井上荒野『だれかの木琴』読了

主婦・小夜子が美容師・海斗から受け取った、一本の営業メール。それを開いた瞬間から、小夜子は自分でも理解できない感情に突き動かされ、海斗への執着をエスカレートさせる。明らかに常軌を逸していく妻を、夫の光太郎は正視できない。やがて、小夜子のグロテスクな行動は、娘や海斗の恋人も巻き込んでゆく。息苦しいまでに痛切な長篇小説。
内容紹介(「BOOK」データベースより)

見ていない。

本書はふとしたキッカケでストーカーになった主婦・小夜子の物語。
静かに狂っていく彼女の姿に、怖ろしいと不憫が 1:1 になりました。

内容はバッサリ略で一言、非常に面白かったです。
それは作中の登場人物のほとんどが、
彼等の望むモノしか見ていなかったから。

きっと小夜子は(本当の自分を)見て欲しかったんだと思います。

誰かと重ねて彼女を抱く夫
他のコトに夢中で碌に相対しない娘

海斗へのスートキングも同じコトではないでしょうか。
行為は異常だし、許されるコトではないのだけれど、

ちゃんと私を見て!

って、彼女の心の叫びが聞こえた気がします。
だからこそ、小夜子を糾弾する海斗たちに向けて夫が放った一言

妻がストーカーをするわけがない(本文より)

は、あまりにも残酷でした。

ラストはある意味で当然の結果だと思います。
頬の傷が消えても、髪がまた伸びても。小夜子の壊れた心は戻らない。
夫がそれをどこまで「見て見ぬふり」するコトが出来るのか。
作外ではありますが、ちょっと見てみたい気がします。

以上、本書は交わらない “視線” を描いた作品。
読書中は何度も背筋に冷たいモノが走りました。
まだまだ先だけれど、暑い夏にお勧めです。

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離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

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長女:える(雉猫享年23) 臆病で泣き虫。けれど誰よりも強くて優しい子。僕の宝物。職業:これからもずっと父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒9歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。いまもお姉ちゃんを探しちゃう。職業:父ちゃんの邪魔。
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