村上春樹『ノルウェイの森(上)(下)』読了

暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に
着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの
『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は一九六九年、
もうすぐ二十歳になろうとする秋のできごとを思い出し、
激しく混乱し、動揺していた。
限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
内容(「BOOK」データベースより)

通過儀礼。

本書は『村上春樹』の長編小説。
モラトリアムの厳しさ(あるいは切なさ)を描いており、
青年たちの心模様に共感を覚えました。

内容はバッサリ略。
もはや説明不要だと思います。

僕はおよそ四半世紀振りに再読です。
実はあの頃、本作で「村上春樹」から距離を置いてしまいました。
共感どころか反発心しかなかったから。

例えば性の描写には嫌悪感を覚えたし、
彼等の愛のあり方が理解できなかった。
さらには多くの死に著者の「あざとさ」みたいなモノを
感じてしまったことを告白せねばなりません。

でも今回再読して、恥ずかしながら
言いようの無い感銘を受けてしまったんですよね。
彼等はとても誠実だったんだな、って。

語りたいことは多いのですが、
ここでは一つだけ。性行為について。
ワタナベはキズキの死後、「死」について以下の様に観取します。

死は生の対極としてではなく、
その一部として存在している。(本文より)

同様に性行為もある意味で「死」と同じことではないでしょうか。

性行為は純愛の対極としてではなく、
その一部として存在している。

性行為はあからさまにする必要は無いけれど、
恥ずべきものではないし、隠すモノでもない。
それは「愛する」と言う総体の大切な(とても大切な)一部である。
そんな風に感じました。

あの頃は反発してしまいました。
けれど僕も(ワタナベと同じく)モラトリアムと言う
通過儀礼を経て、そう感じられるようになったんだと思います。
また、この変節が良いとか悪いとかではなくて、
それが「生きる」ってことなのかも?って感じています。
僕たちはモラトリアムを生き残ったんですからね?
死者には申し訳ないけれど、変節(変化)は僕達生者の特権です。

蛇足で永沢について。
彼はスーパーエリートであり、同時に傲慢のアイコンの様な存在です。
なので彼の評価はきっと芳しくはないと思うのですが、僕は

友達にはなれない。けれどけっして嫌いではない。

今回再読してそう感じる様になりました。
因みにわりとヘヴィなハルキストのタラレバ娘も
永沢の人格には疑いを持っている様子。
ですが、彼女は彼の台詞が強く印象に残っているそうです。
それは

「自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」(本文より)

きっと彼女も永沢の事を嫌いではないんじゃないかな。
たとえ彼とは友達にはなれなくても。

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