田中慎弥『ひよこ太陽』読了

なんのための作家だ、なんのために原稿を書いている、飲むためではない食べるためだ、食べてゆくためだ、家賃、光熱費、それからあと回しにはなるが母への送金、そのための毎日の仕事だ、とこれほどはっきり反省する瞬間はないと実感しながら飲み、反省。飲み、反省。分った分った、分りました。仕事は生活のためだが、酒は反省するためなのだ。不条理でシビアな世界を生きのびる著者の待望の新作。
内容(「BOOK」データベースより)

特に残るものはなく。

本書は私小説に “近い” 七つの連作短編集。
作家の書けない苦しさや孤独が執拗に描かれており、
それはそれで共感みたいなモノを覚えましたが、
それ以上がありません。ちょっと自意識過剰かも(小さな声で)

行方不明の G を探す
白い帽子の少年
そして
牛乳を飲む女

内容はバッサリ略で一言、決して悪くはありません。
特に書けない『私』を卑下するでも罵倒(自己批判)するでもなく、
まるで神の視点で『私』を見下ろす様には、鬼気迫るものがありました。
それはクドイ程にあったのですが、例えば

書けない事が起こっている
(中略)
書けない以外に、何も起こっていない(本文より)

には、憐れみを通りこして可笑しみさえ感じてしまいました
(言うまでも無いけれど、それ程迫真だと言うコトです)。
きっと僕が思う以上に作家の孤独は深いのでしょうね。
けれど僕は著者と同年代だし、同じ男の一人暮らしだからなのか、
カタチは違えど「みんな同じでは?」とも感じてしまいました。
きっと僕と本書の相性が良くなかったんだと思います。

最後になりますが、本書は完全な私小説ではありません。
なのでメタファが非常に多いし、さらには解釈の自由度も高く、
本気で取り組めば割りと難解な作品かも知れません。
因みに「牛乳を飲む女」はモデルが実在したと思います。
ただ、著者の意図するところだとは思うけれど、
彼女のキャラクタに血が通っておらず、
結果、実在のモデルと著者の心も通ってはいなかった。
そんな疑問と確信の中間みたいなモノを覚えてしまいました。
下種の勘繰りではありますが、一応のご報告。

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離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
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