万城目学『悟浄出立』読了

俺はもう、誰かの脇役ではない。深化したマキメワールド、開幕!
砂漠の中、悟浄は隊列の一番後ろを歩いていた。
どうして俺はいつも、他の奴らの活躍を横目で見ているだけなんだ?
でもある出来事をきっかけに、彼の心がほんの少し動き始める――。
内容(「BOOK」データベースより抜粋)

脇役でも。

本書は中国の古典に現れる脇役たちに焦点を当て短編集。
日本人にも比較的馴染みのある題材を扱っており、
どれも興味をそそります。
一編あたり四十ページ弱と非常に短く、簡略されているので
原典を知らないと面白さが減じてしまうと思いますが、
ラストのカタルシスは鮮烈なモノがありました。

『西遊記』の沙悟浄、『三国志』の趙雲、『史記』の虞美人、
『刺客列伝』荊軻の同僚、そして司馬遷の娘。

みな脇役ではあるけれど、いや脇役であるからこその存在意義。
レゾンデートル……なんて大袈裟じゃなくて、
単純に彼等が愛おしく感じてしまうんですよね、僕も脇役だから。
だから、たとえ線路の下の敷石だとしても、
主役を支えているのは「この僕だ!」って、
仲間達には叫んで欲しい。僕には絶対言えないから(笑)

蛇足で僕のお勧めは「虞姫寂静」。
垓下に追い詰められた項羽は、愛する虞美人から
簪、耳飾り、そして「虞」と言う名前を取り上げます。
その理由を知った彼女は最後の舞に意地を賭けるのですが……。
この一編が四面楚歌の真相?だとしたら、
項羽は大馬鹿野郎だし、地獄に落ちてしまえば良いと思います。
けれど、項羽の愚かな愛を、二人の虞と言う女性への愛を
僕は共感せずにはいられません。
たとえ愚かでも、その愛は真(まこと)であったと思うのです。

大王だって、世紀の美女だって儘ならないのですからね、
愛には主役も脇役もありません。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ FC2Blog Ranking
 励みにしますので、宜しければクリックをお願いします。
テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

Tag:読書  Trackback:1 comment:2 

Comment

藍色 URL
#- 2018.10.08 Mon15:06
端正かつ冷静な筆致で引き込まれました。
それぞれの短編が、今まで読んだことがないみたいな内容で興味深かったです。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
yuki URL|Re: タイトルなし
#- 2018.10.09 Tue04:26
藍色さん、こんにちは。

本書はサイドストーリー?それともパロディ?
近いのは所謂、同人誌だと思いますが、
それはそれでとても面白かったです。
妙に膨らませず、短編(集)にしたのも良かったです。

トラックバックいたしました。
後ほどご確認をお願いします。
comment form
(編集・削除用):
管理者にだけ表示を許可

Trackback

Trackback

「悟浄出立」万城目学

俺はもう、誰かの脇役ではない。深化したマキメワールド、開幕! 砂漠の中、悟浄は隊列の一番後ろを歩いていた。どうして俺はいつも、他の奴らの活躍を横目で見ているだけなんだ? でもある出来事をきっかけに、彼の心がほんの少し動き始める――。西遊記の沙悟浄、三国志の趙雲、司馬遷に見向きもされないその娘。中国の古典に現れる脇役たちに焦点を当て、人生の見方まで変えてしまう連作集。 時代劇にも驚きまし... 粋な提案 - 2018.10.08 14:59

プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫18歳) 泣き虫で臆病。温厚だけど父ちゃんには我儘な女王様。妹がちょっぴり苦手。職業:父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒5歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。お姉ちゃんともっと遊びたい。職業:父ちゃんの邪魔。
月別アーカイブ
ユーザータグ

読書(1097)
(692)
one_day(590)
ex_girlfriend(341)
ロックンロール(214)
my_ex(211)
アルコール依存症(187)
タラレバ娘(131)
縦結びの人(41)
自転車(39)

検索フォーム
FC2カウンター