森博嗣『人間のように泣いたのか?』読了

生殖に関する新しい医療技術。キョートで行われる国際会議の席上、ウォーカロン・メーカの連合組織WHITEは、人口増加に資する研究成果を発表しようとしていた。実用化されれば、多くの利権がWHITEにもたらされる。実行委員であるハギリは、発表を阻止するために武力介入が行われるという情報を得るのだが。すべての生命への慈愛に満ちた予言。知性が導く受容の物語。
内容(「BOOK」データベースより)

泣くと言う事。

本書は「Wシリーズ」の第10弾にして完結編
(その他はコチラ→1,2,3,4,5,6,7,8,9,10
シリーズに通底する「生命の定義」から発展し、
異なる種族との「共生」についても考察がされていました。

再び生殖可能が取り沙汰される人間
その場合のクローンやウォーカロンの存在意義
そして
人工知能との共生

内容はバッサリ略で一言、最高です。これ以上はありません。

本書だけをとれば、いつもの通りの『森博嗣』であり、
多くの謎は謎のままに終わってしまいます。
しかし「Wシリーズ」は本書をもって
『森博嗣』の最高傑作になったと改めて確信します。
生命と共生。及びそれを可能にする知性への言及に、
僕は普遍的な愛を感じることが出来ました。

本作(本シリーズ)は SF ではあるけれど、
ある意味で詩的な文学作品でもあると感じます。
それは全体的でありながら、非常に部分的。
核心を読者の想像のうちにこそ忍ばせる点です。
またその核心とはきっと「愛」なんですよね。
結局、本作のテクノロジーはオーナメントに過ぎません。

語りたいコトは山ほどありますが最後に一つだけ。
それは「人間」について。
本作では人工知能やウォーカロンと対比することによって
描かれていたのですが、それを乱暴に纏めてしまえば

人間とは非合理である。

だったと思います。
例えば人間は

個人の命よりも、総合的な判断の方が優位だ(本文より)

と、冷徹で現実的。
またある意味で合理的で人工知能的な考えが可能でありながら

他人の感情が、
自分のことのように敏感に感じられた(本文より)

そんな相反する様子が描かれているんですよね。
両者はほとんど矛盾しているし、
明らかに合理的ではありません。

またその一方で人工知能が人間との共生で備えるべき能力。
それが後者の「共感」と主張されていたように感じました。

人間のように泣いたのか?

僕達人間が泣くのは悲しみや痛み、
あるいは喜びを感じた時だけではないですよね。

他人を想い、感じるとき。

僕達は言葉にはできない感情によって
無意識のウチに涙を流してしまうコトがあります。
でももし彼等(人工知能)が同じこの涙を流すのなら……。
僕は彼等を同じ仲間(人間)としか思えません。

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