた記者の神住は、人々の想いと祈りに触れ、
全国を奔走するが、そこに立ちふさがったのは、
「高校野球」に理解を示さぬGHQの強固な拒絶だった…。
内容(「BOOK」データベースより)

フェアプレーな精神。

本書は戦後復活を果たした全国高校野球選手権大会を題材に
日本の戦後史と日米の文化を比較した長編小説。
エンターテイメントらしい胸が熱くなる展開と同時に、
メディア(主に朝日新聞)批判を併せ持つ作品です。

戦争で奪われた可能性
紙爆弾を作っていた新聞社の戦争責任
そして
ベースボールと野球

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
でも従前は勧善懲悪?で
割りと単純明快な娯楽小説だと予想していました。
けれど意外にもメディア(主に朝日新聞)批判が込められており、
いろいろな意味で驚きました。
例えば

・何故、一民間企業が学生野球を主催するのか?

勿論、本作は飽くまでもエンタメだし、割かれたページはごく僅か。
けれど、僕が子供の頃から抱えてきた疑問

・何故、プロ野球より技術が劣る高校野球が
 日本では持て囃されるのか?

の回答には必要だったし、作中のエヴァンスの言葉を借りれば
著者の「フェアプレーな精神」でもあったと感じました。

正直、随所に公正を期すための情報開示が顔を出すので(素晴らしい)
エンタメとしてはいささかテンポが悪いかも。
けれど主人公・神住の様に良かれと思って「事実を曲げる」のではなく、
先輩記者・重野の「良かれは傲慢。事実を伝えねば」
に寄せた本書の筆は(エラソーだけど)一定の価値があるのでは。
アメリカ流が全て良いわけではないけれど、
「フェアプレーな精神」に見習うところはあると思います。

ここからは蛇足です。
僕は自身の政治的な立場を表明しないし、その意図で発言もしません。
なのでそれ以上の推量はご遠慮願いたいのですが、
第二章「セッティング・サン」には
思わず冷笑がこみ上げてしまいました。
その理由は本書をご確認していただくとして、
僕は現在の朝日新聞の姿も(あいも変らず)重なったんですよね。
例えば今日も、

海自、韓国観艦式参加せず=旭日旗問題で取りやめ―防衛省

とのニュースがありました。
で、社旗が旭日旗に似ている朝日新聞はこれについて
どう思っているんですかね?明日の社説が楽しみです。
因みに同社のソウル支局では社旗が掲揚されていないそうで(コチラ

戦中は軍に媚び、戦後はアメリカに媚び、
今も特定の人に媚びる恥知らずな太鼓持ち。

そんな朝日新聞をさして「セッティング・サン」は
言い得て妙ではないでしょうか。

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西加奈子『サラバ!(上)(中)(下)』読了

僕はこの世界に左足から登場した―。
圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。
その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために
帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。
幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は
「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。
そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。
メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。
日本人学校に通うことになった歩は、
ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。
内容(上巻の「BOOK」データベースより)

僕の人生。

本書は第152回(平成26年度下半期) 直木賞受賞作。
テヘラン生まれの帰国子女・圷歩の半生を描いており、
所謂「アイデンティティ」とは何か?と問いかけています。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、面白かったぁ!
もう少し言えばハッキリとした「時間泥棒」。
本作を仕事が忙しくなる月末に手にしなくて良かったです。

大ヒット作であり、多くの方が親しんだ作品だと思います。
なので、今回は個々の解説や感想も一切抜きにして……。

本作はタラレバ娘から借りました。
なので(?)先日会った時、
僕はまだ下巻に入ったばかりだったのだけれど、
これまでの印象・感想を中間報告のつもりでお話しました

・面白い。良い意味でイライラしている。
・特に歩君の母にイライラする。
・また逆の意味で歩君の父にもイライラする。

信じがたいほど愚かな援助を続ける歩君の父に、亡父を重ねました。
また人の金で快楽を貪る歩君の母に、僕を生んだ女を重ねました。
だからイライラしたし、

人のお金で楽しんで、それって本当に楽しいのか?

そうタラレバ娘にぶつけてしまいました。
けれど、彼女は何も言わずに僕の話しを聞いてくれたんですよね。
本作を最後まで読み終えた今は、赤面でしかありませんが……。

上記に特別な意味なんてないのだけれど、
結局、

自分の人生は、誰かの人生ではないの。
そして誰かの人生も、自分の人生ではない(本文より)

なんだと思います。
でもそれは哀しいことじゃないと思うんですよね。
実際、僕の(読書途中の)頓珍漢な感想も、
彼女は自分とは違う意見として尊重してくれました
(少なくとも僕はそう感じました)。
「アイデンティティ」って言うと、ちょっと古いし、
意識高い系(笑)と照れが入っちゃうけれど、
自分は人と違うから、他人を尊重できる。
そう言う概念でもあると僕は感じます。

「僕の人生」に自慢できるコトは何一つないけれど、
「僕の人生」は僕だけがコントロールしているコト。
それだけはちょっと誇りにしたいなと思いました。

蛇足で3冊組みの単行本(文庫本)について。
本作の持ち主・タラレバ娘は
『サラバ!』を上下巻の2冊組みだと勘違いしたそうです。
幸い途中で気がついたので、

上巻を読み終えたのに中巻がない(下巻はあるのに)

ぐらいの被害で済んだそうですが、
過去にはもっと悲惨な事件?もあったそうで。
それは佐藤愛子さんの「血脈」。
こちらも上中下の3冊組みではありますが、
彼女はなんと!全く気がつかずに上下と読み終えとの事。
曰く「いやに話が進むなぁ」
で、後日古本屋で中巻を見つけてビックリしたそうです。
(直ぐに買って読んだそうです)
いやぁ~、僕からしたらちょっとありえない失敗ですが、
これも彼女の個性です。勿論尊重いたします(笑)
念のため、皆様にも注意喚起を。

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尾崎紅葉『伽羅枕』読了

祇園に生まれ島原に売られ,
江戸の吉原に艶名をうたわれた一代女,佐太夫の物語.
彼女をとりまく花やかな幾多の挿話をつぎつぎとくりひろげながら,
あぶらの乗りきった作者の筆は十分に伸びきって,
色と金の世相・人情のうらおもてを活写している.
明治の遊廓文学の傑作のひとつであり,紅葉の最初の長篇小説である.
内容(出版社内容紹介より)

侠気より強か。

本書は「尾崎紅葉」の初期代表作の一つ。
京島原の遊女が江戸吉原の花魁まで登りつめる様子が描かれており、
不運を跳ね返す女の強かさに、男として少し寒気を覚えました。

侍と遊女の子。
その子もまた遊女になり、身請けされて江戸に行く。
しかし、生活苦からまたも身売りされて……。

主人公・佐太夫の一代記ではありますが、
長編と言うよりエピソードを時系列に並べた短編集と言った趣。
なので話の繋がりがやや雑にも感じられ、
章ごとの出だしでほぼ毎回唐突感を覚えました。
でもその分、話の筋道は把握しやすかったです。
しかし僕の手にした岩波書店『紅葉全集 第二巻』では、
全ての漢字にルビがあるものの、文体は昔のそのまま。
慣れ親しんだ現代語訳ではないので、割りと苦労しました。
この点も短い話の「積み重ね」と言った構成に
大いに助けられちゃいましたね。主に僕の気力という点で(笑)

斯様に僕は古典の知識は無いし、経験値も乏しく、
文体(筆)を語るコトなんか出来ません。
なので内容についてだけ一言の感想になってしまいますが、
僕は佐太夫が女性だからとかは関係なく、

「強か(したたか)」って、ちょっと恐いな

と感じてしまいました。
きっと彼女に女性ながらの「侠気」を感じるの方が
多いと思うのだけれど……。

本作は「生きるため」と言ったありがちなテーマではありますが、
「文明開化」と言う時代背景もあり、
女性の生き方について考えさせられるモノがありました
(著者の視点にもアイロニーみたいなモノがあった様な気がします)。
しかしこれは本当にあったお話なんですかね?
モノによると、ある老女の実話を基にした話とあったけれど、
にわかに信じがたい話も少なくなく……。
やはりピロー(枕)トークは話半分に聞くのがコツでしょうか。

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吉田篤弘『おやすみ、東京』読了

この街の夜は、誰もが主役です。
都会の夜の優しさと、祝福に満ちた長篇小説。
内容(「BOOK」データベースより)

夜の交差点。

本書は東京の深夜を舞台にした12の連作短編集。
日中の喧騒を離れた都会の夜に、
静かに活動する人々の営みが描かれています。

ある人を探しているタクシーの運転手
映画小道具の調達屋
電話相談のオペレータ
「使わなくなった電話」の回収者
奇妙な私立探偵
映画『11人のマリア』の女たち
下北沢の古道具屋
女4人ではじめた深夜食堂

物語は多分の偶然と、ちょっぴりの意思が次々と繋がり
やがて小さな奇跡を起こす……と言った「連鎖モノ」。
よくある手法ではありますが安心感がありました。
また1話20ページちょっとの掌編であり、
さらには悪意も不幸も過度な刺激も一切ないので、
ナイトキャップにも最適です。

出会い、交差して、離れていく。けれどまた……

そんな人と人との交差点を描いた本書は
最近のちょっと涼しい夜に、
熱すぎない心のホッカイロになるでしょう。

ここからは蛇足で、
本書は使われるアイテムがちょっとイイんですよね。
例えば

ハムエッグ定食
ピーナッツ・クラッシャー
2台で正しい時計
童話『車のいろは空のいろ』
外れなくなったプロミスリング etcetc.

でも僕はナンと言っても倉庫番のおじさんが作る
コークハイが印象に残りました。
レシピ(?)が重要なのでここでは割愛しますが、
作中のミツキじゃないけど、こんなの美味しいに決まってます!
僕は飲めないくせに喉がゴキュゴキュしちゃいました^^

またもう一つ蛇足で、タクシー運転手・松井の探していた女性って
一体誰だったんですかね?きっと作中外の人物だとは思うのだけれど、
僕は葬儀屋の娘だったら良いなと思いました(ちょっとボカシマス)。
で、その娘がびわ泥棒の弟と仲良くなったら素敵だと思いません?^^

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伊東潤『ライトマイファイア-light my fire-』読了

死者10人を出した簡易宿泊所放火事件。
警察官・寺島が入手したノートの「1970」「H・J」の意味とは―。
45年の歳月を経て、2つの事件が結びつく時、
過去に囚われた男たちの最後の戦いが始まる。
現代史の“闇”に迫る怒濤の公安小説。
内容(「BOOK」データベースより)

延焼はありません。

本書は歴史小説を得意とする著者久しぶりの現代小説。
現代の放火と過去の学生運動と言う2つの『火』、
そのリンクがスリリングに描かれています。

内容はバッサリ略で一言。悪くは無かったです。
ただし残念な気持ちの方が大きいのも正直なところ。
本書には様々なテーマや事件が織り込まれているけれど、
結果「広く浅く」で終わってしまった印象です。
ネタバレになるので控えますが、
あの昭和史に残る大事件は手垢がつきすぎてお腹一杯なんですよね。
折角、本書は事件の真相と、とある重要人物の設定に
大胆なフィクションを取り入れたのです。
長々とされる史実にそった事件の描写をごっそりカットし、
むしろフィクションの部分を膨らませるべきだったと感じました。
例えば、そのとある人物の恋愛にも
割りと多くのページを割かれていたのだし、
こちらに焦点を当てても良かったのではないでしょうか。
(僕はこの史実の部分でダラケました。もう他のメディアで
ウンザリするほど既知な事柄をなぞるだけだったので)

結局、本作は「放火事件」、「学生運動」、「恋愛」と
3つの火をつけはしましたが、殆ど類焼や延焼はなかったと思います。
それは決して悪くはないのだけれど、
野次馬(読者)は3つ小火(ボヤ)より1つの大火を見たいかも。

蛇足で本作のタイトルは……言わずもがなですよね。
以前にも『吹けよ風 呼べよ嵐
(ピンクフロイドの「One of These Days」から)があったし、
著者はかなりのロックファンと推察いたします(嬉しい!)
また本作でもボブディランの「Blowin' in the Wind」
(そう言えば『横浜1963』でも登場していました)や
ストーンズの「Sympathy for the Devil」が登場しますが、
ここはなんと言ってもタイトルの「Light My Fire」です。
因みにこちらは村上春樹さんもお気に入りの曲でもあり
コチラでも登場しましたね)、
京王線散策中のタラレバ娘も口ずさんでおりました(笑)
いやぁ~ロックって本当にいいな^^

おまけ:
light my fire
BGM: The Doors / Light My Fire

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プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫17歳) 泣き虫で臆病。温厚だけど父ちゃんには我儘な女王様。妹がちょっぴり苦手。職業:父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒4歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。お姉ちゃんともっと遊びたい。職業:父ちゃんの邪魔。
ユーザータグ

読書(955)
(585)
one_day(523)
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ロックンロール(192)
アルコール依存症(173)
タラレバ娘(111)
自転車(34)

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