森博嗣『ペガサスの解は虚栄か?』読了

クローン。国際法により禁じられている無性生殖による複製人間。
研究者のハギリは、ペガサスというスーパー・コンピュータから
パリの博覧会から逃亡したウォーカロンには、
クローンを産む擬似受胎機能が搭載されていたのではないか
という情報を得た。彼らを捜してインドへ赴いたハギリは、
自分の三人めの子供について不審を抱く資産家と出会う。
知性が喝破する虚構の物語。
内容(「BOOK」データベースより)

失うもの。

本書は「Wシリーズ」の第7弾(その他はコチラ→1,2,3,4,5,6,7,8,9,10
シリーズのテーマである『生命の定義』を基本に、
本作では「誕生」と「終焉」について思案されています。

内容はバッサリ略。ラストを目前にした小休止でしょうか。
比較的平坦であり、穏やかな印象です。
それでも未来への考察はこの上なく刺激的であり、
スリルやサスペンスなんか比べ物にならないくらい興奮しました。

また初登場のスーパー・コンピュータのペガサス。
彼はオーロラより新型であり高性能なのですが、
ウォーカロンのとある秘密について演算ミスを犯します。
その原因はペガサスの妄想とオーロラは指摘するのですが……。
ここからは僕の想像ですが本シリーズにおいて「妄想」とは
「希望」と同義なんだと思います。
あるいは「夢」と置き換えても良いのかも。
最高知能のペガサスは「夢」を見て(意図的かはどうかは兎も角)
演算にイレギュラを混入させる。
でもそのイレギュラこそが進化のジャンプに必要な
“踏み台” だと僕は予感するんですよね。
またロジカルが際立つ本シリーズのなかで、
この進化のジャンプの説明が弱く感じられるのは、結局

計算出来ない = 説明できない

部分が未来永劫残ってしまう可能性があるからではないかな。
僕はテクノロジを信じているけれど、
一方で未知のエリアが残されることをどこかで願ってしまいます。

それでも著者はあの「森博嗣」ですからね。
ペガサスの「夢」は意思のあるパラメータであり、
今後進化のジャンプは再現可能になると予想します^^

蛇足で「死」について。
作中、ハギリはとある人物の死に際して、
死によって失われるものとは何か?と自問します。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は「欠けた太陽」とするその考察に胸を打たれました。
僕達はデータを利用して死者の顔を見ることができます。
話すこともできます。近い将来は触れることも可能でしょう。
けれど親しい人を亡くした時、
僕達が失くしてしまうモノは絶対にあるんですよね。
哀しみなんか、演算で制御できれば良いのに。

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