吉田修一『逃亡小説集』読了

職を失い、年老いた母を抱えて途方に暮れる男。一世を風靡しながら、転落した元アイドル。道ならぬ恋に落ちた、教師と元教え子。そして、極北の地で突如消息を絶った郵便配達員。彼らが逃げた先に、安住の地はあるのか。人生の断面を切り取る4つの物語。
内容(「BOOK」データベースより)

「仕方が無い」の二つの意味。

本書はとある衝動により始まった “逃亡” を描く4つの短編集。
他人からは決してうかがい知る事の出来ない事情・真相に、
なんとも言えない余韻が後を引きます。

今回も二編をご紹介。先ずは『逃げろ九州男児』。
ささいな交通違反をきっかけに逃亡を始めた男のお話です。
内容はバッサリ略して、ちょっと印象に残ったことを一つだけ。
それは瑤子の言う「体が疼く」についてです。
僕は男だから女性の身体の摂理は判らないけれど、
彼女の解釈にはちょっと「?」だったんですよね。
僕個人についてで言えば、たとえいま世界が終わるとしても、
後悔はしないし、しかし体は疼いていないと思います。

もう一つは『逃げろミスター・ポストマン』。
運送会社のドライバーが、
配達の途中に荷物ごと失踪してしまうお話です。
こちらも内容はバッサリ略で失礼して、僕は

逃げようと思えば逃げられるのかもしれないと思えた瞬間、
急に気持ちが軽くなる(本文より)

に、強い共感を覚えました。
実はここから僕の経験を書いていたのですが、
非常に長くなったし、自己憐憫の匂いもあったのでバッサリカット。
ただ、本当に追い詰められたあの時にこの感覚を得たコト。
それは例え一瞬でも確かに「救い」だったと、
今ではそう感じています。

最後に。
『逃げろお嬢さん』の舞子の述懐にもあった様に、
本書は「逃げても仕方が無い」がテーマの一つだったように感じます。
実際僕もそれに共感しながら読み進めたのですが、
しかし途中からその意味合いに変化が生じたんですよね。

逃げても仕方が無い(逃げの否定)
から
逃げても仕方が無い(逃げの肯定)

「仕方が無い」には180度違った二つの意味があるけれど、
僕は次第にどちらも「アリだな」って感じるようになりました。
情状酌量の余地があっても「罪は罪」と僕は考えるけれど、
それでも肯定の意味の「仕方が無い」だって世の中にはあること。
忘れないようにしたいと思います。

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離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
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