村上春樹/安西水丸『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた』読了

アメリカのケンブリッジに住んだ
’93年から’95年にかけての滞在記。
ボストン・マラソンに向けて昴揚していく街の表情、
「猫の喜ぶビデオ」の驚くべき効果、
年末に車が盗まれて困り果てた話、
等々なごやか(?)なエピソードの中に、
追悼特集で報じられたニクソン元大統領の意外な一面や、
帰国後訪れた震災後の神戸の光景がキラリと光る。
水丸画伯と陽子夫人が絵と写真で参加した絵日記風エッセイ集。
内容(「BOOK」データベースより)

欠けない満月がないように

本書は「村上朝日堂」シリーズの第四弾
1,2,ランゲルハンス,3,くもざる,4,5
雑誌『SINRA』に連載された文章を
大幅に加筆修正してまとめたものです。
アメリカ滞在中の執筆であり、どこかカラッとした印象の一冊です。
(ボストンは寒くてジメっとしてそうだけれど^^)

人喰いクーガー
eat,nap,playの時計
マサヨシ君にコウタロー君

タイトルにある様に猫の話題が多かったです。
けれど著者と猫の関係は決して「猫可愛がり」のそれではなく、
むしろ異国で隣人と付き合うように「付かず離れず」。
この適度な距離感を健全だと思うと同時に、
実は人間に対しても同じスタンスであると気がつきました。
著者にとって適度な距離感とは、
相手を尊重する態度(の一つ)なんですよね。
それが人間に対しても猫に対しても変わらないところが、
「村上春樹」の美点だと思います。

あとがきに本書は『やがて哀しき外国語』と対をなし、
またそれに比べて肩の力を抜いたとありました。
なのでシリアス成分は低めではありますが、
リラックスした文章はヒーリング効果?に優れています。
脳が働かなくなっているとき、気分転換にお勧めです。

蛇足でムラカミ・ピーターの法則について。
それは『どうしようもないタニヤ、猫の調教チーム、
発見された詩人』の一遍の中に

欠けない満月がないように、
トラブルのない生活もない(本文より)

と言う法則がありました。
その詳細については本書をご確認していただくとして、
僕はこれと対となる

満ちない新月がないように、
好転しない難局もない(同じく本文より)

に強い感銘を受けました。
「ものごとには必ず二つの側面がある」は
著者一流のキーワードだけれど、そこで終わらず
「ものごとの良い面を見る」とも説いているんですよね。
なので、ムラカミ・ピーターの法則も一見シニカルではあるけれど、
込められた願いみたいなものはその逆なんではないでしょうか。
著者の優しさは、猫の足音みたいに慎ましくて。

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