逸木裕『電気じかけのクジラは歌う』読了

人工知能が個人にあわせて作曲をするアプリ『Jing』が普及し、作曲家は絶滅した。『Jing』専属検査員である元作曲家・岡部のもとに、残り少ない現役作曲家で親友の名塚が自殺したと知らせが入る。そして、名塚から自らの指をかたどった謎のオブジェと未完の新曲が送られてきたのだ。名塚を慕うピアニスト・梨紗とともにその意図を追ううち、岡部はAI社会の巨大な謎に肉薄していく―。私達はなぜ創作するのか。この衝動はどこから来るのか。横溝正史ミステリ大賞受賞作家による衝撃の近未来ミステリー!
内容(「BOOK」データベースより)

「慙愧の念」なんてない。

本書は人がモノを作る意義を問うたミステリィ。
近未来の設定はもとより、清廉潔白ではない登場人物たちに
リアリティを感じました。

個人にあわせて作曲をするアプリ『Jing』
『Jing』専属検査員の元作曲家
そして
天才作曲家の謎の自殺

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
目新しさは一切ないけれど、「近未来」として説得力があります。
また物語もありきたりではあるけれど、ラストは決して悪くない。
著者はデビューしてまだ4作目だけれど、
良い意味でベテラン作家の “手馴れ” を感じました。
ただし、本作も(それまでと同じく)膨らませ過ぎかなぁ。。
これは個人的な意見だけれど、内容をそのままにページ数を半分。
その代わり?ラスト及びエピローグを大幅に増しては如何でしょうか。
(本作もまた)中弛みの印象が割と強く残ってしまいました。

それでも著者は理系らしくなく(笑)
読ませる点については間違いありません。
トリックやロジックに見るべきが少ないけれど、
個人的にこの分野は大好きですからね?
著者を今後も追いかけたいと思います。

蛇足で技術開発について。
作中、『Jing』専属検査員の岡部に対し、『Jing』で失職する作曲家や、
ヴォーカロイドに仕事を奪われる歌手についてどう思うか?
すなわち、人工知能の開発を担う者として

慙愧の念に駆られません?(本文より)

と言う問いかけがありました。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕が同じエンジニアの端くれとして回答するなら

ほとんど「ない」

そう答えます。
個別に触れるとキリがないし、ここでは抽象的になってしまうけれど、

技術の進化は人を幸せにする。

僕はそう信じています。
それは例えば核も、毒も、銃もそうだし、勿論 AI だって同じこと。
すべての技術は人を幸せにするために生まれ、
進化し続けている。
この一点において、僕が疑問を抱くことはありません。

さらに蛇足:
IMG_20200316_055324.jpg
初版、P382-14行目。
『僕たちは『建築工事』と読んでました』の
”読んで” は ”呼んで” の誤字(脱字)です。

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離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
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