村上春樹/安西水丸『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』読了

裸で家事をする主婦は正しいのか?
あなたの空中浮遊の夢はどのタイプ?
読者から多数の反響を呼んだ「通信」シリーズを筆頭に、
「真昼の回転鮨にしかけられた恐怖の落とし穴」
「宇宙人には知られたくない言葉」から、
苦情の手紙の書き方、学校の体罰の問題まで、
世紀末の日本を綴ったエッセイを水丸画伯のイラストが
サポートする、名コンビ「村上朝日堂」シリーズ最新作。
内容(「BOOK」データベースより)

心の源泉。

本書は「村上朝日堂」シリーズの第五弾
1,2,ランゲルハンス,3,くもざる,4,5
『週刊朝日』において十年ぶりに再開、連載された
コラム「週刊村上朝日堂」をまとめた一冊です。
「村上朝日堂」シリーズもこれで最後となりましたが、
個人的には最も印象に残る一冊となりました。
佳作。

傷つかなくなることについて
一事は万事なのだ
文学全集っていったい何なのだろう

非常にシリアスな話題が多く、それが意外でもあったし、
同時に(僭越ではありますが)親近感を覚えました。
勿論、ラブホテルの名前問題や、
英語の和訳や発音のよもや話など、
脱力や微笑モノも少なくありません。
けれど、本書は著者個人の芯みたいなものに触れた話題の方が
強く印象に残るんですよね。
そこに「信条」の対立や相違はあるかもしれないけれど、
もっと人として根源的な何かに訴えかけられた気がします。

老いや死。
素性や差別。

それらをカタチにとらわれることなく、
もっと心の源泉から湧き上がる温かい何かを信じる。
僕はそう思う様になりました。
強いて行動する必要はありません。
みなさまも一番最初に感じた温かい何かを
もう少しだけ大切にしてみませんか?

蛇足で抗議について。
それは「僕らの世代はそれほどひどい世代じゃなかった」
の一遍の中にあったのですが、
著者は17歳の一時期、クラスのほとんどの女の子から
口を利いて貰えなくなったそうです。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は女の子たちの純粋な意思に強く胸を打たれました。
経験を重ねたのでそれは酷く脆く、幾分利己的でもあり、
決して高邁なだけではないと知っています。
けれどそれでもなお、女の子たちがみせた抗議に
美しい何かを見てしまうんですよね。
苦い思い出の中でも

みんなが言うほど悪い世代じゃなかった(本文より)

と到ったのは、女の子たちの至誠が
春樹少年の中で小さな花を咲かせたからだと確信します。
憎しみや怒りだけではありません。
抗議は相手の心の中に、愛の種を撒くことだってあるのです。

追伸:
愛猫のミューズちゃんに、哀悼の意を捧げます。
長いあいだお疲れさまでした。

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