カズオ・イシグロ『浮世の画家』読了

戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家の小野。
多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位にあったが、
終戦を迎えたとたん周囲の目は冷たくなった。
弟子や義理の息子からはそしりを受け、末娘の縁談は進まない。
小野は引退し、屋敷に篭りがちに。自分の画業のせいなのか…。
老画家は過去を回想しながら、みずからが貫いてきた信念と
新しい価値観のはざまに揺れる―
ウィットブレッド賞に輝く著者の出世作。
内容(「BOOK」データベースより)

ちょっと退屈です。

本書はカズオ・イシグロ(敬称略)による一冊。
時代の変節によって移ろう価値観を、
老いた画家の独白によって描かれていました。

戦前の名声と戦後の批判
次女にあった二つの縁談
そして
画家の反省とは

戦後の日本を舞台としており、一定の郷愁と親近感を覚えます。
またゴジラであろう映画の話や、当時は最新の「団地」も登場し、
少し前の日本文学として全く違和感がありません。
その点、海外作品が苦手な方でも、幾分容易に入れると思います。

ただし、リーダビリティーは決して良いとはいえません。

物語の中心は、老人の独りよがりな回想です。
都合の悪いところは隠されるし、改変されている。
つじつまの会わない事項も一つではないし、放置されたまま。
一人称の弱点(あるいは長所)が
あけすけに利用されているんですよね。
それは本書のテーマである、ある種の混乱を「浮世」になぞらえた
(それはそれで巧みな)テクニックだとは思いますが、
「ちょっと退屈」が正直な感想です。
まぁ、老人の昔話や言い訳なんて「退屈」が相場ですからね。
僕も自戒せねば。

蛇足で子供の飲酒について。
作中、主人公・益次は8歳の孫・一郎に飲酒の許可を与えます。
しかし当然ながら孫の母と叔母(共に主人公の娘)に
反対されてしまいました……。
でも僕は、本書でこの箇所が一番、主人公に共感できたのです。
それは絶対に間違ったことだし、危険でもある。
若いときの飲酒経験は、依存症の危険性を大きくしますしね。
今風に例えればまさしく「老害」そのモノの案件です。
でもそれでもなお、僕は益次の言う

「こう言うことは一郎のような少年にとっては大きな意味を持つ。
自尊心の問題だ」(本文より)

には、同性として痛快な気分にもなったりして(小さな声で)。
結局僕も、老人と言うことです。

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