桜木紫乃『ふたりぐらし』読了

元映写技師の夫、信好。
母親との確執を解消できないままの妻、紗弓。
一緒にくらすと決めたあの日から、少しずつ幸せに近づいていく。
そう信じながら、ふたりは夫婦になった。ささやかな喜びも、
小さな嘘も、嫉妬も、沈黙も、疑心も、愛も、死も。
ふたりにはすべて、必要なことだった―。
イッキ読み、厳禁!1日1編で10日間。ふたりが、夫婦が、
「幸福論」へと辿りつく姿を、じっくりご堪能ください。
内容(「BOOK」データベースより)

たぶん幸福。

本書は夫婦の「ふたりぐらし」を描いた10の連続短編集。
別々の人生を歩んできた男女が、
「つがい」として生きる意味を問いかけています。
良作。

ヒモ同然で負い目のある夫
家計を支えるやきもち焼きな妻
そして
彼等をとりまく様々な「ふたり」のカタチ

内容はバッサリ略で一言。はぁ~良かった。
正直、著者の中でもかなりライトな作品です。
1話はおよそ20ページしかない短編と言うよりは掌編だし、
悲痛な事件・事故もなく、濃密な夜の描写もない。
重厚な『桜木紫乃』を期待していると肩透かしになるかも。
けれど、

いくつもの些細な事柄が、
ひとつの「ふたり」を作っていく。

そんな薄紙を重ねる様な作品構成がとても良かったです。
またそんな風にして出来た地層のコトを「夫婦」と呼ぶ。
本書はそう主張していたように思うんですよね。
さらにそこには優劣などなく、

たぶん幸福なの、このひとたちもわたしたちも(本文より)

と語りかけていたのではないでしょうか。
「ふたり」を定義し、作れるのは本人(達)だけなのですから。
ラストはふたり(信好と紗弓)がふたりではなくなる可能性を
示唆するけれど、僕はそうなれば良いなと思います。
きっとそれでもふたりは、ずっとふたりを続けていくと思うから。

蛇足で僕は著者の筆が大好きです。
繊細でありながらも情感に溢れ、
僅かな心のゆらめきを濃淡のグラデーションで描写する……。
僕はこれまで『桜木紫乃』で一行たりとも
「目が滑った」ことがありません(当然本書を含みます)。
正直、本書の様な掌編(集)には
些か過剰な(濃厚な)筆だったかもしれないけれど、
そこかしこにあった「ふたり」の柔らかさが
絶妙に緩和していたと思います。
これからも重厚な『桜木紫乃』だけでなく、
この筆に合う(本書のような)やや淡白な『桜木紫乃』も
大いに期待しております!

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