乙川優三郎『生きる』読了

苦境に人の心を支えるもの。
山本周五郎賞受賞作家が描く感動の時代小説三篇。
内容(「BOOK」データベースより)

懺悔と独りよがり。

本書は第一二七回直木賞を受賞した表題作と、
尊厳の為に娘を売った元郡奉行「安穏河原」、
出世の為に愛人の端女を捨てた「早梅記」
の三篇が収められています。
いずれも過去を振り返り、悲哀と諦念を描いていますが、
男の独善がチラつきます。

男は自業自得です。
しかも女を犠牲にしての現在であり、
その結末は女に比べれば恵まれています。
代わりに女が救われません。
最後はとって付けた ”救済” が試みられますが、
男に比べればオマケみたいなもの。
しかもこの ”救済” が女の為のモノなのか非常に疑問です。
僕には男の為の ”救済” としか感じられませんでした。

本書は直木賞に恥じない素晴らしい作品です。
けれど、井上荒野『切羽へ』を ”女性のロマンス” と断じたのとは逆に、
本書は ”男のエゴイズム” に思えます。
男性は兎も角、女性の中には鼻白む方もいらっしゃるのではないでしょうか。

蛇足で一番印象に残ったのは「早梅記」。
栄達後、隠居した男が日課の散歩帰り、
ある家の玄関先に梅の木をみつけるのですが……。
かつて愛した二人の女への、悔恨を描いたこの作品、
感想は上記に述べたモノが、そのまま当て嵌まります。
そして、彼は僕そのものなんですよね。女を

捨てた、酷い事をした
そして
今も不幸だろう

だなんて。
こんな独りよがりな懺悔は男の自己満足に過ぎません。
特に女を自分よりも ”不幸” だと決め付ける傲慢に
(自分の事でもありながら)吐き気がします。

けれど、それでも、恥を忍んで本音を言えば

女には幸せであって欲しい

そう願わずに入られません。
身の程をわきまえ、これ以上は控えますが、
”男のエゴイズム” に興味のある女性には、
本書をお勧めしたいと思います。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ FC2Blog Ranking
 励みにしますので、宜しければクリックをお願いします。
テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

Tag:読書  Trackback:0 comment:0 

Comment

comment form
(編集・削除用):
管理者にだけ表示を許可
プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫享年23) 臆病で泣き虫。けれど誰よりも強くて優しい子。僕の宝物。職業:これからもずっと父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒9歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。いまもお姉ちゃんを探しちゃう。職業:父ちゃんの邪魔。
月別アーカイブ
検索フォーム
FC2カウンター