谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のおんな』読了

一匹の猫を中心に、猫を溺愛している愚昧な男、猫に嫉妬し、追い出そうとする女、男への未練から猫を引取って男の心をつなぎとめようとする女の、三者三様の痴態を描く。人間の心に宿る“隷属”への希求を反時代的なヴィジョンとして語り続けた著者が、この作品では、その“隷属”が拒否され、人間が猫のために破滅してゆく姿をのびのびと捉え、ほとんど諷刺画に仕立て上げている。
内容(出版社内容紹介より)

隷属すること。

本書は谷崎潤一郎の長編小説。
猫を中心とした男一人と女二人の三角関係が描かれていました。

うだつの上がらない庄造
前妻を追い出した福子
庄造に未練を残す品子
そして
庄造が溺愛する雌猫のリリー

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
それは猫を前にして素顔をさらけ出す人間達に趣向があったから。
中でも自分でも知らなかった己の資質を発見した品子に、
強く共感みたいなモノを覚えたんですよね。
それはリリーを譲り受けて発見した資質であり、
きっとそれは母性だったと思います。

本書のテーマには『隷属』があったと思います。
例えば夫に仕える妻のそれであったり、
母に仕える息子のそれでもある。
もっと言えば、お金への隷属もありました。
きっとこれらを深掘りするべき作品だと思うのですが、
僕は品子の母性にこそ、温かな隷属を感じてしまいました。

『隷属』って、ほとんど負の意味しか持たない言葉だと思います。

けれど自分を捨て、捧げて、隷属してはじめて得られる
感覚みたいなモノもあるんじゃないかな?
って、思ってしまったんすよね。僕の場合は父性になるけれど、
個人主義的な傾向の強い僕にも、こんな感情・感覚、
ある意味で父性みたいなモノがあると言うこと。
猫を飼うまではほとんど知りませんでした。

以上、本作は本来なら人間の三角関係を第一とする作品でしょう。
けれど猫好きなら、過去に現在に猫に隷属されている方なら、
もう少し別の発見もある作品かも知れません。
猫好きの方には一層のお勧めです。

蛇足でリリーの水車(?)運動について。
それはリリーが庄造の勤め先でみせたお遊びの一つなのですが……。
本書にあって谷崎潤一郎はよくよく猫を観察していると感じます。
それは甘える仕草だったり、つれない態度だったり、
はたまたフンシの匂いだったり(笑)
きっと著者も猫を飼った経験があると想像するのですが、
この水車運動だけは、ちょっと疑問を感じてしまいました。

猫タンはカーテンを降りられないと思います。

僕は今でも(しかも割としょっちゅう)
ふう助さんを救出していますよ?(笑)

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