吉田修一『愛に乱暴』読了

これは私の、私たちの愛のはずだった―
本当に騙したのは、妻か?夫か?やがて、読者も騙される狂乱の純愛。
“家庭”にある闇奥。“独り”でいる孤絶。
デビュー以来一貫して、
「ひとが誰かと繋がること」を突き詰めてきた吉田修一が、
かつてない強度で描く女の業火。
内容(「BOOK」データベースより)

狡猾な罠(トリック)。
”種(タネ)” より ”仕掛け”
その手法に脱帽です。

内容は子供の居ない夫婦の妻を主人公に、
その夫と夫の子を宿した愛人女性。
彼等の離婚を巡って縺れる三角関係に加え、
同じ敷地内に暮らす姑と、要介護の舅と間に生じる軋み。
メロドラマにありがちなストーリーではありますが、
細部にまで宿るリアリティに
理不尽なのに何故か首肯できるアン・リアリティ。
それらによってストーリーには既視感があり、
登場人物への共感を一層加速させています。
例えば紳士な振りをしているけれど、実は無責任で身勝手なだけな
夫・真守に自身を重ねてしまう男性読者も多いのでは。
僕には彼が鏡の中の自分を見ているようで薄ら寒くなりました。

また本書の主題は ”愛” を巡る主人公の心模様にあり、
仕掛けられた罠(トリック)は本来ならオマケでしょう。
しかし、その罠に落ちるまでの伏線は実に見事。
それはストンと穴に落とされる ”痛快” ではなく、
いつの間にか坂を下っていて、気がつけば底に落ちていた。
そんな ”老獪” な手練手管であり、最早唸るしかありません。
著者の変幻自在な筆の妙。本作も得と堪能しました。


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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

Tag:読書  Trackback:1 comment:2 

Comment

藍色 URL
#- 2015.04.03 Fri13:59
こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
yuki URL|Re: タイトルなし
#- 2015.04.03 Fri19:42
藍色さん、こんばんは。

吉田修一さん、素晴らしい作家ですよね。
イメージを固定させない多彩な作風ながら、
そのどれもが一級品、僕は著者の大ファンです。

さて、早速トラックバックを打たせていただきました。
これからも宜しくお願いします。
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「愛に乱暴」吉田修一

妻も、読者も、騙される! 『悪人』の作家が踏み込んだ、〈夫婦〉の闇の果て。これは私の、私たちの愛のはずだった――。夫の不実を疑い、姑の視線に耐えられなくなった時、桃子は誰にも言えぬ激しい衝動に身を委ねるのだが……。夫婦とは何か、愛人とは何か、〈家〉とは何か、妻が欲した言葉とは何か。『悪人』『横道世之介』の作家がかつてない強度で描破した、狂乱の純愛。本当に騙したのは、どちらなのだろう? 東京... 粋な提案 - 2015.04.03 13:42

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Author:yuki
離婚と断酒。娘達(雉猫と白黒猫)と三人(?)の日々を綴ります。
ロックと読書好き。でも酒と煙草をやらないストレート・エッジです。

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長女:える(雉猫18歳) 泣き虫で臆病。温厚だけど父ちゃんには我儘な女王様。妹がちょっぴり苦手。職業:父ちゃんの監視。

次女:ふう(白黒5歳) 暴れん坊で食いしん坊。皆が食べているものは私も食べる。お姉ちゃんともっと遊びたい。職業:父ちゃんの邪魔。
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