麻宮ゆり子『碧と花電車の街』読了

昭和30年代の名古屋の繁華街・大須。
何でもありのごった煮の街で終戦直後に生まれた碧は母親と二人、
つましくも幸せな日々を送っている。将来、映画監督になることを夢見て、
アルバイト代で映画館に通う碧。そんなある日、一人の男が母娘の前に現れる――。
街を行き交う市電の優しい揺れに乗せて描く、少女のゆるやかな成長物語。
内容(出版社内容紹介より)

オーゥス。

本書は終戦後の大須を舞台にした物語。
一人の少女が成長する様子を、
あたたかな視線で描かれています。

内容はバッサリ略で一言、じんわり良かったです。
それは主人公・碧の素朴で素直な(時には性急な)言動が
とてもまぶしく思えたから。

きっと高度経済成長期にあっては、
現代と比べ物にならないほど差別が目に付いたと思います
(例えば『テテナシゴ』だとか、あからさまな女性差別とか)
けれど、碧は肉体的にも精神的にも傷付きながら、
周囲の大人たちの助力を得て、対処する術を学んで行きました。
そこには当然、子供らしい直情的なふるまいはあったのだけれど、
その根底には素直で優しい魂があったんですよね。
正直、期待していたモノより低年齢向け?
の作品だったけれど、それでも僕は保護者の視点で
碧の成長に一喜一憂することが出来ました。

中でも碧が感情にまかせて母・信子に迫る場面。
詳細は割愛しますが、富江に殴られた碧は当然痛かったでしょう。
しかし殴った富江も、そのコブシ以上に心が痛かったはず。
僕は二人の痛みを想い、思わず胸が苦しくなってしまいました。
けれど、富江の愛が理解できる碧ですからね?
周囲の大人は誰だって、
碧に無償の愛を与えたくなるのだと思います。
(富江の行為は暴力だけれど、僕はそれを愛と疑いません)。

結局、碧は「オーゥス」を巣立っていくのだけれど、
それは間違いなく素敵なこと。
作中の「ローゥム」ではないけれど、
思い出は思い出として、若い世代は次に進まなければ。
少し寂しいけれど、それが僕たち大人の願いです。

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離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
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