桜木紫乃『砂上』読了

空が色をなくした冬の北海道・江別。
柊令央は、ビストロ勤務で得る数万円の月収と、
元夫から振り込まれる慰謝料で細々と暮らしていた。
いつか作家になりたい。そう思ってきたものの、
夢に近づく日はこないまま、気づけば四十代に突入していた。
ある日、令央の前に一人の編集者が現れる。
「あなた今後、なにがしたいんですか」。
内容(出版社内用紹介より抜粋)

虚構とは。

本書は書く事で人生に区切りをつける女の物語。
現実と虚構の有様に慄然すると共に、
世にいる全ての作家に畏怖と敬愛を覚えました。
佳作。

内容はバッサリ略で一言。ひゃあ~、面白かったぁ。
本作に著者十八番の官能(描写)は無いけれど、
感情を抑えながら、それでいて噎せ返るほど濃厚な情感。
そんな『桜木紫乃』の筆は健在であり、心行くまで堪能しました。

女三人家族の秘密
作家と編集者
そして
私小説とノンフィクション

令央と編集者・乙三の会話は妥協も余白も無く、容赦も無い。
そんなやり取りには思わず息を飲んでしまいました。
逆に家族とのやり取りには描写のいちいちとは反対に
胸を撫で下ろした部分もあるんですよね。
そこには所謂「家族愛」みたいな交感は無いのだけれど、
それでも僕には “本当” って文字が頭に浮かびました。
彼女達の上っ面や建前を徹底的に廃した “自己完結” は
親から子へと引き継がれたモノだったと思います。

また個人的には本書の題材とその料理の仕方にも
非常に感銘を受けました。
令央は現実を物語に変換することで虚構とし、
その虚構を再構築することで現実にも落とし前をつける……。
で、ここから蛇足になるのですが、
僕は本書から京極夏彦さんの
『百鬼夜行』や『巷説百物語』シリーズを思い浮かべました。
コチラはもって行き場のない気持ちや事件に
妖怪の名を与え、具象化し、その上で……落とす。
どちらもどうしようもない現実を
一旦虚構とすることで再構築を可能とし、
受け入れ可能な現実に変換していたと思うんですよね。
上手く言えないのだけれど、
虚構とは人間に許された “赦し” の手段だと思います。

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