小川洋子『口笛の上手な白雪姫』読了

劇場で、病院で、公衆浴場で―。
“声”によってよみがえる、大切な死者とかけがえのない記憶。
その口笛が聴こえるのは、赤ん坊だけだった。
切なく心揺さぶる傑作短編集。
内容(「BOOK」データベースより)

記憶の力。

本書はささやかなエピソードを優しく記した8つの短編集。
『記憶』の寛容性・包容力が描かれており、
僕も大切な(多くは過ぎ去った)時間を
愛おしく思うことができました。

今回も印象に残った2編を簡単にご紹介。
まずは『かわいそうなこと』。
こちらは世の中の “かわいそうなこと” を
ノートに書き留める少年のお話です。
そのノートには博物館のシロナガスクジラ、動物図鑑のツチブタ、
映画の名も無き女優に、少年野球のライトの選手と、
様々な“かわいそうなこと”が記されるのですが……。
僕は少年の “かわいそう” の基準に胸を打たれました。
大人への成長過程で必要なのかもしれないけれど、
少年が覚えたであろう哀しみに共感を覚えました。

もう一つは『一つの歌を分け合う』。
ミュージカル「レ・ミゼラブル」を観にいった
叔母さんと甥っ子のお話です。
叔母さんは観劇の少し前に息子を亡くしているのですが、
舞台の主役俳優を息子と信じ込んでおり……。
作中に描写はないけれど、僕は叔母さんは正常だったと思います。
むしろ感情を開放するために必要な方便、
仮初の狂気だったと思います。だからこそ彼女の涙に、
僕はある種の救いみたいなモノを感じました。

蛇足でちょっと不思議な技能について。
それは表題作『口笛の上手な白雪姫』にあったのですが、
そこでは赤ん坊たちだけが聞こえる「口笛」が登場します。
まぁ、その「口笛」の真偽は別として、
現実の世界では「モスキート音」が有名ですよね。
僕もネットで「モスキート音」を試してみたのですが、
だいたい15,000から16,000Hzを境に上は聞こえなくなりました……
って、閑話休題(笑)
著者の作品には不思議な技能を持つキャラクタが多くありますよね。
例えば『ことり』、『博士の愛した数式』、『猫を抱いて象と泳ぐ』
なんかがあげられると思います。
正直言えばワンパターン?とも感じていました。
けれどそれは(多くは辛い)現実をオブラートで包む、
著者の特徴的な(そして素敵な)テクニックだと気が付きました。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ FC2Blog Ranking
 励みにしますので、宜しければクリックをお願いします。
テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

Tag:読書  Trackback:0 comment:0 

Comment

comment form
(編集・削除用):
管理者にだけ表示を許可
プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫17歳) 泣き虫で臆病。温厚だけど父ちゃんには我儘な女王様。妹がちょっぴり苦手。職業:父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒4歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。お姉ちゃんともっと遊びたい。職業:父ちゃんの邪魔。
ユーザータグ

読書(941)
(575)
one_day(518)
ex_girlfriend(341)
my_ex(210)
ロックンロール(189)
アルコール依存症(171)
タラレバ娘(105)
自転車(34)

検索フォーム
FC2カウンター