乙川優三郎『地先』読了

心は、色褪せてはいない。人生の後半にさしかかった女と男。艶めいた思い出と、思いがけない出来事で揺れる。八篇の物語がかきたてる勇気と感動。
内容(「BOOK」データベースより)

なりゆき。

本書は人生を描いた8つの短編集。
人生のこれまでとこれからを切り取り、
その狭間に立つ現在の様子が淡々と描かれています。
佳作。

印象に残った二編をご紹介。先ず『そうね』。
店を畳んだ父と、介護が必要な母を支える娘・琴未のお話です。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕は琴未の暗い喜びみたいなモノに共感を覚えました。
たとえば

彼といると、
自分から潰すこともできる薄い希望の泡を感じる(本文より)

いつも他人に潰される希望の泡。
そのはじけた飛沫に、彼女の心を想います。

もう一つは『おりこうなお馬鹿さん』
成熟した男女関係に充たされた日々を送る香苗のお話。
でもあるとき、彼女は不意に微かな不安を覚えます。
こちらも詳細は本書をご確認していただくとして……。
僕は香苗は悩んでないで、とっととメールを送るべきだと思いました。
これは甚だ個人的な思考(嗜好)ではあるけれど、

女は男にウザイと思われるより、
男に寂しいと感じさせることを恐れるべき。

僕はそう思います。

最後に。
本書は全体を通して人生のこれまでとこれからを描いており、
そこから浮かぶのは「なりゆき」だったと思います。
そこに「分別」とか「諦念」の成分が一切ないとは言わないけれど、
それでも良い意味での「開き直り」があったように感じるんですよね。
「後悔」や「不安」を、「思い出」や「予感」に変換する経験知(値)。
それを得ることこそ、人生の醍醐味の様に思えました。

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離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

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