天野貴元『オール・イン 実録・奨励会三段リーグ』読了

天才少年と呼ばれた小学生時代、地獄の三段リーグ、
幻と消えた「名人」の夢、そして「舌がん」の宣告―
「将棋」にすべてを賭けた男の赤裸々な手記!
内容(「BOOK」データベースより)

これも一局。

本書はプロ棋士を目指した著者の自叙伝的ドキュメンタリ。
奨励会や闘病を通じて語られる生々しいまでの人生に、
胸が圧迫されました。
佳作。

内容はバッサリ略。
適当な表現ではないけれど、とても良かったです。

しかし読書中は終始苦しさを感じてしまいました。
それは僕が事前に著者が(非常に残念ながら)
お亡くなりになっている事を知っていたから。
なのでシリアスな内容に反し、
極力内省を控えた軽い筆ではあっても、
ある種の苦痛を味わう事にもなりました。
ただそれは例え擬似的ではあっても
僕を著者の「戦友」にさせてくれたんですよね。
本書は美談でも、教訓のある話しでもないと思うけれど、
彼の人生には寄り添いたいナニかがありました。

また将棋には「これも一局」という言葉があるそうです。
そして著者の人生もまた、絶えず生まれ、そして消えてゆく
「一局の人生」だったと思うのです。
勝敗は兵家の常であるけれど、彼の一局は頓死でも形作りでもなく、
最後(最期)まで投了しなかった男の闘い。
天野貴元の人生の棋譜は、必ず多くの人の心に残るでしょう。

蛇足です。
著者は奨励会退会後、さらに舌癌の手術から職場復帰した当時、
「もうプロは目指さない」と述懐されています。
曰く、

いまの自分の体力では、
三段リーグの将棋を指すことはとても不可能だ(本文より)

しかし彼は再びプロを目指していたんですよね。
これは本書を読了後、ネット等を調べて判ったのですが、
彼は本書を執筆後すぐに肺に癌が転移し、
医師から余命を宣告されてしまいました。
それでも(余命を知りながら)赤旗アマ名人戦で見事に優勝し、
奨励会三段リーグ編入試験の受験資格を得ると、
まさしく乾坤一擲(オール・イン)の勝負に挑みました……。

ここでその結果は控えます。
でも僕は(僕の信念でもあるのだけれど)、

負けることは恥じゃない。

戦う姿勢こそが気高いんだって事、改めて教えて貰った気がします。
最後になってしまいましたが、
謹んで天野貴元氏のご冥福をお祈りします。

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