原雄一『宿命 警察庁長官狙撃事件 捜査第一課元刑事の23年』読了

1995年3月30日午前8時31分。國松孝次・警察庁長官が狙撃された。
執念の捜査の末にたどりついたのは、稀代のテロリスト中村泰だった。
緻密な捜査ノートをもとに綴った、渾身のノンフィクション
真相に肉薄した捜査はなぜ封印されたのか?
内容(「BOOK」データベースより)

使命です。

本書は國松孝次・警察庁長官狙撃事件を題材としたノンフィクション。
残念ながら公訴時効を迎えた未解決事件ではありますが、
ココにその真相が明らかにされています。
秀作。

オウム真理教による地下鉄サリン事件
直後に発生した警察庁長官の狙撃事件
そして
公安部と刑事部の確執

内容はバッサリ略で一言、凄い一冊です。

巷にあふれる未解決事件に迫ったノンフィクション。
そこに描かれる真相の多くは(客観的にみれば)仮説の域を超えません。
勿論、内部告発として描かれる場合、それを真相と疑わないけれど、
犯人の断定は巧妙に避けられる等、「逃げ」が見えちゃうんですよね。
でも本書は長年に渡って事件を追った刑事が著者であり、
犯人(とされる人物)の告白と、何より膨大な証拠と立証された事実が
全て明らかにされています。証拠能力が他とは比べ物になりません。

前述の通り、本件は2010年3月に公訴時効を迎えており、
一市民の僕が犯人を断定する愚を控えます。
けれど、本書の内容に疑問を挟む余地は「ほとんど無い」
そう思いました。

またタイトルの『宿命』は、著者が何かに導かれるように
警察庁長官狙撃事件を捜査するコトになった様子を顕しています。
それは時折挟まれる当時の繰言からも判るように、
不本意とは言わずとも、決して望んだ事件ではなかったのかも。
けれど、刑事・原雄一の『宿命』は、公僕として純然な使命ですよね。
そして例え未解決事件ではあっても、本書を発表するコトによって
彼はその使命を果たしたと僕は考えます。
長年の捜査、本当にお疲れ様でした。

ここからは蛇足です。
本書の主眼点の一つに公安部と刑事部の確執があります。
それによって立証できるはずだった本件を、
みすみす見逃してしまったコトが明らかにされていました。
僕はその点に対しては国民として納税者として、
一片の言い訳も許すことは出来ません。
しかしその一方で、日本の警察って「本当に凄いな」、
「諦めないんだな」、「頭が下がるな」と感動さえ覚えました。
色々あるけれど、基本的に警察は信頼に値すると感じています。

さらに蛇足。
日本の警察に感心すると同時に、
犯人(とされる人物)にも暗い感嘆を覚えました。
それは高度な知識と尋常ならぬ行動力、
犯罪者同士の連携や用意周到な仕掛け等々。
彼を通して犯罪者全般に対する恐ろしさも覚えました。
ただ彼は(著者が指摘するとおり)
自称するほど高邁な理念を持った人物だとは思えません。
時に憂国だったり、時には反国だったり。
カストロやゲバラに心酔したとあるけれど、
僕にはヒロイズムに酔ったただの自己顕示欲の塊に映ります。

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