暁佳奈『春夏秋冬代行者 秋の舞 下』読了

「きっと、貴方に恋をする為にー」異国の地にて勃発した神を巡る大事件。それは二つの国の『秋』を波乱と混沌の渦に呑み込んでいった。大和の秋である祝月撫子。橋国佳州の秋であるリアム。幼き秋達は運命に翻弄されていく。と同時に、容赦なく訪れる理不尽な暴力に対し、座して待つことを良しとしない者達が奮起していた。冬の代行者、寒椿狼星。夏の代行者、葉桜瑠璃。さらには、大和からの随行陣や橋国佳州の四季の代行者も加わり、事件は国家をも巻き込む事態へと発展していく。
内容(「BOOK」データベースより)

生きてさえいれば。

本書は『春夏秋冬代行者』シリーズの第四弾
春の舞 上 夏の舞 上 暁の射手 秋の舞 上)。
大切だからこそすれ違ってしまう想いに、心が痛くなりました。
良作。

内容はバッサリ略で一言、やり過ぎです。
それは読者(僕)の心を「これでもか!」と試していたコト。
そして僕の目と鼻から流れる体液の量に、危機感を覚えたから。

誰にも愛されない。必要とされない。
私が生きるコト。存在すること自体が恥ずかしい。
そして
愛する人の為、自分はいない方が良いと思う。

上巻の感想でも記したけれど、著者の残忍な筆は執拗に過ぎました。
しかもキャラクタの、読者の。
心を追い込むその手だては『愛』なのです。
読書中もハッピーエンドは疑わなかったのだけれど、
それでも長すぎる “途中” には憤りさえ感じました。
けれど。

本作は上下巻の長編であり、テーマはいくつもあったと思います。
中でも、両親に遺棄され、山中をさまう幼い撫子で示唆された

生きてさえいれば。

これが著者が最も伝えたいコトだと感じました。
僕なんかが言うのもおこがましいのだけれど、
人生って、けっこう不思議ですよね。

もう太陽が見たくもないと思ったとしても、
生きることをやめなければ想像も出来なかった未来が
訪れることがある(本文より)

実は僕も僕なりに人生のどん底を味わい

もう死のう。

そう考えたコトが何度もありました。
けれど死の恐怖に怯え、自殺を先延ばにし、
生き恥を晒しながらも命を断ちきれずにいた。
そんな僕でさえ、あれからも

喜びはありました。

これはあくまでも僕の一例です。
本作だって「かもしれない(maybe)」で一貫しており、
「絶対(absolutely)」との表現は避けられています。
現実はそう甘くないはないですしね。
それでも『暁佳奈』が執拗に繰り返した加虐の筆には
未来にある喜び。その可能性を伝えるための(必要な)前振り。
読後にはそう感じるコトが出来ました。

以上、本書は絶望にあってもなお「生きろ」と誘導する。
人によってはとても残酷な作品です。
けれどその根底にあるのは決して冷めないマグマのような『愛』。
四季が移ろうとて、その熱量は決して奪われません。
現在進行形で愛に、生きるコトに疲れている方には
お勧めしてはいけないのかも知れないけれど、
本作が貴方のもとに届けばよいな、って。心の底から思います。
とりあえず死は明日にして。今日だけでも生きてみませんか。

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