角田光代『私はあなたの記憶のなかに』読了

角田ワールド全開!心震える待望の小説集
少女、大学生、青年、夫婦の目を通して、
愛と記憶、過去と現在が交錯する多彩で技巧をこらした物語が始まる。
角田光代の魅力があふれる魅惑の短篇小説集。
内容(出版社内容紹介より抜粋)

辛いときだってある。

本書は「記憶」を題材に、ごく普通の人々を描いた8つの短編集。
近くに大切な人がいても、どうしても拭えない孤独感。
そんな「記憶」のある意味ネガティブな属性を痛感します。

父の葬式に招いた父の元彼女。
母の元彼と一緒に遊ぶ娘。
他人の悲しみに共振してしまう友人。

本書の「記憶」とは「人」の事。
またそれは「別れ」と共にあり、
本書の殆どが寂寥感を覚えるお話です。
さらに「記憶」に残っていたのは、
主人公たちが好意を持った相手だけではありませんでした。
憎しみを抱いた人もいるし、同情を覚えた人もいた。
判り合えなかった人もいたし、すれ違ってしまった人もいる。
「記憶」はどんな感情にも平等なんですよね。
都合よく楽しいコトだけを「記憶」するなんて出来ません。

一方で最終話で同名タイトル『私はあなたの記憶のなかに』の中で

今、ひとりだとしても(中略)
抱えた記憶は決してぼくらをひとりにすることはない(本文より)

みたいな埋め合わせもあるにはありました。
それでも……

ひとりが辛いときだってありますよね?

僕は男だし、大人だから強がるしかないけれど、
それでも「記憶」の残酷さは綺麗事だけじゃ済みません。
「記憶」は「一人」をあたためるコトもあるけれど、
「独り」を突きつけるコトだってあるのだから。

ここからは軽く総評で……。
時折光るセンテンスは流石の『角田光代』でした。
中でも『神さまのタクシー』の

逆を向いて走っているのに、
なぜか同じ場所を目指している(yuki意訳)

の一文には深く感銘を受けました。
ただ全体的にやや印象が薄かったのもまた事実。
上手いのだけれど、ちょっと弱い、と言った感じでしょうか。
それでも本書を大作ではないと承知して手にするならば、
決して損はしない一冊です。

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離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
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