木下昌輝『宇喜多の楽土』読了

父・直家の跡を継ぎ豊臣政権の覇者となった秀家。
関が原で壊滅し、八丈島で長い生涯を閉じるまでを描く傑作長編。
内容(出版社内容紹介より)

誰のための楽土。

本書は高い評価を得たデビュー作『宇喜多の捨て嫁』の続編。
動乱の最中、時流に逆らう意味とその顛末が描かれており、
諸行無常にも似た切なさを感じました。

父・直家に誓った干拓事業
内憂外患に晒さらされ続ける領土
そして
楽土は誰のためであり、どこにあるのか

前作の主人公・宇喜多直家を乱世の梟雄とすれば、
本作の主人公、直家の嫡男・秀家はある意味でお坊ちゃんです。
生まれの境遇は父のそれとは比べ物にならないほど豊かだし、
時の権力者・秀吉の寵愛も受ける程、才能人格ともに優れている。
父に比べれば面白みに欠ける人物かも知れません(笑)
それでも「時流に乗って」大領を得た家康と、
「時流に逆らって」豊臣に仕える秀家の対峙にはアツくなりました。
どちらも「生き方を変えられぬ」男です。
その対立は利害や損得とは違う、もう少し崇高な何かを感じました。
(付き合わされる人々を考えると、もどかしさもあるのですが……)

結局、秀家の最後は領土は取り上げられ、家は改易。
命は永らえたものの、八丈島に流されてしまいました(流刑)。
時流には抗えなかったんですよね。
一方で、秀家はそこで小さな畑を耕し、島民と交流を深め、
彼自身の小さな楽土を得るコトになるのですが……。
果たして彼の胸裏にあった楽土とは、この場所だったのでしょうか。
また楽土とは彼自身の為のモノだったのか。
本書はそう問いかけていた様に思います。
僕は秀家の耳に届く八丈島の潮騒の中に、
児島湾を土で埋める流民たちの声が、混じっている気がしてなりません。

最後に。
前作の連作短編集とは趣が異なり、本作はごく普通の長編です。
全体に統一感があり、また構成も配分も申し分も無く、
伏線の回収も実に御見事。おまけにラブストーリーも悪くなくて。
ただ僕は変則的ではあっても、
ジリジリとした緊張感に溢れた前作の方が好みかな。
それでもエンタメの王道をいく本作は、ひろく多くの方にお勧めです。

蛇足:
rps20180611_113316.jpg
初版、P68-4行目。
『織田信雄が安土の三法師の身柄を、岐阜城へとなかば……』の
”信雄” は ”信孝” ですよね?
誤字だと思うのだけれど、新しい学説でもあったのでしょうか。

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