村上春樹『雨天炎天』読了

「女」と名のつくものはたとえ動物であろうと入れない、
ギリシャ正教の聖地アトス。険しい山道にも、
厳しい天候にも、粗食にも負けず、
アトスの山中を修道院から修道院へひたすら歩くギリシャ編。
一転、若葉マークの四駆を駆って、ボスフォラス海峡を抜け、
兵隊と羊と埃がいっぱいのトルコ一周の旅へ―。
雨に降られ太陽に焙られ埃にまみれつつ、
タフでハードな冒険の旅は続く!
内容(「BOOK」データベースより)

それぞれのリアル・ワールド。

本書は『村上春樹』の旅エッセイ。
同じものは一つとしてない世界の、
しかし共通する “リアル” を確認します。

まずはギリシャのアトス編。
こちらはギリシャ正教巡礼の徒歩の旅であり、
根底には(微かではありますが)敬虔な空気が漂います。
勿論、道中の苦難やトラブルもありましたが、
それでも著者の心情にはある種の了見があった様に感じました。
その一方で宗教の『本質的な不寛容』を指摘する
冷ややかな視線に、少なくない安心も覚えます。

次はトルコ編。
こちらは車での旅ではありますが、
ギリシャ編よりあらゆる意味でハードです。
それでもヨーロッパとアジア、さらには中東の文化が混在し、
しかし決して交わらない価値観の激突には
旅行記としての醍醐味がありました。
また著者の「もう一度トルコに訪れるなら」に続く述懐に、
この旅の本質があったと思います。
僕は一度もトルコに足を踏み入れたことがないけれど、
仮に訪れるとしたら著者と同じく(でも一番つまんない)
黒海沿岸を希望します。

蛇足で猫タンについて。
猫好きの著者らしく、本書の旅の両方に猫タンが登場します。
で、その上で僕は娘達のリアル・ワールドを想像したんですよね。
鰹節やキャットフードを知らず、黴パンで満足するアトスの猫。
絨毯を売りつける為の客寄せパンダになっているトルコのヴァン猫。
そして、ただただ人間(僕)の身勝手で
性交することなく避妊手術を受けさせられ、
外界を知らず狭い家の中で一生を過ごす僕の娘達……。
世界は一つとして同じモノはないし、比べるモノでもないけれど、
それぞれのリアル・ワールドに煩悶します。
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離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

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