坂上泉『インビジブル』読了

昭和29年、大阪城付近で政治家秘書が頭を麻袋で覆われた刺殺体となって見つかる。大阪市警視庁が騒然とするなか、若手の新城は初めての殺人事件捜査に意気込むが、上層部の思惑により国警から派遣された警察官僚の守屋と組みはめに。帝大卒のエリートなのに聞き込みもできない守屋に、中卒叩き上げの新城は厄介者を押し付けられたと苛立ちを募らせるが―。はぐれ者バディVS猟奇殺人犯、戦後大阪の「闇」を圧倒的リアリティで描き切る傑作長篇。
内容(「BOOK」データベースより)

見てはイケマセン。

本書は第164回(2020年下半期)直木賞候補作。
戦後混乱期の大阪を舞台に、
連続猟奇殺人事件を追う二人の刑事の姿がありました。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、非常に面白かったです。
それはあの時代特有(と思われる)混乱と混沌。
そして “生きる” を前に、倫理なんかヘッタクレもない……。
そんな様子が熱く伝わってきたから。

また警察にも(組織的な)混乱があったと言うコト。
戦後の僅かな期間ではあるけれど、
自治体警察と国家地方警察が混在していた等、
知らなかった話題も少なくなかったです。
こんなトコロ(治安を司る機関)でさえ混乱はあったんですからね。

国が変わると言うコト。ルールが変わると言うコト。
御幣を恐れずに言えば、戦争に負けると言うコト。

上手く言えないのだけれど、
あの時代を生きた人達の艱難辛苦を想います。

また主人公の二人。
特攻隊帰りの国警のエリートと、中卒の大阪市警視庁の新人。
このコンビも熱く、したたかで、粘り強い姿が印象的。
中でも、とある人物の治療(及び逮捕の判断)を巡り、
互いに(ようやく)胸襟を開く場面は、
思わず僕の胸も、おまけに目頭も熱くなってしまいました。

何の為に “立つ” のか。

ルールも倫理も混沌としたアノ時代だからこそ、
己に課すルールを見失わない。
そんな彼等が僕には眩しく見えました。

タイトルの『インビジブル』はやや判りにくいとは思うのだけれど、
昭和生まれの僕にも微かに記憶がありました。
それは子供の頃、大人達に言われた

あの人達を見てはイケマセン。

けれどいま思い返してみても、
こんな発言をした当時の大人達が悪いのか。
そもそも見てはイケないとされた人達が悪いのか。
僕には一生判りそうにもありません。

以上、本書は警察小説と言うより、戦後の混乱を描いた作品。
正直、ミステリィとしては少々物足りないけれど、
どなた様にも自信を持ってお勧めです。

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日常

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垣根涼介『サウダージ』読了

故郷を捨て、過去を消し、ひたすら悪事を働いてきた日系ブラジル人の高木耕一は、コロンビア人の出稼ぎ売春婦DDと出逢う。気分屋でアタマが悪く、金に汚い女。だが耕一はどうしようもなくDDに惹かれ、引き摺られていく。DDのために大金を獲ようと、耕一はかつて自分を捨てた仲間―裏金強奪のプロである柿沢に接触する。
内容(「BOOK」データベースより)

呪い。

本書はヒートアイランドシリーズの第三弾。
どこの世界でも排斥されてしまう日系ブラジル人・耕一の姿がありました。

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
それはステータスを “エンタメ” に全振りした潔さ。
あっけらかんとしたラテン系のクライム・ノベルだったから。
当然(?)エロも、グロもてんこ盛りなので読者を選ぶとは思うのだけれど、
存外に明るい(?)筆なので、嫌悪感みたいなモノはなかったです。

移民先のブラジルで疎まれ
帰国した日本で虐げられ
戸籍を乗っ取って生まれ変わる

作品の冒頭、『サウダージ』とは「二度と会えぬ人や土地への思募」
と記されており、本作の主人公・耕一の心情を顕していたと思います。
僕は読了後、彼の心情を鑑みて哀切な気持ちにもなったのですが、
同時に『サウダージ』はある種の “呪い” でもある。そう感じたんですよね。

いつまで経っても消せぬ思慕があるから
いつまで経っても自分に自信を持てず
いつまで経っても恨みを消せない

生まれ変わってもなお、耕一の中には『サウダージ』が燻り続け、
だからこそ彼は強くもなったけれど、歪んでしまいました……。
でもだからと言って

過去に囚われるな!

なんて、口が裂けても言いませんよ?
僕なんか過去に囚われて誰よりも間違いだらけの人生だし。
なのでエラソーなコトは何一つ言えないのだけれど、
人は生きているだけでシンドイな、って。そう感じました。

正直、ラストは失速してしまったけれど、
もう一人の主人公・アキの恋の行方は良かったです。
コチラも哀しい結末だったけれど、未来を、光を感じる痛みです。
耕一の恋や痛みとの対比もあり、どこか救われた気分になりました。

以上、本書は裏金強盗に賭けるプロと日系ブラジル人を描いた一冊。
ハッキリと男性向けだとは思うのだけれど、エンタメに全振りした作品です。
男女を問わず、多くの方にお勧めです。

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日常

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武田花 『猫光線』読了

ぴかり、と世界を照らし出す猫満載。最新フォトエッセイ集。カラー写真も多数収録。
内容(「BOOK」データベースより)

他人(猫)。

本書は猫を中心としたフォト・エッセィ集。
ノスタルジィを想起する写真には、
判っちゃいるけど感慨みたいなモノがありました。

内容はバッサリ略で一言、良かったと思います。
個人的には狙いすぎている様にも感じたのだけれど、
猫の “可愛いだけではない” 姿には共感を覚えました。
しかし……。

これは大きな声では言えないのだけれど、
『猫タン LOVE』をあまり感じられなかったかも。

ほとんどを占めるふてぶてしい猫タン達は、それだってキュートの一言。
汚れてゴワゴワしていたって、美人を隠すことは出来ません。
けれど、なんて言うのかな?
僕は写真の素人なので、全く自信がないのだけれど、
撮影者の「いじわる」みたいなモノも感じちゃったんですよね。
意図的ではあると思うのだけれど、目的が判りませんでした。

またエッセィも(?)割とシニカルであり、
ユーモアとしてはいささか刺激的だった様に思います。
うーん、癒しを求めて本書を手にしたんですけどね。
まさか猫タン本で、ちょっとザラザラした気分になるなんて……。

以上、本書は猫タンをモチーフに日常?を切り取った一冊。
個人的にはエッセィと写真に乖離を感じたのだけれど、
猫タンの写真はそれなりに訴えるモノがありました。
僅か 100ページちょっとだし、
文字をすべて拾っても 10分もあれば読み終えてしまいます。
どなた様にもお気軽にどうぞ。

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わさビーフ

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僕の性質は間違いなく保守的。
たとえばポテチならうすしおだし、のり塩。たまに冒険したってコンソメだ。
けれど、このわさビーフだけは、なんかツボに入った。
50回に1回くらいなら、また食べても良い。

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シルエット・クイズ

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絲山秋子『ニート』読了

もちろん人に対してどうでもいいなんて言うのはとんでもなく失礼なことだけれど、どうでもいいって言ったら、この世の中本当に何もかもどうでもいいわけで、それがキミの思想そのものでもあった(「ニート」より)。現代人の孤独と寂寥、人間関係の揺らぎを描き出す傑作短篇集。
内容(「BOOK」データベースより)

結局、本人次第。

本書は『絲山秋子』の初期作品を五つまとめた短編集。
倒錯した愛にあって、どうしようもない感情みたいなモノがありました。

ここからは一言感想を。

『ニート』
ニート(♂)にお金を貸した「私(♀)」
もし僕が私(♀)の父親なら、彼女の行為に賛成出来るのかな?
きっと「君の好きにすれば良い」って、心から言えると思います。

『ベルエポック』
哀しい記憶を置いて、街を去る友人。
彼女の携帯番号は変わるだろうし、もう二度と会えないと思います。
でもそれで良いのでは。

『2+1』
『ニート』の続き。あれからさらにニート(♂)の面倒をみる「私(♀)」
もし僕が私(♀)の父親なら、彼女の行為に賛成出来るのかな?
きっと「好きになっちゃったら仕方がない」って、小さく諦めると思います。

『へたれ』
「へたれ」とは、慎重より怠惰に近い臆病のコトかも。
ただし、叔母に傾く愛なら、このまま怠惰に流された方が良い。
「へたれ」って、年齢を重ねて得られるスキルでもあります。

『愛なんていらねー』
スカトロを全く理解できないのだけれど、逆なのでは?って感じました。
愛がないからスカトロなのではなく、
愛があるから相手の汚物さえ大丈夫。それがスカトロなのかな?って。

以上、本書は異端?な愛を集めた一冊。
ほとんどが共感できないし、理解も出来ないのだけれど、
彼等が不幸だとは(僕は)全く思わない。
結局、どんな愛だって本人次第である。そう感じました。
本書はうしろ指……とまで行かずとも、
あまり祝福されない恋愛を経験されている(いた)方にお勧めです。

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真っ白

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いつの間にか、富士山が真っ白。

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入間人間『安達としまむら(10)』読了

私は明日、この家を出ていく。しまむらと一緒に暮らすために。私もしまむらも、大人になっていた。「あーだち」跳ね起きる。「おぉでっ」派手に後退した私を見て、しまむらが目を丸くした。両手をおどけるように上げる。下りて目にかかる髪を払いながら、左右を見回して、ああそうだと理解していく。マンションに移り住んだのだった。二人きりなのか、これからずっと。「よ、よろしくお願いします」「こっちもいっぱいお願いしちゃうので、覚悟しといてね」私の世界はしまむらですべてが出来上がっていて、これからの未来になにも不安などないのだ。
内容紹介(「BOOK」データベースより)

幸せになれ。

本書は『安達としまむら』の第10巻(1~8, 9)。
今回は2回目のバレンタインデーと、未来の新生活を中心に、
彼女達のまだまだ初々しい様子がありました。
佳作。

ここからは一言感想を。

『Fantasy Sister』
おっぱい。ぼくもしゃす。しゃすしゃす!

『Astray from the Sentiment』
本書の一番。
巣立つ安達と母の絆。二度と会えなくても構いません。
君(安達)は幸せになりなさい。

『Be Your Self』
安達母は(子育てを)間違っていない。
こればっかりは、しまむら母に 100% 賛成です。

『The Sakura's Ark』
もし樽見にイイねボタンが付いているなら、僕は100回押します。
彼女の傷心に、その頑張りに。寄り添う気持ちを伝えたい。

『Dream of Two』
日野と永藤の友情(愛情?)。10年では全然足りないのでは。

『The Moon Cradle』
心の穴ぼこ。寂しさを埋めるのは結構難しい。
それでも「人の心はとってもしなやかだから(by しまむら)」に、
温かい気持ちになれました。

『Stay of Hope』
未来に白髪が生えても、生えなくても、どうでも良いんですよね。
この瞬間の幸せを前に、約束なんて意味はない。

『Cherry Blossoms for the Two of Us』
どうです?
手を差し出されるのも良いけれど、差し伸ばすのだって悪くないでしょう?
恥ずかしくても、その勇気が、真っすぐな想いが。愛する人に伝わります。

『Hear-t』
うーん、こそばゆい(笑)
重なったのは心音だけではないですよね?(きゃっ)

以上、本書はあとがきに

8巻で最終話を迎えているので、
9巻以降は長い長い後日談みたいなものです(本文より)

とあるように、
(前巻に引き続き)エバー・アフターに相当する作品です。
でも僕はハラハラ・ドキドキの本編も良いのだけれど、
安心して読める外伝?が結構好きなんですよね。
勿論、本作にもいくつかの別れや痛みがあって、
ただニヤニヤするだけでは済みません。
それでも未来(結末)を知っている読者の特権(?)で、
ヤチーの様に無邪気に楽しむことが出来ました。
ファンの方には問答無用でお勧めです。

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プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫享年23) 臆病で泣き虫。けれど誰よりも強くて優しい子。僕の宝物。職業:これからもずっと父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒9歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。いまもお姉ちゃんを探しちゃう。職業:父ちゃんの邪魔。
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