中島京子『樽とタタン』読了

あの店に来ていた人たちは、誰もがどことなく孤独だった。
小さな喫茶店でタタンと呼ばれた私が、
常連客の大人たちから学んだのは、
愛の不平等やしもやけの治し方、物語の作り方や別れについて。
甘酸っぱくてほろ苦いお菓子のように幸せの詰まったものがたり。
内容(「BOOK」データベースより)

ジブンのムネに聞いてよ。

本書は喫茶店を舞台に、少女と大人たちの交流を描いた連作短編集。
子供時代の記憶と空想が巧みに融合し、
健全な少女の成長物語となっていました。

奇妙な執筆依頼を受ける老小説家
自意識過剰の学生さん
白い彼女を愛する孤独なバヤイ

9つあるお話はいずれも30ページ未満であり、短編と言うより掌編。
また子供時代の回想なので、かなり曖昧だし、非現時的で、
多くは『その後』が描かれていません。あくまでも

こんなコトがあった

って “だけ” のお話なんですよね。
その点で評価が分かれるかもしれないけれど、
僕は割りと良かったです。

喫茶店と言う大人たちが集まる場所で、
少女は誰からも愛されながら、一方では「味噌っかす」。
彼女は大人たちの様々な(多くは苦い)事情を、
説明もされず、理解も及ばず、ただ観察するだけでした。
なので、彼女の得た結論?はどうにも怪しいのだけれど、
それは現実を受け入れる為のある種の方法、

合間合間を想像と妄想で繋ぎ合わせ、
わたしたちはわたしたちの物語を作っていくしかない(本文より)

を学ぶために必要な経験だったんじゃないかな。
それを子供の空想(夢想)と笑うのは簡単だけれど、
そこには真実の側面だって間違いなくあるし、
彼女なりの「落とし処」=「真実」だったと思います。

また真実なんて一つではありません。

真実とは
老小説家の言う「小説家に聞いてはいけない質問」だと思うし、
トックンの言う「ジブンのムネに聞いてよ!」ではないでしょうか。

蛇足で僕のお勧めは『ぱっと消えてぴっと入る』の一遍。
祖母が少女・タタンちゃんに聞かせる彼女の死生観のお話です。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕も祖母の見解に賛成です。

結局、みんなそこに帰ってきます。

本編を読み、火傷しそうなほど熱くなったトコロに、
息ができなくなるほど苦しくなったトコロに。
僕達の好きな人は必ず帰ってきます。
僕もまた父に会えました。

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