伊坂幸太郎『777(トリプルセブン)』読了

そのホテルを訪れたのは、逃走中の不幸な彼女と、不運な殺し屋。そしてー。やることなすことツキに見放されている殺し屋・七尾。通称「天道虫」と呼ばれる彼が請け負ったのは、超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという「簡単かつ安全な仕事」のはずだったー。時を同じくして、そのホテルには驚異的な記憶力を備えた女性・紙野結花が身を潜めていた。彼女を狙って、非合法な裏の仕事を生業にする人間たちが集まってくる…。
内容(「BOOK」データベースより)

リンゴはリンゴを。

本書は殺し屋シリーズの第4弾(1,2,3
殺し屋たちが軽快に殺し合う様子に、
エンタメの魅力がギッシリ詰まっていました。
佳作。

内容はバッサリ略で一言、面白かったです。
それは運の悪い七尾や、記憶を消去できない紙野に、
不幸の定義(のひとつ)を教わったから。

相変わらず事件に巻き込まれる七尾
紙野の身柄確保を巡って戦う殺し屋たち
そして
事件のウラに隠された復讐劇

内容を乱暴に言えばシリーズの『マリアビートル』の舞台。
新幹線の車内が高級ホテルの中に代わった “だけ” の印象です。
勿論、目的(?)も混乱(?)も結末も全く違うのだけれど、
ひっちゃかめっちゃかになって、でも何故か色々繋がって、
最後は綺麗に片付いちゃう(?)。そんなトコロは全く同じ。
つまり This is 殺し屋シリーズって感じです(笑)

正直、読書中は『マリアビートル』に比べると……
な~んて感じもしちゃいました。けれど

他人と比べた時点で、不幸は始まる(by 奏田)



他人と比較してどうすのだ(by 紙野)

そんな彼等の述懐にあった「比べる」ことの無意味さ。
もっと言えば愚かさみたいなモノに強く共感したんですよね。
なので傑作『マリアビートル』は『マリアビートル』。本書は本書。
今はナニかと比べる前に本書を楽しまなくっちゃ!って。
で、実際に楽しい読書となりました。

特にラストの爽快さは抜群です。
途中、マクラとモウフのとある場面で
微かな違和感を覚えた箇所があったのだけれど、
僕はそのままスルーしてしまいました。
いやぁ~、あそこはそういうコトだったんだ~。
本書は『伊坂』なので、いつも以上に注意していたのだけれど、
スッカリやられてしまいました(歓喜)

以上、本書は著者の代表作の一つ、殺し屋シリーズの最新刊。
エンタメとして抜群なのは当然のコトとして、

リンゴはリンゴの実をならそう。
バラの花を咲かそうとしてどうする?

そんなメッセージの数々に、
胸のつかえがスーッと流れて行った気がします。
安心・安定・外れナシの『伊坂』の中でも、
さらに安心な作品です(なんのこっちゃ)。
どなた様にも安心してお勧めです。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ FC2Blog Ranking
 励みにしますので、宜しければクリックをお願いします。
テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

Tag:読書  Trackback:0 comment:0 

Comment

comment form
(編集・削除用):
管理者にだけ表示を許可
プロフィール

yuki

Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

娘達
長女:える(雉猫享年23) 臆病で泣き虫。けれど誰よりも強くて優しい子。僕の宝物。職業:これからもずっと父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒9歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。いまもお姉ちゃんを探しちゃう。職業:父ちゃんの邪魔。
月別アーカイブ
検索フォーム
FC2カウンター