乙川優三郎『むこうだんばら亭』読了

海の厳しさは身過ぎの厳しさであり乗り越えれば生の喜びでもある。“とっぱずれ”に暮らし、強風にさらされながらそれぞれの海を見つめる人達。哀しいほど潔くあるいはしたたかに生きる男女を描く全八篇。
内容(「BOOK」データベースより)

ごまかせば良い。

本書は犬吠崎の居酒屋を舞台に男と女を描いた八つの短編集。
流されるままの昨日と、見えない明日。
今を生きるだけで精一杯の人々に、
共感にも似た切なさがこみ上げました。
良作。

内容はバッサリ略で一言、激しく心が揺さぶられました。
ただ作中には特段の事件も事故もなく、
来し方に傷付き、行く末の見えぬ人々の姿があるだけ。
そこに男女の情が微かに加わるのだけれど、
どちらかと言うと性を超えた人生の伴侶みたいなモノでした。

ただ、ほぼ全ての話に売笑(←売春のコトです)があります。
だからと言って特にないのだけれど、
その手の話が苦手な方はご注意を。
個人的には『古い風』のせつなさのやり場の無さに、
憤りを感じてしまいました。
しかしそれもラスト『果ての海』で救われます。
僕は目頭から熱湯が噴出し抑えることが出来ませんでした。

ほとんどがおよそ30ページの非常に短い話の編集です。
『乙川優三郎』をまだの方には、是非にお勧めしたいと思います。

最後に。
前述の『古い風』の中に

肝心なことはごまかして生きてゆくのが男と女(本文より)

とありました。
その詳細は本書をご確認していただくとして、
僕はこの一文に我が意を得た思いがしました。

過去の傷なんか誰にでもあります。

例外なんてありません。
男女の仲にあって、そんなのは話さなくて良いし、聞く必要もない。
それを世間では『保身』と言うのかも知れないけれど、
相手に全てをさらけだすコトが誠実だとは僕には思えなくて。
また所詮は

男女の仲です。

何処まで行ったって、何をしたって、なるようにしかならない。
過去に悩み、未来を怖れるのは仕方が無いけれど、
とりあえず今を試してみる。
それも一つの方法ではないでしょうか。

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離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
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