近藤史恵『ときどき旅に出るカフェ』読了

平凡で、この先ドラマティックなことも起こらなさそうな日常。自分で購入した1LDKのリビングとソファで得られる幸福感だって憂鬱のベールがかかっている。そんな瑛子が近所で見つけたのは日当たりが良い一軒家のカフェ。店主はかつての同僚・円だった。旅先で出会ったおいしいものを店で出しているという。苺のスープ、ロシア風チーズケーキ、アルムドゥドラー。メニューにあるのは、どれも初めて見るものばかり。瑛子に降りかかる日常の小さな事件そして円の秘密も世界のスイーツがきっかけに少しずつほぐれていく―。
内容(「BOOK」データベースより)

ちょっぴりの塩分。

本書はカフェを舞台とした10の連作短編集。
日常に潜む小さな事件を、パイ生地で柔らかく包みこむ。
そんなパイナップルケーキの慎ましさがありました。

内容はバッサリ略で一言、とても良かったです。
それは事件にある酸味、塩味、苦味だけではなく、
解決にあった甘味でさえ、控え目な上品があったから。

物語はカフェが舞台であり、
いわゆる “カフェ飯” が多く扱われています。
そのどれもが

そんなの美味しいに決まっている(本文より)

読者(僕)はもう身もだえするしかないのですが、
特にスイーツのいちいちがイケマセン。

ココアを混ぜたベイクド・チーズケーキ(ロシア風ツップフクーヘン)
ココナッツミルクに小豆、フルーツの入ったかき氷(ベトナムのチェー)
生クリームとコンデンスミルク、クッキーを重ねた(ポルトガルのセラドゥーラ)

さらにはオーストリアのザッハトルテや、香港の凍檸茶(ドンレンチャ)等々、
読書中、僕は何度も訳の分からない衝動に駆られてしまったんですよね。
おかげでナイトキャップで読み始めたのに、
わざわざコンビニまでアイスを買いに行っちゃって。
もう一度歯を磨きなおす羽目になってしまいました。

閑話休題。

各話は短編と言うより掌編。
なので刺激的なモノはほとんど無く、割とアッサリ目。
けれど甘さ一辺倒ではない、一工夫がありました。
さらに最終盤で本作がアラカルトではなく、
実はコース料理だったと判明します(なんのこっちゃ)。
なので読後は存外な満足感。幸せな満腹感も味わえました。

以上、本書はダイエット中の方にはお勧めできない一冊。
しかし日常系ミステリィ・ファンには勿論、
カフェやその雰囲気がお好きな方には自信を持ってお勧めです。
初心者(僕)が言うのもおこがましいのだけれど、
ミステリィもスイーツも、甘いだけではダメなのかもしれませんね?
ちょっぴりの塩分がポイントなのかも。

おまけ:
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たまらずに買ってしまった、もう一つのスイーツ。

月餅はがっつり甘い(本文より)

とあって、がぜん興味が湧いちゃって(笑)
多分はじめて月餅を頂いのだけれど、あり得ない程に美味しかったです。
頭に「ガッツーーン」とくる甘さが堪りません。

注)玉子は入っていません。

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軽すぎる

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いくらなんでも軽すぎる。
もっともっと食べて欲しい。

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乙川優三郎 『露の玉垣』読了

度重なる水害や飢饉に喘ぐ越後新発田藩。若き家老・溝口半兵衛は財政難に立ち向かう一方で、二百年に及ぶ家臣の記録を書きはじめる。後に世臣譜と題される列伝は細緻を極めて、故人の人間像にまで及ぶ。そこにあるのは身分を越えた貧苦との闘いであり、武家の葛藤であり、女たちの悲哀であり、希望である。
内容(「BOOK」データベースより)

露と消え。

本書は越後新発田藩を舞台とした8つの連作短編集。
家老・溝口半兵衛が記した『世臣譜』をもとにしており、
フィクションとは言え厳格な説得力みたいなモノがありました。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、息をのむほどに良かったです。
それはたとえ歴史に名を残す英雄ではなくとも、精一杯に生きた。
そんな人々の姿に胸を打たれたから。

正直、『世臣譜』と言う記録がベースにあるので、
小説としては起伏に乏しく、また魅力にあふれた人物も少ない。
でもそんな悪く言えば利己的。
良く言えば人間味溢れる人物ばかりだからこそ、
彼等の困窮や苦難がこの身に迫ったんですよね。
僕も利己的な人間だから、度重なる災害や先の見えない貧困を前に、
清廉潔白でいられる筈がないから。

どの話も良いのですが、印象に残った一つだけを簡単にご紹介。
それは『宿敵』の一遍であり、
夫の実弟が妻の実弟を斬る傷害事件が描かれています。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は怒りが込み上げてきて仕方がありませんでした。
100歩譲って事件の背景も、コトの顛末も置くとします。
けれど愛した人も悼めないなら、そんな体面や世間体なんて

捨てちまえ!!

そう感じました。

僕は世間擦れした老人であり、青臭い子供ではありません。
なので良い悪いではなく、体面や世間体の有効性を知っています。
だからきっと僕も助左衛門や年(とし)と同じ態度になると思うのだけれど、
でもだからこそ彼等の行き場のない怒りや悲しみ。
身を割かれるような無念を、僕なりに理解できた様な気がしました。

以上、本書には一生懸命に生き、
そして露と消えて行った多くの人たちの姿がありました。
冒険も活劇も恋愛もないのだけれど、何度も心を揺さぶった作品です。
どなた様にも自信を持ってお勧めです。

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いちごジャム

いつもは玉子とツナしか買わないランチパック。
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でもはじめていちごジャムを試したら案外に良くて。
コレ(↓)買っちゃった。

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タップリ。
のせればのせるほど美味しい。

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ピアス

失くしていたピアスを見つけた。

はじめて貰ったピアスの一つ。
たぶん人生で二番目に長い時間、
僕の左耳にあったピアスだ。

それを今年のはじめに失くしていた。
外出中のコトなので諦めていたのだけれど、
偶然が二つ重なって、昨日見つかった。

大げさに言えば奇跡だと思う。

去年末からずっと見放されている僕のツキ。
少しは上向きになったのか。
我ながら現金だけれど、久しぶりに贈り主の顔を思い出す。

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道尾秀介『いけない』読了

ラスト1ページが暴き出すもうひとつの“真相”をあなたは見抜けるか?
内容(「BOOK」データベースより)

図解に頼り過ぎてはいけない。

本書は『道尾秀介』の原点回帰とされる一冊。
ここで “原点” とは「読者への挑戦」だったと思いますが、
それは一定以上の成功を収めています。

内容はバッサリ略で一言、とても良かったです。
それは僕がトリック偏重のミステリィが嫌いじゃないから
(嘘です。むしろ大好物^^)
一方で、活字ファンとしては少し寂しくも感じました。

ここからは一言感想を。

『弓投げの崖を見てはいけない』
最後のページの図に「誰が死んだのか?」の回答がなされているコト。
この時点では全く気が付きませんでした。
また破片の罠は、流石に無理筋ではないでしょうか。

『その話を聞かせてはいけない』
前章と同様に最後の図(写真)に「落とした人物(犯人)」が写っているコト。
僕はこの時点では気が付きませんでした(笑)
また山内君から珂君への約束は、ある意味で脅迫と同義だと思います。

『絵の謎に気づいてはいけない』
ここで漸く、各章の最後の図で解答が示されているコトに気が付きました。
またこの章のトリック?は本書で一番だったけれど、
もう少し上手く 足せば(プラスすれば)バレなかったのでは?
(具体的には主軸?の棒を下に長くする)

『街の平和を信じてはいけない』
スッキリしないがほとんどだったけれど、最後の図に少しだけ救われました。
割とありがちではあるのだけれど。

以上、本書は最後の図が効果的に用いられているミステリィ。
小説としてはやや本道から外れるのかもしれないけれど、
僕はこの手のチャレンジを問答無用で応援したいと思います。
ただ一方で、“肝心” を図解だけで終わらせてしまうのは、
ちょっと寂しい気もしたんですよね(小声で)。
せっかく「読者への挑戦」と言う古き良き時代の本格ミステリィなのだから、
文章で驚かせて欲しかった気もします。

蛇足:
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初版、P177-10行目。
『昔に比べてデータが小さくなった…』の
”データ” は ”メディア” ではないでしょうか。
メディアは小さくなりましたが、データはむしろ大きくなっています。

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うっとり

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このギター、格好良いねぇ~。

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島崎藤村『桜の実の熟する時』読了

明治20年代に高輪台の学舎に学んでいた主人公岸本捨吉は、年上の繁子との交際に破れ、新しい生活を求めて実社会へ出て行く。しかし、そこで遭遇した勝子との恋愛にも挫折した捨吉は西京への旅に出る――。
内容(出版社内容紹介より)

ただの個性。

本書は島崎藤村の自伝的青春小説。
主人公・捨吉(著者)の内面的葛藤が描かれており、
若者にある苦悩に共感する部分もありました。

内容はバッサリ略で一言、普通です。
正直言えばそれ未満なのだけれど、
読者(僕)の技量(知識)不足とこの本を手にしたタイミング。
それを考量して「普通なのかな?」となりました(個人的な感想です)。

捨吉は若者らしくウジウジしているしナルシスト。
当然、自己中心的だし、恩知らずで、恋多き青年です。
でも彼をして『若者』や『青春』のアイコンとするには、
ちょっとだけ違和感を覚えるんですよね。
彼の性質は『若者』と言うより、ただの『個性』ではないでしょうか?
例えば、理想に潰されるコトを『青春』とするなら、
僕なんか今でも青春の真っ最中になりますぞ?(笑)

とは言え、冒頭に著者の言葉で『年若き読者に勧めて見たい』とあります。
なるほど、オッサン(僕)が手にするにはタイミングが遅すぎたんだと思います。

また僕が当時(明治20年代)の世相や文化に暗く、
作品の表面的なトコロしか理解できなかったコトも付記します。
特に当時の文壇や、その交流についてはサッパリであり、
コアなファンか研究家向けの作品なのか?とも感じてしまいました。

以上、本書はある意味で典型的な青春小説。
けれどこれを「青春」と一括りにされてはかなわない。
僕はそう感じてしまいました。
著者の言う通り、本書は若者にこそお勧めです。

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罪悪感

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娘たちを起こしてしまうから。
トイレ等に立つたび覚える罪悪感。
だいたい毎日10回くらい。

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朝井リョウ『スペードの3』読了

ミュージカル女優のファンクラブまとめ役という地位にしがみついている美知代。地味で冴えないむつ美。かつての栄光は見る影もない女優のつかさ。待ってたって、「革命」なんて起きないから。私の人生を動かしてくれるのは、誰?
内容(「BOOK」データベースより)

ネバ・ギブ・アップ。

本書はミュージカル女優を中心とした三つの連作短編集。
配られた手札がパッとしなくても、それでも戦うしかない。
そんな人達のせつなさとひたむきが 3:1 でありました。

内容はバッサリ略で一言、とても良かったです。
それは厳しい現実と、どうしようもない劣等感に打ちのめされても、
ギリギリの……、本当にギリギリのトコロで勝負を諦めない。
人生を捨てない。そんな彼等に共感を覚えたから。

ここからは一言感想を。

『スペードの3』
きっと美知代みたいな良い意味で率先的、
そうでない意味で目立ちたがり屋な学級委員長は少なくない。
けれど彼女たちはだって悩みはあるし、
誰にも言えず(言わず)独りで戦っているトコロはあると思います。
善悪や好悪を別として、彼女が「戦っている」コトには無条件で寄り添いたい。
そう感じました。

『ハートの2』
前章があったので少し安心して読めました。
なのでここでは主人公・アキよりも、
友人・志津香や弟・修輔の今後の方が気になりました。
特に修輔。彼も辛いと思うのだけれど明日からは戦って欲しい。
友人が一人もいなくたって、決して下を向かない。
それだって君の勝利だと、オッサン(僕)は思いますよ?

『ダイヤのエース』
嘘の一つや二つ。別に良いじゃありませんか。
それが女優・つかさの望まない戦い方(と言うか武器)だったとしても、
少なくとも自分を責める必要はないと思います。
勿論、嘘がバレた時のリスクはあるけれど、
勝負に勝ち負け(リスク)は付き物ですよね?
それ以上でもそれ以下でもないし、勝負はしないよりはした方が良い。

以上、本書には人生をひっくり返す『逆転の切り札』。
それさえ配られなかった人々の姿が描かれていました。
それを乱暴にまとめれば、

それでもやるっきゃない

になるのかな?
だからこそ彼女たちの弱者の闘い方(=ネバ・ギブ・アップ)みたいなモノに、
多くあった暗い部分も含め、強い共感を覚えました。
上手く言えないのだけれど、
今を耐えている(踏ん張っている)人に本書を手にして欲しい。
同じ境遇の一人として、そんな風に感じました。

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プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫享年23) 臆病で泣き虫。けれど誰よりも強くて優しい子。僕の宝物。職業:これからもずっと父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒9歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。いまもお姉ちゃんを探しちゃう。職業:父ちゃんの邪魔。
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