小川洋子『海』読了

恋人の家を訪ねた青年が、海からの風が吹いて初めて鳴る
〈鳴鱗琴(メイリンキン)〉について、
一晩彼女の弟と語り合う表題作、
言葉を失った少女と孤独なドアマンの交流を綴る「ひよこトラック」、
思い出に題名をつけるという老人と
観光ガイドの少年の話「ガイド」など、
静謐で妖しくちょっと奇妙な七編。
「今は失われてしまった何か」をずっと見続ける小川洋子の真髄。
内容(「BOOK」データベースより)

ちょっとだけ不思議。

本書は小さな出会いを描いた7つの短編集。
あくまでも淡白で一時的な繋がりではあっても、
そこには奇妙な共感が存在し、不思議な余韻に包まれます。

今回は印象に残った2編を簡単にご紹介。
まずは『風薫るウィーンの旅六日間』。
こちらは海外ツアーで同室となった老婦人と、
彼女に付き合わされるコトになった若い女性のお話です。
その目的地は老婦人のかつての恋人の病床なのですが、
残念ながらお見舞いの最終日、その恋人は逝ってしまいました……。
本書に収められた7編はバラエティに富んでいるのだけれど、
本作をジャンル分けするなら何になるのかな?
ホラー?ミステリィ?それともシニカル?
解釈の自由度も高いし、とても不思議な作品なのだけれど、
決して後味は悪くなくて。僕は結構好きな作品です。

もう一つは『バタフライ和文タイプ事務所』。
タイプ事務所に勤めるタイピストの女性と、
その倉庫で働く活字管理人のお話です。
二人は小さな窓しかない仕切りつきのカウンター越しで会話をし、
お互いの顔も姿も見るコトは出来ません。
そしてある時、女性はとある漢字の活字をワザと欠損させて、
管理人のトコロへ交換しに行くのですが……。
本作を一言で顕せば「想像上のエロティック」
些か直接的ではあるけれど、僕はかなーり好きな作品です(笑)

ここからは完璧な蛇足で毛糸について。
それは『銀色のかぎ針』にあったのですが、
僕も主人公と同じく、手編みのセーターやマフラーを
大切な人からいくつも貰ったことを思い出しました。
でも遠い昔の事だし、それでいて編みあがった記憶を解けば痛みは蘇る。
これ以上は控えたほうが良さそうですね。
ただ、毛糸が意外と重いこと。沢山必要な事。値段が高いこと。
何より手間ひまが非常に掛かることを良く覚えています。
恋人の頃は兎も角、一緒になったあとは、
隣で編んでいるのをずっと眺めていましたからね。
あのとき僕は、自分が幸せだと何故判らなかったのだろう。

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