フェルディナント・フォン・シーラッハ/著 酒寄進一/訳『コリーニ事件』読了

新米弁護士のライネンは、ある殺人犯の国選弁護人になった。だが、その男に殺されたのはライネンの親友の祖父だったと判明する。知らずに引き受けたとはいえ、自分の祖父同然に思っていた人を殺した男を弁護しなければならない――。苦悩するライネンと、被害者遺族の依頼で裁判に臨む辣腕弁護士マッティンガーが法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。そこで明かされた事件の驚くべき背景とは。
内容(出版社内容紹介より)

消えないし、消せない。

本書はドイツを舞台とした正統派の法廷劇。
倫理でも理屈でも抑えられない哀しい人間の性(さが)がありました。

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
それは平時の法と、戦争時の法の狭間。
さらに国際法が生んでしまった個人の(一族の)哀しみに、
やるせない気持ちになったから。

元自動車組立工で定年退職したばかりのイタリア移民・コリーニ。
大手企業の元経営者にして人望家のハンス・マイヤー。

物語はハンスを殺害したコリーニの裁判を中心として進行します。
もう少し言えば、犯行は認め、しかし動機については口を割らないコリーニに、
厳しい判決が出るコトは不可避な状況だったのですが……。

ここからは話が二転三転する……と言うような
ミステリィでもサスペンスでもなかったと(個人的には)思います。
しかし僅か200ページ弱に、鮮やかな一発逆転を盛り込み、
人間の業も悲哀も描きながら、綺麗に纏められている。
超大作のそれとは違うけれど、ページ数以上の満足感を得られました。

本作は第二次大戦中のドイツ(とイタリア間の)戦争犯罪が根底にありました。
けれど、連合国が日本の戦争犯罪を裁いた様に、
平時の法と、戦争時の法はルールが違うし、一方的である(公平ではない)。
それは時代や国が変わっても、同じなのだと感じました。
またハンスの殺害は決して許されない罪ではあるけれど、
コリーニが長年抱え、しかし決して消えない、消せない憎しみや怒り。
そこに極東国際軍事裁判で苦渋を舐めた日本人の息子の一人として、
僕はコリーニに僅かなりともシンパシーも感じてしまいました。

ラストは救済とこれからも続くであろう哀しみが余韻となっていました。

以上、本書は正統派の法廷劇。
人間が良く描かれており(エラソーにスミマセン)、
叙情的な文章(訳)にも訴えるモノがありました(控えめに言ってグッときました)。
存外に気軽に読めるので、どなた様にもお勧めしたい一冊です。

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日常

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有栖川有栖『怪しい店』読了

推理作家・有栖川有栖は、盟友の犯罪学者・火村英生を、敬意を持ってこう呼ぶ。「臨床犯罪学者」と。骨董品店“骨董 あわしま”で、店主の左衛門が殺された。生前の左衛門を惑わせた「変な物」とは…(「古物の魔」)。ほか、美しい海に臨む理髪店のそばで火村が見かけた、列車に向けハンカチを振る美女など、美しくも恐ろしい「お店」を巡る謎を、火村と有栖の名コンビが解き明かす。
内容(「BOOK」データベースより)

怪しい推理。

本書は作家アリスシリーズの五つの短編集。
おなじみのメンバによって、テンポ良く事件が解決されています。

ここからは一言感想を。

『古物の魔』
骨董品屋のお話。
事件にタイトルをつけるのなら、火村は『古物商の矜持と満足』。
有栖川は『古物商の歪んだ矜持と満足』としました。
僕なら『古物商の哀しい矜持と満足』にしたいかな。

『燈火堂の奇禍』
古書店のお話。
雰囲気はあるし、実際が目に浮かぶようなご主人とお店。
でも多くのお客と同じく、僕もこのお店で買い物はしないなぁ。
古本って一期一会な気がするから。

『ショーウィンドウを砕く』
芸能プロダクションのお話。
社長・夕狩の述懐「自分の物欲を律することに慣れすぎて、
欲しいものがなくなっていた」に僕自身を重ねてしまいました。
だからこそ夕狩が愛情に執着した理由も判るような気がします。

『潮騒理髪店』
理髪店のお話。
事件?は兎も角、潮騒理髪店なら一度髭剃りを試してみたいな。
僕は肌が弱いので、理髪店の髭剃りが大の苦手です。
血が出る時もあるし、いつも剃り残しがあるし。

『怪しい店』
お客の話を聞く “だけ” の店の話。
お客は話を聞いてもらうだけで、有益なアドバイスも、
意見さえも貰えないけれど、きっと需要はあると(僕は)思いました。
ただ断酒会ではないけれど、言いっぱなし、聞きっぱなし。
他言無用が絶対のルールでしょう。

以上、本書は日常の謎から殺人事件まで扱った短編集。
どれも小気味良くまとめられており、一定以上の満足が得られました。
ただ、今回の火村の推理はいささか手前勝手が過ぎると言うか、
論理的に甘すぎる印象を受けました。
お店も怪しいけれど、推理の方がもっと怪しかったかも(小声で)

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コロナと入院と通院

このご時世、色々ある。
今回、手術が決まって、でも手術日が決まるまでおよそ一か月。
(言いたくないけれど、たらい回しになりそうだった)。
でも、この間、待たされて感じたのは僕の不満なんかより、
医療従事者の疲労と困憊と献身だ。

ルールは必要だ。

けれど、コロナの最前線で戦っている皆様には
心からお礼を申し上げたいし、感謝しかない。
昨日の(手術後の)通院も、ルールでがんじがらめだったけれど、
不満を感じるトコロは全くなかったです
(そりゃあ、待ち時間があったのでイライラしたけれど)

ただ、皆様が頑張ってくれるからこそ、
僕達一般?の病人は(逆説的かもしれないけれど)
大切に扱われている。そう感じるコトも出来ました。

彼等が頑張っているのを知ったらもう信頼するしかないですよね。
例えば、眦をあげて僕を叱る看護師さん(娘達のコトで愚痴をこぼした)。
ごめんなさい。でも心よりありがとう。貴方の気持ちは受け取りました。
ただ、結果がイマイチだったので、
僕はもう少し(この病院に)お世話になってしまいそうです。
僕なんかがお世話になってしまい本当にスミマセン。

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玄関の鍵が折れた。

Subject の通り。
因みに折れた鍵の先っぽ?はシリンダの中です。
あ”~。

#
話せば長くなるので事件?の概略だけ。
休日、自転車でサイクリングロードを走って帰宅。
で、玄関の鍵を回したらポッキリ折れました(ロック状態のママ)。
自転車で走るので財布も無く(落とすと面倒)、
スマホも無い(振動でガラケーを壊した経験がアリ)。
なので、業者を呼ぶ?にも手段がなく、
お隣さんに訳を話して電話を借りるしかないのか?
と茫然自失となりました。

幸い、いくつか自転車用の工具があり(走っている時の応急処置用)、
色々試してみたら、鍵は回りました。
おかげで家の中には入れたけれど、
折れた鍵(の残り)がシリンダに残ったママ(もう使えない)。
ただ玄関はダブルロックなので、
当面は問題ないのですが(もう一つの方は普通に使える)
それもなんだかなぁ、です。
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しかし、鍵が折れるって。
こんなコトあるの?

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桜庭一樹『少女七竃と七人の可愛そうな大人』読了

「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竃は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だが、可愛そうな大人たちは彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈―誰もが七竃に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竃の間柄にも変化が―雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。
内容(「BOOK」データベースより)

それぞれの地で。

本書は怖ろしく麗人に育った川村七竃(17歳)を中心とした物語。
歪な人間関係にあっても、健全に自立する少女の姿がありました。

内容はバッサリ略で一言、非常に面白かったです。
それは小さなコミュニティにある息苦しさと、
そこに囚われて動けない自身に対する
破壊衝動みたいなモノがあったから。

七回、竈で焼かないと炭にならない、しかし出来た炭は上質となる七竈。
真っ赤な実で鳥たちを誘うも、美しいまま朽ちていく七竈の実。
そして
倫理もしがらみも噛みしめた上で、選んだそれぞれの道。

正直、七竃(♀)と顔がそっくりな雪風(♂)を中心とした前半は
ゾワゾワとした愉悦がありました。きっとコレが耽美なんだと思います。
一方で、後半は割とありがちな青春物語になっていました。
勿論、後半も決して悪くはなく、個人的にはとても良かったのだけれど、
本作に限っては、僕は前半を支持したいかな。
どちらにせよ、連作短編(になるのかな?)として完成度も高く、
特に二話の『犬です』、三話の『朝は戦場』にはミステリィも顔負けな
仕掛けや驚きがありました。

またラストも良かったです。

鳥たちに喰われる熟した実になるコトを選んだ七竈。
いろいろ背負う昭和な男になるコトを選んだ雪風。

そのどちらが正解と言うのではなく、
僕は彼等が自分で自分の道を選んだコト。
心の底から良かったと思いました。応援したいと思いました。
二人ならきっと大丈夫。

君たちは、それぞれが立った地で、咲きなさい。

ここからは蛇足です。
作中、七竈と雪風は、それぞれの母と父を赦さないことを約束します。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は子供達の健全な自立と受け止めました。嬉しくさえ思いました。
ちょっと矛盾するのだけれど、

親を憎み、子供が自立するコトだって、親孝行。

僕はそう思います。

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日常

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喉がぐるるん、ぐるるん。

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湊かなえ『湊かなえのことば結び』読了

明日への元気がわいてくる楽しく優しいことばたち。家族、友人、猫、淡路の美味しい食、旅の思い出ーなど湊さんの愛するものやリスナーとの温かな交流、小説講座、おすすめの本など、著者の魅力が満載の贅沢な一冊。
内容(「BOOK」データベースより)

肝心なモノが載ってない。

本書はFM大阪で放送された『湊かなえのことば結び』をまとめた一冊。
リスナーと共に番組を作られている様子と、
著者の意外でもない一面の数々が披露されていました。

内容はバッサリ略で一言、うーん。
ラジオ番組のトーク部分は活字になった本書でも面白かったのですが、
それ以外の企画(主にお題を出してリスナーに投稿・回答を得るモノ)は、
著作権の関係かな?肝心の投稿者の作品が載せられていません
(簡単な概要だけはあります)

当時のラジオではキチンとそれらも朗読?披露されていたのかは知りませんが、
リスナーの作品を拝見出来ない本書においては、
いくら「あーだこーだ」論評されても、一向に響かないし、判らない。
これは著者の責任ではないと思うのだけれど、
ラジオから一冊の本にまとめるにあたって、配慮が欠けていると感じました。
僕も趣味で小説を書いているので、
これらの各種小説投稿コーナーには興味津々だったのだけれど……
(繰り返しますが肝心の作品が載っていません。これを論評されても。ねぇ)

因みに、従前で「面白かった」としたトーク部分も、
最初から活字であるエッセィに比べれば、その完成度は足元にも及びません。
一言で言えば、ダラダラ。
磨かれぬまま開陳された “ネタ” の多くに、少し残念な気持ちにもなりました。

以上、本書は著者がパーソナリティを務めたラジオ番組をまとめた一冊。
コレクターズアイテム以上はないと思いますが、熱烈ファンの方はどうぞ。

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日常

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喉がぐるるん、ぐるるん。

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新川帆立『競争の番人 内偵の王子』読了

謎の脅迫状に巨大カルテル、恋敵も現れて…この業界も私もヤバい。話題沸騰の「公取委」ミステリー。
内容(「BOOK」データベースより)

上等。

本書はヒット作『競争の番人』の続編。
今回は呉服業界にはびこる悪しき旧習と、地域に根強い暴力団の影。
それらに立ち向かう凸凹バディ + 王子(?)の姿がありました。

内容はバッサリ略で一言、今回もおもしろかったぁ!
それは「働くコト」の意味を、割と多くの視点で描かれていたから。

優秀だけれど、無口で無愛想。おまけに不器用な小勝負。
優秀で口上手、人たらし。おまけに軽薄モテ男な常盤。
そして、そんな彼等に心配?心を寄せられる
猪突猛進で、頑張り屋のお人よし。けれどいつも損してばかりの小熊。

本作には多くの公正取引法違反に、二つの刑事事件がありました。
それらは地方の、業界の悪しき旧習が複雑に絡み合い、
それゆえ強固な連帯となって、なかなか突破口がみつかりません。
おまけにコチラ(公取委)も色々なしがらみでがんじがらめであり……。

この試練に小熊は「働くコト」の意味がわからなくなってしまいます。
もう少し言えば本局から地方事務所に移動となり、
本局の下働きしか出来ない現状に、達成感を見失ってしまいました。
けれど彼女は、ある人物が号泣する姿を見て、こう決意するんですよね。
部品のように使い捨てられる感覚はある。けれど

社会の歯車、上等である(本文より)

この一文に、僕はなんとも言えない感動が込み上げてしまいました。

ラストはほとんど大団円を迎える中、
たった一つ取り残された事件の真相解明を切っ掛けに、
怒涛の大どんでん返しが(次々と!)始まります。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
個人的には本シリーズ(?)は次作もある。そんな嬉しい予感がありました。
なんせメンバーも一人増えたコトですしね(←僕から皆様への罠^^)

以上、本書は公取委を舞台とした、いわゆるお仕事小説。
しかし「働くコト」の意味が、他のお仕事小説とは一線を画していました。
どなた様にも自信を持ってお勧めです。

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プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫享年23) 臆病で泣き虫。けれど誰よりも強くて優しい子。僕の宝物。職業:これからもずっと父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒9歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。いまもお姉ちゃんを探しちゃう。職業:父ちゃんの邪魔。
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